本という贅沢88『異性の心を上手に透視する方法』(アミール・レイバン、レイチェル・ヘラー/プレジデント社)

恋愛で自分を見失うタイプの皆さん。救世の書がココにありましたよ!

毎週水曜日にお送りする、書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんによるコラム「本という贅沢」。2月のテーマは「愛」。愛は人生を豊かにするけれど、時に愛のせいで自分を追い詰め、苦しんでしまうことってありませんか? 今回はそんな苦悩からあなたを解放する「救世の書」になるかもしれない一冊についてお届けします。

●本という贅沢88『異性の心を上手に透視する方法』(アミール・レイバン、レイチェル・ヘラー/プレジデント社)

『異性の心を上手に透視する方法』(アミール・レイバン、レイチェル・ヘラー/プレジデント社)

今月のテーマは「愛について」なのだけれど、前回のコラムで、恋と性欲の差についてすらあやふやだった私が、愛について何か言える立場かって問題がまず発生してるよね。

というわけで、ここしばらく、いろんな人に「愛って何ですか?」「愛について教えてくれる本ってありますか?」と聞きまくっていたところ、えらい有益な情報をいただいた。

「さとゆみさん、愛についての決定本はコレです」、とな。

なんでも、彼女はこの本に出会って、自分の恋愛傾向をはじめて知り、50歳を超えてから幸せな結婚をしたのだとか。

「日本語タイトルがひどいんだけど、これ、タイトルが違ったら、10倍売れた本だと思うんですよ」と、彼女の力説は続く。「さとゆみさんに、ぜひ読んでほしくて」と、後日、家に本が届いた。どんだけ推しか。

ここまで推される本なのだから、相当すごいのだろうと思ったのだけれど。
これ。
期待のはるか上をいくすごいやつでした。
これは、みんな、読んだ方がいい。

とくに、普段は仕事できるし論理的思考をするのに、こと恋愛沙汰になると正常な判断ができずにメンがヘラる極端な女子は、絶対に読んだほうがいい。

私も過去に葬ったり葬られたりしたいろんな恋愛が、マッチ売りの少女ばりに蘇ったよ。
ああああああああ、だからあの件は失敗したのか。だからアレはうまくいったのか。だからあの人とは今でも仲良くいられるのか、って、もう答え合わせ感半端なかったよね。

そして思い出した。これさえ読んでおけば、私、死にかけることもなかったかもしれない。そう、私、一回、恋愛で限りなく死に近づいたことがあるんですよね。

この本で紹介されているのは、3つの恋愛タイプ。

・ひとつは、人口の50パーセントを占めるSタイプ(安定型)。いろんなことを心配せずに相手との愛情を形成できるタイプ。
・2つめは、Nタイプ(不安型)。いわゆる見捨てられ不安が強く、相手の機嫌が悪いと、自分が何かしでかしたのではないかと不安になってしまうタイプ。
・3つめはVタイプ(回避型)。人を信頼するのが苦手で、交際相手に縛られるとすぐに嫌になってしまうタイプ。

自分とパートナーがどのタイプに当てはまるかを知った上でコミュニケーションすれば、恋愛は安定するし、うまくいかないタイプにずるずるハマり傷つくことも減るというわけ。

で、話は戻るんだけど、私が死にかけたのは、学生時代のこと。当時付き合っていたトラック運転手に、環八でトラックから突き落とされたんだよね。

あれはまさに浮気が完バレした瞬間だった。なぜか別の男の人の家で過ごしたときの会話が、リダイヤルでかかった彼のケータイの留守電に一部始終録音されてしまったというホラー。トラックの中で音声再生され、動かぬ証拠を突きつけられた私。彼の剣幕にちょっとドン引きして「うーん、どっちかというと、あっちが本命で、あなたのほうが浮気」と言ったのがまずかった。赤信号で停止するやいなや、助手席のドアを開けられ、どんと突き飛ばされた。

当時はまだ俊敏でとっさの受け身が取れたから怪我しなかったけれど、後続車もきていたし、今考えたら結構危なかったよな。信号が変わって発進する車の窓から私のハンドバッグが飛んできて、それが私の後頭部を直撃するという、ギャグ漫画のような一コマを演じて文字通り危ない恋が終わりました。

あれ、今思うと、彼は絶対にN(不安型)タイプだった。毎晩、ちゃんと家にいるかコールされてたもんな……。

あと、なかなかに自己肯定感が高い私が、結構メンタルを削がれた恋愛があった。当時はジェットコースターに乗せられているようなアップダウンの毎日で、最後はもう心身ともにボロボロだった。

あの時、私、ツンデレっていうか、意外とMなのかなって自分のことを思ったりしたんだけど、なんのことはない。あれ、相手がV(回避型)タイプだったんだな。あのときは、私の中にあるN(不安型)の要素をめちゃくちゃ引き出されたのだと思う。この本でいう“アタッチメント・システム”がオンになっている状態を、恋のドキドキと勘違いしたのだろう。

その数年後、彼と結婚した奥さんは精神を病んでしまったから、あれも危ないといえば危ない橋だった。本を読んで、今後はS(安定型)タイプとのみ恋愛しようと心に誓うなど。

とまあ、過去を振り返るだけでも面白いわけですし、現在進行形恋愛女子や、今後誰かと恋愛する予定の人には、もう断然おすすめしちゃう。
冗談抜きに、命を救う書だと思ったよ! 高校の教科書にすればいい。

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そんな目線で、過去に読んだ小説などを振り返ると面白かったりします。
このコラムでも紹介した『愛がなんだ』の主人公は、完全にNタイプで、恋愛相手のマモちゃんは完全にVタイプ。これ、この本によると、最悪のパターンになりやすい組み合わせ。
『消滅世界』で示される近未来の結婚は、みんながSタイプであることを義務付けられる、いびつに安定した結婚だ。
なんて、人様の恋愛に思いを馳せるのも楽しい。

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それではまた来週水曜日に。

佐藤友美さんのコラム「本という贅沢」のバックナンバーはこちらです。

・理想でメシは食えない。理想と現実の折り合いをつけてなんとかやってい文字数(寿木けい/小学館/『いつものごはんは、きほんの10品あればいい』)
・人と比べないから楽になれる。自己肯定感クライシスに「髪型」でひとつの解を(佐藤友美/幻冬舎/『女は、髪と、生きていく』)

・「どうせ私なんか」と決別する。SNS時代の自己肯定感の高め方(中島輝/SBクリエイティブ/『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』)

ライター・コラムニストとして活動。ファッション、ビューティからビジネスまで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『髪のこと、これで、ぜんぶ。』『書く仕事がしたい』など。