【古谷有美】古谷有美「各停には乗らないで、快速特急を待つ――そんな生き方を」
●女子アナの立ち位置。
自然とつながるご縁を、編んでいく
2018年は、働くことの楽しさを実感できた一年でした。これまでどおりのテレビにくわえて、ノリさんとのラジオ番組「木梨の会」や、telling,のコラムもそう。一つひとつの仕事や人との出会いがつながって、世界を広げてくれたように感じています。
20代の後半は、人脈をつくったり、新しい挑戦をしたりすることに、なんだかあくせくしていたんですよね。自分から「つかみに行かなきゃ」と思いすぎて、つねに力が入っている感じ。それもエネルギッシュで悪くはないんだけれど、最近は、すこし力が抜けました。
それは「上手に三つ編みができるようになりました」みたいな感覚です。昔は三つ編みしているつもりでも、二つの毛束をただねじっているだけで、手を離したらほどけちゃうようなこともあって……。今年になってようやく、人と人との縁やお仕事との出会いを、きれいに編めるようになってきたんだと思います。
お仕事つながりだけど、これからほかの場面でもお付き合いしていきたい、という人にもたくさんめぐり会えました。きっと「アナウンサーの私」というより「一個人の私」を見せられるようになったから、かな。趣味のイラストがお仕事になったり、プライベートの一面も出せるようになったことで、人付き合いがまた一段と深まりました。
各駅停車は見送ってもいい。快速特急を待とう
業界は違うけれど、いつもめちゃくちゃ楽しそうに仕事をしている先輩が、こんなことを言っていました。「一日は24時間だし、一週間は7日間だし、自分の体はひとつしかない。だから、自分がやりたくて仕方ない仕事から先に、時間を埋めていく。そうすればどんなに忙しくても、好きなことだけやっていられるから、ひたすら仕事が楽しいよ」
それまでの私は、来た仕事から順番に時間を埋めていく作業をしていました。そもそも基本的に、自分から仕事を選んだり断ったりはしません。いまでも、声をかけていただいた仕事はすべてやるスタンスです。だけど気持ちだけでも「好きなことから時間を埋める」と、心がけてみたら。不思議なことに、すごく好きな仕事がぐっと増えたんです。
先輩の言葉を聞いてから、もうひとつ考えました。どんどん来る各駅停車にとりあえず乗るんじゃなくて、快速特急が来るのを待ってみようかな、って。駅で待っているあいだには本を読んだり、絵を描いたり、ちょっと休んでいてもいい。「来た!これが私の好きなことだ!」という電車に飛び乗れるように、あえて待つ勇気ももらった気がしています
チャンスをつかむために、準備を怠らない
もちろん、ぼんやり待っているだけじゃ、なんだかちょっと物足りない。とびきりやりたいことのチャンスをつかむには、スタンバイが大切です。
“Luck Is What Happens When Preparation Meets Opportunity"という、すごく好きな英語のフレーズがあります。「幸運は準備ができた人にのみ訪れる」という意味です。
ちゃんと準備をしていないと、ラッキーな機会が訪れても、人は気づかず通り過ぎてしまう。でも、いつも備えていれば、見逃さずにキャッチできるんですよね。やりたいことについて考えをめぐらせたり、勉強したり、できる下準備はたくさんあります。
きっとそれが、若いときといまの違いなんじゃないかな。
20代のころは、両手に大きな虫取り網を持って、大草原をがむしゃらに全力疾走していました。網の方向をちゃんと見ていなくたって、大きなアゲハ蝶やカブトムシも捕れました。でも、年齢を重ねてきたら、全速力では走れないこともある。それにいまの自分には、いままで見過ごしていたありんこや小さい鈴虫のほうが、魅力的に映るかもしれません。
だからこそ、きちんと備えながら、物事のいろんなタイミングを待つことが必要なんでしょう。しっかり備えて、ゆったり待てる。2019年は、そんな一年にしたいです。
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