本という贅沢48『こじらせない離婚』

捨てるか、残すか、その夫。1ミリでも離婚が頭をよぎったらこの本

毎週水曜日にお送りする、コラム「本という贅沢」。4月のテーマは「捨てる」。アレを捨てたり、コレを捨てたりする本を、書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんが紹介します。

●本という贅沢48『こじらせない離婚』(原口未緒/ダイヤモンド社)

『こじらせない離婚』(原口未緒/ダイヤモンド社)

4月のこのコラムのテーマが「捨てる」って、結構なアレですね。平成も終わりますし、いろいろ断捨離気分なのでしょうか。

4月のコラムは4回あるのですが、初回の今日は手初めに、夫を捨てたくなった時の話。
今日は、私自身が書籍ライターとして担当した離婚本を紹介します。

毎度、私ごとですが
「人生で辛かった日選手権」をしたら、ベスト5に入るのは、離婚を決めた日です。

私たちに子どもはいなかったし(犬は2頭いたけど1頭ずつ引き取った)、揉めるほどの財産もなかったし、お互い健康で働いていたし、
私は「本棚だけ持っていきたい」といい、元夫は「テレビだけ持っていきたい」と言い、
クイーンサイズのベッドは、これからお互い一人暮らしをする家には入らないので、一緒にバラして粗大ごみに捨てた。
最後の共同作業。

どちらかに非がある離婚ではなかったし、はたから見たら、すごくスムーズな円満離婚だったと思う。

それでも、血を吐くくらいに苦しかった。

それはなにゆえの苦しさかというと、

曲がりなりにも「一生添い遂げよう」と決めた人と別れるってことは、人生においてした一番大事な決断を反故にすることで、
それって、自分が誇りに思っていた「一度決めたことはやり遂げる力」みたいのを信じられなくなることだ。
子どもの頃からコツコツ貯めていた自信貯金みたいなものが残額ゼロになって、もうなんだか絶望的な気分だった。

で、こういった、自分が経験したことがないことに立ち向かわなきゃいけない時こそ、書籍の出番だよね。
でも、直前に離婚した友人が「どうせ一度しか使わないんだから、わざわざ買うことないよ」と、お下がりをくれた離婚指南本には、お金や親権について書かれてはいても、メンタルどーすればいいのか問題については一言も触れられてなかった。それ以外の本もみたけど、みんなそう。
あの頃は毎晩、片割れのミニチュアダックスを抱いてぐずぐず泣きながら寝ていたな。

なんの争いごともなく円満離婚した私でさえこんなに苦しいのだから、切ったり張ったり揉めた夫婦はさぞ苦しいだろうと思う。
そんな離婚のメンタル的な苦しさが少しでも減る本があったらいいのにな、と思って出版社に持ち込み相談したのがこの本の企画でした。

この本の著者である未緒先生は、ご自身が3回の離婚歴を持つ離婚専門弁護士。
一見弁護士らしからぬゆるふわキャラなのに、ドロ沼離婚を次々ふわっと安全着地させる凄腕は業界でも有名で、

その極意はズバリ
離婚がうまくいくかどうかは、心の整理が9割、法律1割!
でした。

取材中、未緒先生が何度も言ってらしたのは、

裏切られた、ムカつく、憎い、許せない……と、夫をdisる人ほど実は、夫に強く執着している。
執着すると離婚は揉めるし、長引くし、お金の問題もうまくいかないことが多い。相手より、まず自分に矢印を向けなさい、ということでした。

「離婚したい理由は?」
「離婚しなければできないことはなに?」
「それ、今でもできない?」
「離婚したらやろうと思ってること、今、やっちゃえば?」

これらを整理していくことで、驚くほど心がクリアになり、不思議なことに離婚(もしくは再構築)もすんなりいくのだとか。
心と身体をできるだけ傷めない、病ませない、そんな気持ちの整理の仕方を教えてくれるのが、未緒先生だったのです。

先生と過ごした1年半で、9年の年月を超えて、私の魂は癒やされた気がしていて。
あのときの私が、この本を読めていたら、きっともっと早く自分のことを救ってあげられたんじゃないかと思う。

ほんの少しでも離婚を考えたことがある人には、おすすめです。
もし、まだ気持ちが揺れているなら、今から戻れる方法も、この本には書かれています。実は「この本を読んで、離婚しないで済んだ」という感想もいくつももらってます。

31歳のときの私の魂が救われたように、夫婦関係で悩んでいる人の魂を救う本になりますように。

続きの記事<「どうせ私なんか」と決別する。SNS時代の自己肯定感の高め方>はこちら

  • 第2章に登場する、「可愛がっていた会社の後輩に夫を寝取られた池田久美さん(37歳)」が私に似ている、とよく言われるのですが、自分でも似てると思います。

    それではまた来週水曜日に。

ライター・コラムニストとして活動。ファッション、ビューティからビジネスまで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『髪のこと、これで、ぜんぶ。』『書く仕事がしたい』など。