怒れる女

脳内科医・加藤俊徳先生「怒りっぽい人は睡眠で変われる」【怒り11】

「怒り」とは興味があることに対して、脳が理解できないというサイン。脳が暇な状態だと怒りっぽくなるのだといいます。第3回目の今回は、1万人の脳画像を見続け『脳が知っている怒らないコツ』(かんき出版;ゴマブックス)の著者でもある脳内科医の加藤俊徳先生に、怒らないための脳を作る方法を伺いました。

●怒れる女 11

脳に怒り癖がついている人は「睡眠」の見直しを

――怒ると脳の血流はどのぐらいの時間で変化するのですか?

加藤俊徳先生(以下、加藤): なんと6秒でピークに達します。まさに瞬間湯沸かし器。怒りは相手が反応するまで次から次へと沸いてくるものなので、血流が下がりづらいという要因もあります。脳の血圧が通常時に戻るには1時間はかかるので、怒りという感情を早く自分で断ち切ることが必要です。

とはいえ、すぐ怒る人には、脳に怒り癖がついていることがあります。そういう人は、怒ることで意識を覚醒させて理解しようという行為に走りがちです。

――脳にも癖があるんですね。

加藤: 私は「脳には8つの番地があって、それを意識すると人間の脳は伸びていく」と提唱しています。つまり、それぞれの人によって、成長している脳番地と成長していない脳番地があることがわかっています。脳番地の成長度合いが自身の性格を形作っているのです。例えば、人の話を聞かないで一方的に話す人は、聞く力が育っていなくて、話すことだけが得意。それによって脳にひずみが出て、いつの間にか成長の癖になってしまっています。

――脳の怒り癖がついている人は、治すことができますか?

加藤: できます。一番効果的なのは、普段より30分早く寝ること。12時前に寝た方が効果的です。

――眠るだけでいいんですか?

加藤: 怒り癖がある人は、ぜひ自分の睡眠時間をチェックしてみてください。怒りっぽい人に共通している特徴は、圧倒的に「睡眠不足」なのです。睡眠不足と脳の関係を調べていて、「平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要(厚生労働省)」の報告を見ると、40代の日本人女性の約42%が1日6時間以下の睡眠しか取っていないことがわかりました。世界一寝ていないのが日本人の30,40代女性といっても過言ではありません。

――睡眠時間を削って家でも会社でも働いているんですね……。

加藤: 本当に世界一耐えている働きものです。さらに30,40代の10%程度の人は睡眠時間が5時間以下。これは完全に不眠症の域です。ストレスを抱えたまま生活していることが背後にあって、世界で一番劣悪で怒りやすい生活を送っているといえるでしょう。
つまり、睡眠時間を7時間以上にしたら、怒りが半減しますよ。怒っている人は、自分のコンディショニングに気付けていない人が多いですね。他人のことは制御できないけれど、自分の怒りの原因は制御できるので、気をつけてみてはいかがでしょうか。

――怒りやすい原因は睡眠不足だけですか?

加藤: もう一つは運動不足。特に物を壊したり、暴力をふるったりなど、暴力的な行為に出る場合のほとんどは、運動不足が挙げられます。

――逆に怒らない人の特徴はありますか?

加藤: 人の話をよく聞く人です。聞き上手な人は、脳の聴覚系が発達していて、怒る人が少ないという特徴があります。引きこもりの人、高齢者で孤独な人は、耳から情報を得るチャンスが少ないので、ちょっとしたことに過剰反応しがちです。

脳を意識して生活すると1, 2カ月で変えられる

――シンプルに睡眠は脳にとってなくてはならない栄養源ということですね。

加藤: 絶対削ってはいけないものです。脳は寝ている間に、成長するだけでなく、老廃物を排除していくので、ジョンズホプキンス大学公衆衛生大学院のアダム・スピラらは、睡眠時間を「6時間以下」、「6から7時間」、「7時間以上」の3つに分けると、脳の老廃物が一番溜まっているのは「6時間以下」という研究結果を報告しています。

――それを聞くとしっかり寝なくてはと思いますね。

加藤: さらに、寝ることによって、脳に記憶を定着できることもわかってきています。試験前に徹夜で勉強するのは、その瞬間だけの記憶と思っておいたほうがいいですね。
とはいえ、昼間に9時間寝ても、イコールの睡眠にはなりません。夜9時から朝方3時ぐらいに、睡眠に関係した物質が出ることがわかっているので、正しい睡眠を取らなければ、美容と健康によくないですね。

――脳を意識して生活することが必要ですね。

加藤: そうですね。脳の健康管理を意識することが無駄な怒りを減らす一番いい方法だと思います。1、2か月で脳の癖も変えられます。誰でもすぐできます。諦めたらダメですよ。脳は一生成長するのを忘れずに。
脳が変わったら、業務効率も上がるし、怒りにくくなるだけでなく、人生が楽しくなります。
実際私も夜12時以降に仕事をしなくなったら、10年前より頭がクリアになりました。少しでも愚痴を言いたくなったらそれは寝不足です。今日は早く寝るようにしましょう。誰でも簡単にできるので、今すぐ実践してみてください。

●加藤俊徳(かとう・としのり)先生のプロフィール
脳内科医・医学博士。加藤プラチナクリニック院長。昭和大学客員教授。株式会社「脳の学校」代表。脳番地トレーニングの提唱者で、発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。これまでに胎児から超高齢者まで 1万人以上の診断・治療を行う。
著書に『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)『楽しい! 大人の「脳活」パズル【知恵の輪2個+パズル付き】 』(宝島社)など多数。

加藤プラチナクリニック
株式会社 脳の学校

年間70回以上コンサートに通うクラオタ。国内外のコレクションをチェックするのも好き。美容に命とお金をかけている。
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