森山直太朗×親友・メミ対談 夢中になれることを探して今がある
「料理研究家」があふれている中で、軸足となるものが欲しかった
唯根命美(以下、メミ):今は、スタイリングの仕事の他に「日本サンドイッチ協会」を立ち上げて、おもてなしサンドイッチの講習会をしたりしています。
森山直太朗(以下、直太朗):いつも聞くたび、「サンドイッチ協会って一体何?」ってこっそりツッコミを入れてたんだけど、何なんでしょうか(笑)。
メミ:世の中に「料理研究家」のような人が溢れている中で、自分の軸足となるものが欲しくて。サンドイッチはイギリス発祥で、あちらには多種多様な魅力あふれるサンドイッチがあります。日本でも、もっともっとサンドイッチが身近になったらいいなと思い、協会を立ち上げました。
「ケーキイッチ」というレシピ本も出しました。「ケーキイッチ」というのは、ケーキのように美しくデコレーションしたサンドイッチのことで、私たちの作った造語です。ありがたいことに昨年の「グルマン世界料理本大賞」で、サンドイッチ部門の金賞をいただきました。
直太朗とコラボもしています。氣志團のフェス「氣志團万博」のバックステージに直太朗が出店するカフェを、私が監修して毎年出しているんです。出演者用の本格カフェブースです。最初にやった時は準備期間がなんと1カ月しかなかったのですが、私たち友人チームの団結力で一気に作り上げました。高校の文化祭みたいなノリで、毎回楽しいですよ。
「就職活動をしない道」を探していたのかもしれない
直太朗:僕は、実は高校の途中までサッカー選手を目指してたんです。家族が音楽一家なので、僕は違うことやりたかった。ただ、どんなに頑張ってもプロへの道が開けなくて、そのときに大きな挫折感を味わいました。
でも、その反動なのでしょうね。急激に「音楽をやりたい」っていう気持ちがムクムクと湧いてきたんです。友だちだった御徒町が「曲を一緒に作ろう」って声をかけてくれたので、二人で「君色スイートピー」っていうベタなタイトルの曲を作りました。それを御徒町が高校の文化祭の「のど自慢大会」で披露したらいきなり優勝してしまい、僕たちがびっくりしましたね。
そんな体験から、曲を作って歌うのがとても楽しいということに気がついて、曲を作っては路上や人前で歌ってみたりしはじめた。吉祥寺の井の頭公園などでもよく歌っていましたよ。
今になってようやく「僕はラッキーだった。この道を選んで良かった」と胸を張って言える
直太朗:僕ね、幼稚園から大学時代までずっと電車で通学してて、朝の電車に乗るのがもう嫌になってしまったんです。家から学校まで、たった二駅なんですけどね(笑)。あと、会社勤めをしている自分が想像できなくて。ありがたいことに「就職しなさい」という親ではなかったので、今考えると、「就職活動をしない道」を探していたのかもしれないです。
メジャーデビューして2枚目のシングル「さくら」がヒットしてから、一気に忙しくなって。今まで走り続けてきました。去年、ちょうどデビュー15周年でした。全国ホールツアーの他、劇場公演という音楽とお芝居を融合した舞台「あの城」を上演したり、レコーディングをしたり、比較的忙しく過ごしています。
僕、20代・30代のころは卑屈なところがあったというか、なかなか素直になれなかったんです。デビューから15年たって、ようやく胸を張って「僕はラッキーだった。この道を選んで良かった」と言えるようになりました。
一つひとつの仕事は点、それらがいつか線になる
直太朗:結局、好きなことで生きていくって、どういうことだと思う? 悩んでいる方に向けて、何かメッセージを贈るとしたら?
メミ:好きなことを仕事にするのは「こわい」と感じることもあるでしょうし、形になるまでには時間がかかります。でも、一つひとつの仕事が点だとしたら、それらが線になる時がある。関係ないと思っていた仕事が実は関係あった、と気づくことが多々あるんです。
リスクはあるけど、もし「失敗しても後悔しない!」というくらいやってみたいことなら、チャレンジしてみても良いと思いますね。
直太朗:本当にそうだね。「好き」という言葉よりきっと、もっと感覚的で、「自分が夢中になれる」「楽しいと素直に思える」ことが何よりも大事だと思う。そして、常に「今、本当に楽しいか?」と自分に問いかけ続ける。その楽しさを掘り下げ続けた結果が「今」だと思います。
あと、大変なときは人に助けてもらうことが大切ですね。自分で全部背負い込むと、楽しくなくなってしまいますから。
利害がない楽しい遊びのようなことのほうが、人の本来の個性や能力って出るものだと感じます。本当に楽しいことを一緒に突き詰められる仲間やコミュニティの存在が、僕にとって、とても大きいです。
- 唯根命美 / memi(40歳) フード・スタイリスト。一般社団法人日本サンドイッチ協会会長。著書の「ケーキイッチ」がグルマン世界料理本大賞金賞受賞。一児の母。
- 森山直太朗(41歳) シンガー・ソングライター。2002年メジャーデビュー、セカンドシングルの「さくら(独唱)」がオリコン1位獲得。母親はシンガーの森山良子。
- ●『北欧生まれのおもてなしサンドイッチ ケーキイッチ』/PARCO出版(写真上・左)ケーキのようにデコレーションしたサンドイッチ「ケーキイッチ」のレシピ本。ローストビーフやハム等でアレンジした新感覚のケーキイッチレシピを紹介。
- ●劇場公演「あの城」/ユニバーサルミュージック(写真上・右)昨年2016年秋に下北沢・本多劇場にて上演された森山直太朗劇場公演「あの城」。音楽と演劇を融合した本公演の模様をDVD作品化。
協力:ブラッセリー・アデニア
-
第24回森山直太朗×親友・メミ対談 僕たちが好きを仕事にするまで
-
第25回夢を追うために、3月に退職しました。
-
第26回森山直太朗×親友・メミ対談 夢中になれることを探して今がある
-
第27回「自分がしたかったこと」に気づかせてくれたミニチュア作品たち―今日のmi
-
第28回行き当たりばったりの人生だけど、「好きを仕事に」できている。