telling, Diary ―私たちの心の中。

つま先に羽を

なまめかしく妖艶な表現力で性別問わず見る者の目を釘づけにするポールダンスのダンサーであり、注目のブロガー、ライターでもある“まなつ”さん。彼女が問いかけるのは、「フツー」って、「アタリマエ」って、なに? ってこと。 telling,世代のライター、クリエイター、アーティストが綴る「telling, Diary」としてお届けします。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

つま先に羽を

 先日、ストリップファンの友人と浅草ロック座へ行きました。
エンターテイメント性の高さ、一日中上演されていていつでも行ける気軽さ、そして何より美しいことがストリップの素晴らしいところ。
以前歌舞伎町で働いていた時は、職場からとても近くにロック座系列のストリップ劇場「新宿ニューアート」があったので、頻繁に足を運んでいました。

 ストリップを見たことがない方に、少しだけ説明を。
1回の公演は約2時間。5人の踊り子さんが、1人20分のショーを披露してくださいます。
踊りながらだんだんと肌をあらわにしていき、最終的にはすべてを脱ぎ捨て、生まれたままの姿へ。

 コメディ風味のショーもあれば、お着物を着てとことんセクシーに脱ぐ方もいて、演出は十人十色。
選曲、お衣装、演出のどれを取っても、踊り子さんの個性が際立ちます。
女性は割引があり、男性よりいくらかお安く入れます。
それでいて1日中いることができて、出入り自由な劇場もあり、本当にお得。
なぜ1日中いるのかというと、1日に4〜5回の公演があり、回によって踊り子さんの演目が変わったりするのです。
決して見る側を飽きさせない工夫が素晴らしい。
もちろん、同じ演目を何回も見たい方にも最高のシステム。

 きらびやかな衣装や、踊り子さんが練りに練った素晴らしいショーの構成に感嘆するもよし。
踊り子さんの一糸まとわぬ神々しいお姿をただ拝むもよし。
大人が思いつきでふらりと入っても、いつでも楽しめる上質なエンターテイメント、それがストリップなのです。

 映画を見に行くのと同じくらいの感覚で、ストリップに行くライトなファン層の私。
一度見て好きになった踊り子さんが何人かいまして、スケジュールをチェックして見に行っています。
それに対して友人は一推しの踊り子さんがいて、同じ公演に何度も足を運ぶスタイル。
ストリップの公演は、10〜20日間のワンセット。その間、基本的には同じ踊り子さんが出演します。
なので、推しを応援するために、何度も通うファンの方もいるのです。

 鑑賞スタイルは違えど、ストリップが好きという共通点。
その情熱はファン同士、互いへのリスペクトを生み、男女の垣根すら無くします。
ストリップ鑑賞に来るお客様はみんな、紳士淑女。
圧倒的多数である男性ファンは、女性ファンにも嫌味のない気遣いをしてくださいます。
踊り子さんを尊び、マナーよく鑑賞することで、ショーを楽しむ者もの同士の一体感すら感じます。

 なぜストリップファンがマナーよく鑑賞することを重視し、踊り子さんに最大限のリスペクトを捧げるのか。
それは彼女達のショーが、華やかな見た目からは想像もつかないほど、大変な努力の上に成り立っていることを知っているからに他なりません。
彼女達が気持ち良く踊るために、ファンに何ができるか。

 それはシンプルに、心からの応援と、劇場の定めるマナーを守ること。
軽快なリズムでステージ中を動き回り、曲に合わせて踊る。そして下着を脱ぎ捨て、軽々と足を上げそこで静止する。よく見ているとわかるのですが、足を高く持ち上げたポーズで止まっている踊り子さんの腹筋や背筋は、くっきりと浮き出ています。ストリップには相当な筋力が必要なのです。
若いことや顔が綺麗なことは魅力の一つですが、それ以上に鍛え上げられた肉体やダンスの技術が、踊り子さんを輝かせるのです。
そこには明確な美学があり、他人の価値観が入り込む隙がありません。

 羽が生えているかのように高く持ち上げられたつま先を見るたび、そこへ到達するための努力に思いを馳せます。
美しく見せるために、軽々と踊るために、どれだけの努力を積み重ねているかわかるから。
血反吐を吐かんばかりの日々と、まばゆいスポットライトに照らされた彼女達の体の輝き。
美しさと困難のアンビバレンスが私を惹きつけて止みません。
羽を生やすことは大変だけれど、決して不可能ではないのだと思える強いエネルギーがそこにはあります。
少しでも気になったら、ストリップ文化を継続させるためにも、男性も女性も気軽に見に行ってくださいね。
やさぐれた気持ちになった時、なんだかうまくいかない時に行くと、活力をもらえるのでオススメです。

続きの記事<心躍るバーベキュー>はこちら

ポールダンサー・文筆家。水商売をするレズビアンで機能不全家庭に生まれ育つ、 という数え役満みたいな人生を送りながらもどうにか生き延びて毎日飯を食っているアラサー。 この世はノールール・バーリトゥードで他人を気にせず楽しく生きるがモットー。
まなつ

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