グラデセダイ

【グラデセダイ13 / Hiraku】世代ギャップについて

「こうあるべき」という押しつけを軽やかにはねのけて、性別も選択肢も自由に選ぼうとしている「グラデ世代」。今回は、中村キース・ヘリング美術館プログラム&マーケティングディレクターのHirakuさんのコラムをお届けします。ミレニアル世代が感じる世代ギャップについて。

●グラデセダイ13

「自分たちが若い頃は」などという思い出話を私たちミレニアル世代に重ねてお話くださる団塊の世代やバブル世代。中にはさらに「自分があなたの年だった時なんて」とお叱りくださる人もいますよね。

 そのあと続くのは「寝ずに働いた」や「文句言わずに残業をした」や「それくらいの給料でなんとか食べていた」ですよね。本当に苦労したのですね。

しかし、その昔話には国の経済的背景があります。高度成長期やバブル期は一生懸命働けば報われた時代。終身雇用や社会保障がついてきて、退職金や公的年金制度なども保証され、しっかり働きさえすれば会社や国が面倒をみてくれた時代です。また、物価が上がれば賃金も上がり、ひとつの仕事をしていれば、低所得でもなんとか生活水準は保てた時代です。

そして私たちミレニアルが成人した2000年代以降。世の中には退職金も年金の約束もない。本来、自分たちの社会保障のために納めるべき税金も、団塊やバブル世代が残し、膨らみ続ける政府債務、少子高齢化のため増え続ける年金や社会保険の負担に変わり、「自分があなたの歳だった時なんて!」という諸先輩方の後片付けをさせられています。さらに「それくらいの給料でなんとか食べていた」時とほぼ同じ給料しかもらっていない一方、ひとつの仕事だけでは生きていけない私たちミレニアル世代もたくさん存在します。

寝ずに働き、文句言わずに残業したことを美徳にした大人たちが残した結果は、彼らの子供や孫の世代である私たち2030代にとっては悲惨な現実となったのです。その結果を現実として生き抜くべく私たちがしている事は、例えば仕事と私生活をはっきりと分けて、職場での生産性を向上させる事。終身雇用や人材育成プログラムがない中、将来に備え、様々な職を3〜5年単位で転々とし、自己育成をしていること。また、作家活動などの特殊技術に従事しながら、食いつないでいくためにいくつものアルバイトなどの非正規雇用を選択し、工夫しながら生活方法を模索しています。

 そんな私たちに対して「付き合いが悪い」「定時で帰る」「上司の誘いを断る」なんて言われても、それをしたところで何か返ってくるわけではありません。団塊の世代やバブル世代へ向けて言いたいのは、私たちはあなたたちの後片付けや老後のために働き、ハラスメントを受け、低賃金で働き、楽しくもなく、さらにそもそも体に悪いお酒を強要され、一体どこまで付き合わなければいけないのでしょうか。

「この年になれば分かるよ」と言われても、このままではあなたたちの年になった時に、生活が支えられていて、健康に生きているのかも私たちには明確ではありません。参政して世の中を変えたいという気持ちもありますが、政治も法律も司っているのは、あなたたち。自分たちの順番をじっと待ち、順番が来たところで、私たちには、寿命が延びるに延びきって、人口も増えるに増えきったあなたたちの介護が待っています。(その前に果たして地球すら住める環境なのでしょうか?)

じゃあどうする?

 私たちが成人した2000年代が始まってから20年。ミレニアル世代にぜひ意識してもらいたいことは、順番を待っている場合ではないということ。目を覚まして、何が問題であり、自分の将来がどうなるのか、自分の子供たちの将来がどうなるのかをしっかりと考えましょう。日本人は便利さに慣れすぎだと思います。国や組織がやってくれていることが多いですが、それって私たちを無知にして、国や組織が都合よくコントロールできるということでもあるのです。「何も調べなくても誰かがやってくれる」というシステムは、国や組織が創り上げた一種のプロパガンダでもあり、情報操作されたり知識を奪われているという状況は抑圧であり権利剥奪でもあります。民主主義社会において、国家は国民のために存在し、政党や政治家は国民のために存在するものです。今こそ本気でどの政党・政治家が一番自分の生活や将来に役に立つのか、そして、もし誰一人としていないのならば、公職選挙に立候補してみてはどうでしょう。そしてまだまだ未来のある私たちの最大の義務は、自分や自分の子供たちのための投票です。黙っていたら、私たちは都合のいい様にしか存在しないのです。

 職場でつらい思いをしているミレニアル世代のみなさん、私たちの立場や環境がどんなに不利で不公平であるか、もっと世の中に知らせ、自らの手で公平な社会にしましょう。声を出せずに苦しい思いをしているみなさんは特に、やはり投票をして世の中から変えていくことが一番の近道なのではないでしょうか。

 参考資料 「若者に公正な社会」宇佐美誠

タイトルイラスト:オザキエミ

ニューヨーク育ち。2014年まで米国人コスチュームデザイナー・スタイリスト、パトリシア・フィールドの元でクリエイティブ・ディレクターを務め、ナイトライフ・パーソナリティーやモデルとしても活動。現在では中村キース・ヘリング美術館でプログラム&マーケティングディレクターとして、自身が人種・性的マイノリティーとして米国で送った人生経験を生かし、LGBTQの可視化や権利獲得活動に積極的に取り組んでいる。
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