本という贅沢103『さあ、才能に目覚めよう―ストレングス・ファインダー2.0 新版』(トム・ラス/日本経済新聞出版)

ないものねだりは、もうやめる。「コロナ後デビュー」は、この一冊と!

毎週水曜日にお送りする、コラム「本という贅沢」。 今月のテーマは「新しい生活」。緊急事態宣言が全面解除されました。この間の自粛生活で様々な発見もあったのではないでしょうか。大きく暮らしが変化する中で読んでおきたい一冊を紹介するのは書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんです。

●本という贅沢103『さあ、才能に目覚めよう―ストレングス・ファインダー2.0 新版』(トム・ラス/日本経済新聞出版)

高校生の時、足首の靭帯を切った。
当時ソフトテニス部の部長だった私は、新人戦前の怪我が情けなさすぎて落ち込んだ。

でも、この強制休養期間に見た後輩たちの試合は、とても面白かった。
普段コートに一緒に立っているときにはわからない、一人ひとりの強みや癖がよく見えるのだ。
そっか、あの子はスマッシュよりもボレーの方が得意なのか。あの子のバックハンドいいな。伸ばしてあげたい……。
ベンチから見た後輩たちは、思った以上にいろんな強みを持っていた。

そんな話を、祖父にしたら、宮大工だったじいちゃんは、
「ゆみ、法隆寺は、釘を一本も使ってないのを知ってる? この場所にはこの木、この場所にはこの木って、その木の特徴を見ながら構造を組んでいるんだよ。だから何千年も持つんだよね」と言った。
たぶん、適材適所みたいなことを伝えたかったんだと思う。

先日ふと、この祖父の言葉を思い出した。
というのも、いま20代、30代に、再び「ストレングス・ファインダー」が流行っていると聞いたからだ。

あー、なんか、わかるなあ。
確かにいま、これやりたい気分になるやつだって、思った。

・・・

「ストレングス・ファインダー」
telling,世代のみなさんは知ってます? 私が20代の頃、一大ブームになった性格診断のようなもの。
書籍1冊につき1個のアクセスコードが発行され、それにアクセスすると、いろんな質問を投げかけられる。 そして34個に分けられた資質のうち、自分がどの分野に才能を持った人間かがわかるようになっているものなの。

ちょっとした占い感覚で楽しくやれるのだけれど、特徴的なのは、その名のとおり、つねに「強み」のほうにフォーカスされるということ。
欠点を補うことに時間をかけるのではなく、強みをのばすために時間を使う。
この本ではこのことを「いばらの道を選ぶな。強みのゾーンに投資しろ」と表現している。
ひらたくいえば、「苦手分野や弱点を補ってもたかが知れている。それより強みをのばしたほうが、自分も周りもハッピーになれる」というメッセージです。

そう、私がこの強制自粛期間に感じた、一番大きな概念は、それだった気がする。

もう私たち、自分に向かないことは、やらなくていいんじゃないかな。
苦手を必死に克服すること、やめてもいいんじゃないかな。
好きや得意を、もっと大事にしていいんじゃないかな。

この自粛期間、私たちが気づいたことって、ひとことで言えば、
「やればできるんじゃん」
ってことだったと思うんだよね。

いままで無理だと言われていた、リモートワーク、業務のオンライン化、時短勤務に時差通勤……etc. 
やればできるじゃん! 外圧あればできるんじゃん!
そう思った人は少なくなかったはず。

あと、もうひとこと付け加えれば、
「やらなくて良かったんじゃん」
とも思ったよね。

サービス残業、不要な会議、長丁場の接待、不毛なハンコリレー……etc.
やめても支障なかったじゃん。やらなくても、会社まわってるじゃん。
そんな感覚もあったと思う。

この数ヶ月、私たちは、いろんな凸凹をうまくやりくりして、なんとか生活や仕事をまわしてきた。そして、それが意外と機能することを知ったと思うんだ。

そんな「働き方」の変わりどき。
自分の「働かせ方」や「生かし方」だって変わっていいと思った。

人が得意なことは人にまかせて、
そのぶん自分が得意なことを自分が引き受ける。
そんなエコシステムで世界がまわるといいなって思ったし、多分それできるし、しなきゃきっと未来は暗い。
凸凹を組み合わせながら、お互い幸せになることを、もっと真剣に考えていいんじゃないかな。
そんなふうに思ったよ。

押したりゆれ戻ったりしながら、新時代は始まりかけている。
スピリチュアルの人たちが、昨年からよく言っていた「風の時代」に、そろそろ切り替わる潮目なのだろう。

ストレングス・ファインダーはそんな、コロナ後デビューの自分に、新しい道標をくれるんじゃないかな。

それではまた来週水曜日に。

●佐藤友美さんの新刊『女は、髪と、生きていく』が発売中です!

佐藤友美さんのコラム「本という贅沢」のバックナンバーはこちらです。

・恋愛で自分を見失うタイプの皆さん。救世の書がココにありましたよ!(アミール・レイバン、レイチェル・ヘラー/プレジデント社/『異性の心を上手に透視する方法』)・デブには幸せデブと不幸デブがある。不幸なデブはここに全員集合整列敬礼!(テキーラ村上/KADOKAWA/『痩せない豚は幻想を捨てろ』)
・人と比べないから楽になれる。自己肯定感クライシスに「髪型」でひとつの解を(佐藤友美/幻冬舎/『女は、髪と、生きていく』)

年間10冊以上を担当する書籍のライターとして活動。ビジネス書から実用書まで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『道を継ぐ』など。
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