怒れる女

#KuTooへのバッシング、石川優実さん「怒らず冷静に」ではダメな理由【怒り08】

職場でヒールのある靴やパンプスの着用を義務付けられる社会に異議を唱えた「#KuToo」の署名運動を立ち上げたグラビアアイドルでライター、女優の石川優実さん。 活動を続ける中で浴びせられる彼女へのバッシングや運動に対する反発に、石川さんはひとつひとつ怒りを示し戦います。なぜ、彼女はすべてと向き合うのか、話を伺いました。

●怒れる女

職場でヒールのある靴やパンプスの着用を義務付けられる社会に異議を唱えた「#KuToo」運動。#KuTooとは、世界中で声があがったセクハラや性被害を訴える「#MeToo」と、「靴」そして「苦痛」を掛け合わせた造語です。

女性の労働環境の改善を求めるための署名運動を立ち上げたのはグラビアアイドルでライター、女優の石川優実さん。

2018年にはじめた葬儀場のアルバイトで、パンプス着用の指定があったことに疑問を感じ、世間に訴えかけました。

「#KuToo」運動の署名は3万人以上(7月11日現在)。厚生労働省には6月3日に意見書を提出。運動は現在も続けており、NTTドコモがドコモショップの女性店員のヒール靴着用を来秋撤廃することを発表するなど社会的反響も大きくなってきています。

キャンペーンリンク

「#KuToo」運動のきっかけとなった石川さんのTwitterには連日、その考えに賛同できないという方からの意見も寄せられています。中には、心ない誹謗や、感情的なコメントも。

特集「怒れる女」では、なぜ石川さんがそれでもSNSをやめないのか。寄せられる意見ひとつひとつと向き合い、時には怒りをぶつけながらコメントを返すことへの思いを伺いました。

6万件のいいね!…これは自分だけの問題ではないと思った

ーー「#KuToo」運動のキャンペーンを立ち上げることとなったきっかけを教えてください

石川: アルバイト先の葬儀場で、女性には5〜7cmのヒール靴の着用が指定されていたんです。「女性だけがなぜ」という疑問をツイートしたところ、大きな反響がありました。これは自分だけの問題ではないんだと実感し、ネット上の署名を募れるサイトで厚生労働省へ意見書を提出するためのページを立ち上げました。

ーーなぜ、「ヒールのない靴で働かせてください」と会社へ直訴するという形ではなく、社会を巻き込んだ提案をしようと思われたのですか?

石川: やはり、ツイートに対する反響が6万いいね!近くあったことが大きいです。会社に改善を求めて自分だけが救われれば解決することではないと感じました。

私に誹謗中傷を送る方の中には、そこを理解されていない方も多いように思います。「私が」助けてほしいから運動をしている、そう勘違いしている方からは「会社に言えば済むことだ」というご意見をいただきます。

ーーネット上ではかなり過激なバッシングの言葉も見受けられます。

石川: 「ヒールを履きたい女性のことも考えろ」というものや、「グラビアの仕事をしてるくせに、性差別問題について訴えるなんておかしい」といった、私のバックグラウンドを攻撃してくる人もいます。

ーーそうしたコメントにどのように対応されているのですか

石川: ひとつひとつ、返事をしています。「グラビアをしている女性がなぜフェミニストではいけないのですか?」と考えを伺い、それに対してまた返信をして、と。

「ヒールを履きたい女性を否定する運動ではないですよ」という説明もその都度しています。時には感情的になってしまうこともありますね。ツイートの言葉遣いを指摘して揚げ足を取る方もいるので、Twitterのプロフィールにはあらかじめ「口が悪いです」と表記することにしました(笑)。

ーー同じような意見が定期的に何度も、石川さんの元に寄せられているように感じます。繰り返し根気よく、賛同しない人と向き合うのはつらくないですか?

石川: ちゃんと伝える、という行為は楽しいですよ。言われっぱなしで放置している方がストレスが溜まりますね。

相手が気分を害さないようにすればするほど、相手の態度は悪くなった

ーーどんな場合でもコミュニケーションはきちんと取るようにしていましたか?

石川: 今のような考えになったのは、昔のパートナーとの関係がきっかけでした。以前は私も、自分の考えや怒りを表明するときに、相手が気分を害さないように、声を荒げず冷静に、というコミュニケーション方法をとっていました。

でも、相手の気持ちを考えてやわらかに対応するのは、実はその時点で下手に出ているということですよね。それをやればやるほどむしろ、相手が「話を聞いてやっている」という態度になるのを感じたんですよ。結局何も解決しなかった。

それで、気づいたんです。これでは自分の本当の思いは相手に伝わらないし、変わらないって。怒らないで伝わったことなんて、なかったんです。

マジョリティのためにマイノリティが変わるのはおかしい

ーーこういった署名を集める運動は、不特定多数の方に賛同してもらうために、感情的に怒る姿を見せない方がよいという考え方もあると思うのですが。

石川: この「#Ku Too」運動の署名は「どれだけ多くの署名を集められるか」ということが本質ではないと思っています。性差別は賛同者が多いからなくすべき、という問題ではないですよね。極端に言えば、10人でも賛同する人が集まりさえすれば、声をあげなければいけない。話しても通じない人を説得するために、怒りをおさえて話す必要はないと思うんです。

怒りを表明せず、こちらが下手にでるコミュニケーションは、一見すると穏やかにうまく物事が進んでいるような錯覚に陥ります。でも、まさにそれこそが「性差別を受けているマイノリティが、自分を抑えマジョリティに合わせている」という構造になってしまっていると思います。「相手の思う壺」というやつでしょうか。

それであれば、怒りながら、戦いながら、自分の思いをさらけ出し、ちゃんとそれが社会に影響を与えて、事態が変わる方がいい。

怒っていることで損をしている、遠回りをしていると言われることもあるのですが、遠回りのようで、近道だと私は思っています。

【取材後記】

「怒らず、態度を和らげて、多くの人に共感してもらって」じゃなきゃ世の中を変えていけないなんておかしい、それを示すためにも、あえて怒りをSNS上で目に見えるように表明している部分もある、と語っていた石川さん。根深い性差別問題と彼女なりの方法で向き合っていました。怒るべきか、怒らざるべきか。読者はどうするべきか尋ねると「どちらでもいいと思います。ワクワクする方を選んでください」という言葉が返ってきました。

現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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