緊急事態宣言解除。新入社員の不安、パワハラ被害、どうする?専門家に聞くストレスケアも紹介(後編)

5月25日に全面解除された緊急事態宣言。外出自粛に伴うテレワークから出社の機会が増えるなど、働く環境が変わる人も多いでしょう。後編では新入社員や、会社の同僚・上司と相性が悪いといった人へのアドバイスをお伝えします。お話は心療内科医で、複数の企業の産業医も務めるセントラルメディカルサポートの石澤哲郎さんです。
セントラルメディカルサポートの石澤哲郎さん

新入社員に「五月病」のような症状、増える恐れ

――4月入社の新社会人は不安な日々を過ごしていると思います。新入社員のなかには、会社で仕事をしたことがない人もいると思います。リモート研修期間にクビにされた新社会人の話も、ネットで話題になりました。新入社員が出社するようになると、精神的な負担が増すのではないでしょうか。

石澤哲郎さん(以下、石澤):通常であれば、新社会人は1カ月~半年の研修を受けた後、仕事につく場合が多いですが、今年は大変イレギュラーでした。
新入社員に自宅待機を指示して研修ができていないケースがありますし、研修をオンラインで行っている場合もある。いずれにせよ能力や経験が不十分なまま仕事に入らざるを得ません。
会社側もこれまでは、受け入れ態勢を整えてから新入社員を迎えていましたが、今年はコロナ禍で厳しい場合もあり得ます。
この状況で出社していなかった人は誰しも会社での仕事に戸惑うと思いますが、特に新社会人はより高いハードルを感じるでしょう。
そもそも学生から社会人になることは、慣れないことばかり。誰だって疲れるものです。新入社員には毎年一定数、1ヶ月ほどで会社に行けなくなる人がいます。「五月病」と言われているものです。新しい環境で頑張っていた新入社員が、ゴールデンウィークをきっかけに気持ちが切れてしまい、会社に行けなくなってしまうんですね。

――今年は五月病の要素に加え、在宅勤務を経てから出社するため、悩む新社会人が増えそうですね。受け入れ側の会社はどうしたらいいのでしょうか。

石澤:今年はGWの1週間どころか、4月から会社に行けない状態が続いています。前向きな気持ちで入社した人も、すでに意欲を失っているかもしれません。無くなったやる気を取り戻すことは、これまでよりもずっと難しい。五月病のような症状が6月に出る新入社員が増えることを懸念しています。
会社側は、きちんと新入社員とコミュニケーションをとってほしいと思います。例えば今の会社の状況をテレビ会議で伝えたり、6月以降の仕事についてロードマップを示したりすることが有効です。人は見えないものや、わからないことに対して不安を抱くので、なるべく“見える化”することが大切なのです。
あと会社には、職場の人間関係を円滑にする方法を考えてほしいです。Zoom飲み会などを配属前にも積極的に開くことで、上司や先輩と気軽に話せる場をつくってあげるといいと思いますよ。職場の人がどんな人かわからないより、慣れた状態で出社する方が気持ちは楽になりますから。

ハラスメントで出社したくない人も。在宅の経験を生かして

――パワハラやセクハラなど、職場の人間関係に悩みを抱えている人はこの後、どうしたらいいのでしょうか。

石澤:職場の人間関係が良くない人も、会社に行きたくないですよね。
ハラスメントについては会社側が主体的に解決することが大前提です。その上でお話ししますが、「人間関係をうまくやらなくては」と思いすぎないことが大切です。ハラスメントに敏感な人の中には、人との関係を重視しすぎるがゆえに、ストレスをためてしまう人がいます。もちろん人間関係はいいに越したことはありませんが、それが仕事の目的ではありませんよね。在宅勤務で、「意外と職場の人とコミュニケーションをとらなくても仕事ができた」ということが分かった人も多いはず。ここでつかんだ人との“距離感”を、出社するようになってからも保ってみてください。
テレワークではアウトプットが重視されるため、職場で長く働いたり、人間関係をうまくやったりすることは、評価において重要ではありません。今後、この傾向は加速すると思います。単純に業務能力が評価される社会になると、人間関係を無理に保つ必要性は以前よりも低くなるかもしれませんね。

――ストレスで身体に不調が出る場合、どんな症状があるのでしょうか。

石澤:身体に出る症状については、人によって様々で一概には言えません。
ただ、頭痛がする、生理痛が重くなる、おなかが痛くなる――といったように、ストレスは身体の一番弱いところに症状が出てきます。重要なのはどこに症状が出たか、ではなく、ストレスと関係した体の不調が出ているか、です。例えば会社に行く日だけ調子が悪いとか、逆に週末だけ調子が悪いとか…。仕事と不調に何らかの関係がある場合は、ストレス由来の症状の可能性があります。

メンタルの不調については悪くなるまで気づかない人が多いので、注意が必要です。
まずは以下の二つのことを意識してください。一つ目は、ちゃんと眠れているかどうか。普通は疲れていれば眠れますが、色々不安なことがあると気がかりで、しんどくても眠れなくなるためです。もう一つは仕事以外の時間を楽しく過ごせているか。仕事はみんな、ある程度は大変だと思います。そこで重要なのが仕事以外の時間に楽しみを見つけてリフレッシュすることです。これまで楽しめていたことが、なぜか今までより楽しめなくなったり、仕事のことばかり考えてしまったりするようになったら要警戒です。
うつ病や適応障害になる人に最初に出てくる症状は、不眠と、楽しかったことが楽しくなくなることです。1日、2日なら単なる疲れかもしれませんが、数日から一週間くらい続くと、メンタル不調の可能性があります。こういった症状が続くようなら医師に相談することをおすすめします。

余分な情報遮断も必要。楽しみ見つけてストレスケアを

――心身に問題は無くても、コロナ渦で「仕事を失わないか」「給料やボーナスが減らないか」などと不安を感じている会社員は多いです。このような状況でもストレスをためないために、私たち一人ひとりができることはどんなことですか。

石澤:色々な方法がありますが、大きく分けて四つあります。
一つは知識的な部分で、必要以上に不安になる情報を集めないこと。正確な知識を持つことは大切ですが、きちんとしたメディアの情報を1日1時間くらい見れば十分。余分な情報は遮断することも必要です。
先のことを考えすぎないことも大事です。先のことはわからないので「コロナに感染したらどうしよう」と今、考えても仕方がない。色んなことは、いざ始まると「なんとかなる」ことも多いので、心配しすぎない。
また先ほど“楽しみ”の話をしましたが、このご時世に合うストレス解消法を見つけることも大事です。大勢で顔を合わせての飲み会や、友人と近距離で長時間話すことは難しいかもしれませんが、そんななかでも楽しめることを見つけると、リフレッシュできます。
最後に、人ときちんとコミュニケーションをとることは必須です。家族や友人に電話やテレビ電話で愚痴を言うだけでも気持ちは、楽になります。自分が困っていることは意外と他の人も困っていて、「自分一人だけじゃなかったんだ」という安心感にもつながりますよ。

●石澤哲郎さんのプロフィール
産業医事務所セントラルメディカルサポート代表。企業30社以上の顧問を務め、休復職対応や長時間労働対策、健康経営推進に取り組んでいる。著書に『心療内科産業医と取り組むストレスチェック集団分析 職場改善への活用手順と実践例』(第一法規)など。

ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。
1989年、東京生まれ。不登校・高校中退から高卒認定を取得し大学へ。新聞の記者・編集者を経て、2020年3月からtelling,編集部。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理。
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