本という贅沢96『ヒィロのやせる30秒メソッド』(ヒィロ/かんき出版)

家こもりが増え、たるんできた体に喝。誰でもできる30秒メソッド

毎週水曜日にお送りする、コラム「本という贅沢」。今月のテーマは「転換」。新型コロナウイルスの感染拡大で7都府県に非常事態宣言が出されました。不要不急の外出をさらに控えたり、リモートワークを拡充したりすることで長くなる在宅時間。懸念されるのは運動不足です。今回はおうちで簡単なエクササイズをしたい時に読みたい一冊を取り上げます。 書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんが紹介します。

●本という贅沢96『ヒィロのやせる30秒メソッド』(ヒィロ/かんき出版)

『ヒィロのやせる30秒メソッド』(ヒィロ/かんき出版)

ここぞとばかり毎日、テレビ会議システムの「Zoom」でのランチや飲み会をしている。
同業者と、古巣の美容業界関係者と、学生時代の友人と、趣味のサークル仲間とetc.etc.

仲間内で必ず話題になるのが、最近太ったという話。
そして、身なりに気を使わなくなったという話。

世界的に有名なある美容家さんは、「私いま、上半身はZoomに映るからブラウスだけど下半身はスウェットよ! 信じられる? この私がよ」と、おっしゃっていた。
彼女曰く、ヒールを履かない日が続き、身体が怠けてゆるんできたそう。

私がひそかに「プロ奢ラレヤー・♀」と(心の中で)呼んでいるモテ女も、人生最高体重を更新するピンチらしい。曰く、お相手の皆さんが家族以外との濃厚接触を避け始めた結果、露出の機会が減って気が緩んだそう。

私自身はというと、テレワークであろうがなかろうが自堕落な人間なので、もともとすぐ太る。しかも引きこもり大好き人間だから、これ幸いにと家から一歩も出ない。よく寝てよく食べる。動かない。当然、いつも以上に太る。

「人目を気にせず生きていきましょう」
とか
「他人と比べず、ありのままの自分を大事にしましょう」
とか、みんな言うけれど
こと、体のラインに関しては、「人目」がないとこれ、際限なくゆるむ。「人目」って大事だったんだなあーと、きつくなったデニムをはきながら思うわけです。

というわけで、さすがに危機感覚えて、手に取ったのがこれ。
『ヒィロのやせる30秒メソッド』。
ある書籍編集さんが、「これ、めっちゃいいから!」と、送ってくれたままごめんなさい積読になっていたやつ。

というのも私、極度の方向音痴で、こういうビジュアル本の動作が全然イメージできないタイプなんです。

ストレッチとか体操とかヨガのポーズとか、クロールの泳ぎ方とか、走り方とか、ラケットの振り方とか。写真やイラストで見ても、さっぱり動作できない。矢印の方向がどっち方向なのか混乱するの。腕を右に回せばいいのか、左に回せばいいのか、わからない。
たぶん3次元の空間把握能力が著しく低いんだと思う。「サイコロの裏側は何?」問題がまったく解けなかったタイプ。縦列駐車すると必ず前後の車にあてるタイプ。

でも、この本はとにかく、わ か り や す い ! 
実際にやってみたらわかるんだけど、ひとことで言うなら、「私でも、できる」。

まず、おばあちゃんみたいなこといっちゃうけど、写真が大きくてめちゃくちゃわかりやすい。わたしみたいな、ポンコツ空間把握脳は、写真が細かいと機能停止するんだよね。

それに、これは意外な盲点だったのだけれど、どこかで見たことある動きばかりなのがいい。長い人生の中で、「これ、一度はやったことある」みたいなポーズなので、迷わなくていい。

あとね、気になる部位ごとに、「これだけやっとけ」感あって、選抜されきった少数精鋭のポーズやモミモミが良い。たくさんあると、やる前から疲れちゃうし。

そして、本が180度開いたままページが閉じないのもいい。手で本を押さえながらストレッチとか、無理だもんね。

最後に、とにかく、気持ちいい。まだ始めて数日だから、痩せたのか痩せてないのかはわからないけれど、それでも凝り固まった体が「ご主人さま、これ気持ちいいです。もうちょいお願いします」って言ってるのが、わかる。

というわけで、私のように、こういうダイエットやストレッチ本初心者に、おすすめです。
いつかまた同僚や友人に会うときに、別人になっていないように。いまのうちに贅肉ケアしておこう。
(ちなみに、zoom中でも画面の外でこっそりできるストレッチが多いよ!)

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これを書いている最中に、緊急事態宣言が出るという報道がありました。歴史的な瞬間に生きているな、と思う。
もちろん事態の深刻さははかりしれないから、軽々しくは言えないし、個人的には講演業が仕事の3分の1を占めるので経済的な打撃もある。けれども、驚くほど私自身の心は穏やかです。家にいるだけで誰かの命を救えるのであれば、今は自分にできることをしたい。誰かの命を救っている人の邪魔をしない行動をしたい。

これを機に、体だけではなく、いつのまにかあれもこれもとfatになっていた心の贅肉も落としたい。
「いつか時間ができたらやろう」と思っていたことに手をつけるのは、いまなのかもしれないですね。

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それではまた来週水曜日に。

佐藤友美さんのコラム「本という贅沢」のバックナンバーはこちらです。

・デブには幸せデブと不幸デブがある。不幸なデブはここに全員集合整列敬礼!(テキーラ村上/KADOKAWA/『痩せない豚は幻想を捨てろ』)
恋愛で自分を見失うタイプの皆さん。救世の書がココにありましたよ!アミール・レイバン、レイチェル・ヘラー/プレジデント社/『異性の心を上手に透視する方法』

・人と比べないから楽になれる。自己肯定感クライシスに「髪型」でひとつの解を(佐藤友美/幻冬舎/『女は、髪と、生きていく』)

ライター・コラムニストとして活動。ファッション、ビューティからビジネスまで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『髪のこと、これで、ぜんぶ。』『書く仕事がしたい』など。