「どうせ私なんか」と決別する。SNS時代の自己肯定感の高め方
●本という贅沢49『何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』(中島輝/SBクリエイティブ)
今回は「どうせ私なんか……」を捨ててみよう。
最近、「自己肯定感」をテーマにした本が、アツい。
amazonで検索したところ、この半年間で「自己肯定感」がタイトルに入っている書籍が12冊もリリースされていた。
その中でも、とくに売れているのが、昨年このコラムで紹介した『自分を好きになりたい 自己肯定感を上げるためにやってみたこと』(わたなべぽん/幻冬舎)と、今日ご紹介する『自己肯定感の教科書』だ。
なぜいま「自己肯定感」にスポットがあたっているのか、ちょっと考えてみたいと思う。
その兆しは8年前にスタートしたと、私は思っている。
私はファッション誌ライターから書籍ライターに転向し、さまざまな女性向け媒体に関わってきたのだけれど、いま振り返れば、女性向けの雑誌や書籍の潮目が変わったのは、2011年だった。
この年、震災があった。
この震災の直前まで、女性誌の表紙といえばモテ系雑誌をのぞいて、クールな表情でかっこよく撮影するのがセオリーだった。
でも、震災のあとは一変する。モード誌ですら、モデルが笑顔だったり、モデル同士が顔を見合わせて笑いあったりといった「ハッピー感」を表現する写真が増えた。
「人とのつながり」、「絆」という言葉がよく聞かれた1年だった。
Twitterがキャズムを超えて、市民権を得たのも、この頃。この後、Facebook、Instagramなどにアカウントを作る人が増え、SNS時代が到来する。
私たちは、オンラインでも、オフラインでも、人とつながり始めた。
「人生丸裸時代」の到来だ。
他人とのつながりが濃密になり、自分の行動も他人の行動も可視化されるようになると、人と自分を比べる機会が増える。人からの見られ方も気になる。
そんなSNS時代に、「自分に自信が持てない」「自分が好きになれない」「どうせ私なんか……」と思うことは、じわじわとメンタルを蝕んでいく。
そんな私たちの心に、するっとフィットしたのが、当時まだそういった名前で呼ぶ人はほとんどいなかった、「自己肯定感を高めよう」という概念だ。
実は、震災以降、爆発的に売れた書籍のほとんどは、この「自己肯定感」が裏テーマになっている。
たとえば、いまや世界的スターとなった、こんまり(近藤麻理恵)さんの『人生がときめく片づけの魔法』。
この本は、一見片付けの方法を教えているように見えるけれど、実は片付けを通して「心の問題」を解決する本だ。
ときめくものを残し、大切に使うということは、自分を丁寧に扱うということ。そうすると、自分を好きになれるし、自信を持てるようになるし、人生もうまくいく。
私たちは、片付けを通して、「自分を好きになる」。つまり「自己肯定感が高まる」体験を手に入れている。
こんまりさんの本だけではない。
『読むだけで思わず二度見される 美人になれる』も
『フランス人は10着しか服を持たない』も、
『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』も、実は同じ。
私たちは、メイクやファッションや料理を通して、「自分を好きになる」「自己肯定感を高める」方法を手に入れているのだ。
と、前置きが長くなったけれど、そういった私たちのラスボスである自己肯定感について、ど真ん中、かつ“全部盛り”で書かれているのが、この『自己肯定感の教科書』です。
たくさんある「自己肯定感」本の中でも、この本の特徴は2つ。
①自己肯定感を木にたとえ、その根っこや幹、葉や実を構成する6つの要素をわかりやすく解説してくれているところ。
いろんな自己肯定感本を読んだけれど、感覚的に自己肯定感を理解したい人に、(多少力技的なところもあるけれど)ここまでわかりやすい説明はなかなかないと思う。
自己肯定感とよく並べられる、自尊感情や自己受容なども整理されている。
②全メニューてんこ盛りなこと。
よく引き合いに出されるデータが、もりだくさんで紹介されているだけではなく、実践的な「自己肯定感アップ法」もたくさん紹介されているところ。読んで勉強になるだけじゃなくて、今日からすぐ取り組めるところがいい。
「自己肯定感」に興味を持った人が、最初に読む本として、おすすめの一冊。切り取ったり書き込んだりする本なので、電子書籍ではなく、ぜひ、紙の本で!
この本を読んでいると、中になんども登場するアドラー心理学について、読みたくなります。いまさらながら、『嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え』を、もう一度読み返してみようかなと思った今日この頃です。
それではまた来週水曜日に。
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