telling, Diary ―私たちの心の中。

悪魔の名を知る

なまめかしく妖艶な表現力で性別問わず見る者の目を釘づけにするポールダンスのダンサーであり、注目のブロガー、ライターでもある“まなつ”さん。彼女が問いかけるのは、「フツー」って、「アタリマエ」って、なに? ってこと。 telling,世代のライター、クリエイター、アーティストが綴る「telling, Diary」としてお届けします。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

悪魔の名を知る

 今年はの夏は本当に暑かったですね。
まだまだ残暑が厳しいですが、皆さんはどのように涼をとっていますか。

 私はもっぱらホラー映画。実際のところ季節はあんまり関係ない。冬も見る。
話題作はもちろんのこと、名作と呼ばれるものは片っ端から見ます。
怨霊や化け物が出てくる系も良いし、人間の狂気を描くタイプのも好き。
ちなみに最近よかったのは「ゲットアウト」。アカデミー賞受賞作は伊達じゃなかった。
見終わった後、1時間くらい妻と「こわかったねー!」「面白かったね!」と飽きもせず言い続けてしまいました。
人の狂気をまざまざと見せつけるタイプのホラーが好きな方にオススメです。

 さて私はホラー映画のどんなところが好きなのか。
まず人の心の機微がわかりやすい。
恐怖って本能的なものだからか、登場人物に感情移入しやすい。夢中になって見れる。
映画や本を楽しむときは、頭を空っぽにしたいときが多いので、惹きつけられる作品を選ぶとホラー映画になることが多いのです。
そして、自分には一生知ることのなかったであろう知識を得ることができる。
これはどんな映画にも共通するメリットなのですけれど、ホラーならではの知識も中にはあります。

 例えば”悪魔は名前を知らないと倒せない”。
これは私の大好きなホラー映画「エミリー・ローズ」で知りました。
敬虔なクリスチャンの女子大生、エミリー・ローズがある日悪魔に取り憑かれてしまい、神父に助けを求めます。
真夜中、エミリーはベッドにくくりつけられ、神父が聖書の一節を読み上げると、か弱い女とは思えない怪力で暴れ出し窓を破って外に飛び出してしまいます。
逃げた先は馬小屋。暴れるエミリーをみんなで押さえつけ、神父はエミリーに向かって叫びます。
「お前の名を名乗れ!」と。
悪魔を倒す、つまりエミリーの体から追い出すためには、その名を知って神の名の下に命令しなければいけない。
だから、神父はエミリーに取り憑いた悪魔の名前を聞き出そうとしました。
日常生活で誰かに何かをお願いするときも、名前を呼んでお願いしますよね。それと仕組みは同じようなものだと思います。
名前はとても重要なもの。
名前を知ることで、初めてそれがどんなものか知ることができる。

 心の中に悪魔がいる時、なんだかもやもやする時も生きていればあるでしょう。
そんな時、悪魔に好き勝手させず、自分の心の平穏を保つ、つまり悪魔をコントロールすることは実はそう難しくないのかもしれません。
まずはそれらの名前を知る。あるいは名前をつけてあげる。
名前を知らないものは倒せない、追い出せない。
まずは知る・名付けることが大切。
自分の中で腑に落ちることで、初めてそれを倒したり、受け入れられるのだと思います。
悪魔祓いの手法もところ変われば人生に役立つのだなあ、と思うとますますみなさんにホラー映画鑑賞を勧めずにはいられません。とりあえず、エミリー・ローズ見てください。

 あの時、悲しかった。寂しかった。憎い。許せない。
思い出したくないことほど心にこびりつきますが、名前を知って、ただその感情を見つめることが、楽になるための第一歩なのだと思います。
あまりに辛かったことは、なかなか忘れることができません。忘れられないことすら、嫌になってしまう。
だから、打ち倒さなくてもいい。悪魔が部屋の隅にいてもいい。
名前を知ったら、もう怖くない。思い出してしまっても、そういう悪魔なんだと思って飼いならす。
あなたの部屋にいる悪魔はどんな形ですか?角とかありますか?
辛かったあの日の思い出にソロモン72柱の悪魔の名前でもつけて、いい感じにコントロールしませんか。
いつか彼らが地獄の底に還るその日まで、気長にやりましょう。

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ポールダンサー・文筆家。水商売をするレズビアンで機能不全家庭に生まれ育つ、 という数え役満みたいな人生を送りながらもどうにか生き延びて毎日飯を食っているアラサー。 この世はノールール・バーリトゥードで他人を気にせず楽しく生きるがモットー。
まなつ

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