本という贅沢104『セックスのほんとう』(一徹/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「彼との相性」を運まかせにしない。もっと楽しく気持ち良くなるために

毎週水曜日にお送りする、コラム「本という贅沢」。 今月のテーマは「新しい生活」。 緊急事態宣言による自粛は、あらゆる分野に及びました。この間、様々な自粛のデメリットも指摘されましたが、「性」について語られる機会は少なかったように感じます。フェーズが変わりつつある中、改めて真剣に考えてみたいーー。そのための一冊を紹介するのは書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんです。

●本という贅沢105『セックスのほんとう』(一徹/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

やっほー。みんな元気?
緊急事態宣言が解除され、東京は19日に休業要請も全面解除とかだけど、みなさんのセックス戦線もぼちぼち解放されてますか?

あれはたしか、3月に入ってすぐの頃だったと思うけれど、仲のいい編集さん(♀)から、こんなメッセージが届いた。
「さとゆみさん、世界から、セックスは絶滅しましたかね?」
とな。

朝イチでメッセ開いたら、突然この文言だったので、一瞬スパムかと思ったさ。でも、よくよく読んだらとても真面目な話だった。
いわく、コロナ下の状況変化で、気安かったセックスが潮干狩りのように去っていった。マジできつい。そんな話だ。

そっかー。たしかに、この時期、既婚or同棲中以外のカップルのセックスコストとリスクはめちゃくちゃあがっていたよな、と思う。
とくに、遠恋チームと不倫チームの女子たちは、一様に厳しそうだった。コロナ・クライシスとは、同時にセックス・クライシスでもあったよね。
彼女たちのメンタルが崩壊する前に、緊急事態宣言が解除されて、本当になによりです。
みんな一刻もはやく健康的なセックスライフを取り戻してほしい。ホルモンバランスを整えて、安定した、肌に優しい楽しい毎日を過ごしてほしい。

と、思いながら選んだ一冊は、こちら。
以前、私自身が構成のお手伝いをした本です。

一徹さんの『セックスのほんとう』。

「女性向けAV」の分野で人気NO.1のAV男優である一徹さんが、セックスについて優しく真面目に教えてくれるという内容なの!
たまたま昨日、この本を全編読み返したのだけれど、これ、ちょう名作だって思ったよ。
新しい生活がはじまり、セックスが増える時期に、いろんな人に読んでもらいたいなあ。

この本の企画は、一徹さんがあるウェブ媒体で「男性向けAV」と「女性向けAV」の違いを語ったことに端を発しています。
男性がセックスに感じるファンタジーと、女性がセックスに求めるファンタジー。その違いを知っておかないと、お互いに傷ついたり、気持ちよくなれなかったりしますよ。
そんな指摘に、男女双方から大きな反響が寄せられて、じゃあもっと詳しくこの話を掘り下げようとなったのが、本書が生まれたきっかけでした。

一徹さんいわく 
多くの男性はセックスを「男性向けAV」から学んでいて、

多くの女性はセックスを「付き合ってきた男性」から学んでいる。

だから、女性(とくに若い女性)が本当に気持ちいいセックスができるかどうかは、相手の男性の力量と想像力に由来しちゃうところが、ままある。それってちょっと、ロシアンルーレットだよね。
運良く素敵な男性に早めに出会えればいいけれど、そうじゃなければ、正しい知識をもったり話し合いをしたりすることが、大事になってくる。

セックスが、イチかバチかの「賭け」のようなロシアンルーレットじゃなくて、もう少し、確度高く楽しめるものになるといいよね、という気持ちでスタッフ一同、ちょう真面目に作った本がこれなのね。

そういえば、この本の取材は、いつも朝早くからのスタートだった。
都会を眺めおろす窓の大きな気持ちのいい会議室で、大の大人が4人、シラフで延々とセックスに関して質問し続けては、「うわー、それ知らなかったーーー!!」「みんなにも知ってもらいたい!!」と興奮しながら、作った本です。
読み返したら、そのときの、ピュアでエロな気持ちが蘇ってきた(笑)。

一般的に、セックスのことって、人にはすごく話しにくい類の話だと思う。
でも誰とも意見交換できないと、自分の経験(それはつまり彼らの経験)だけに頼ることになるし、話せなければ悩みも深くなる。
そんなときに、この本がひとつのお薬みたいに、効いてくれたらいいなーと思います。
彼と一緒に読んでくれたら嬉しいな。

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この仕事のとき、AV女優の紗倉まなさんの魅力にハマりました。telling,でも、紗倉まなさんが書かれた『働くおっぱい』をご紹介してます。ぜひこちらもチェックしてくださいねー。
見えそうで見えない。AV女優紗倉まなさんに学ぶ恥じらいの美学

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それではまた来週水曜日に。

ライター・コラムニストとして活動。ファッション、ビューティからビジネスまで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『髪のこと、これで、ぜんぶ。』『書く仕事がしたい』など。
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