行こうぜ!性別の向こうへ

Sitaさん「男でも女でもない新しい性のかたちを表現したい」

中学1、2年と「女っぽい」「もっと男らしくしろ」といじめられたというポールダンサーSitaさん。Sitaさんを救ったのは、中学3年生の時に出会った友人の「そのままで大丈夫だよ」という言葉でした。その後、Sitaさんはポールダンスと出合い、「自分にしかできない表現・美しさ」を追求していきます。Sitaさんの目指す理想の「美」とは。

●行こうぜ!性別の向こうへ

ポールダンサーとしてデビューしたのは、30代になってから。元からヨガやバレエは独学で勉強していて、柔軟性はあったんです。ずっと、天女のような美しさにあこがれていたんですね。人ではないような美しさ。そうなると、常人離れした何かが必要で、それが私にとって柔軟性。圧倒的な「可動域」でした。

友達に誘われて、ポールダンスのレッスンにいったことがきっかけです。世界レベルの先生がいる教室で、その先生が、これだけ体が柔らかければ、あれもできる、これもできるって教えてくれたんです。そのうち、「こういうショーのスタイルは?」と勧めてもらって、自分の理想とする「ポールダンスのスタイル」が見えてきました。今では女装が「正装」になりましたが、実は女装を始めたのは30代になってからなんですよ。

見た目がショーのできを決める

メイクは、インスタを見て勉強しています。絵が得意だったので、それがメイクにも役に立っているのかも。セクシーさは目元にでるので、ミリ単位で調整しています。1時間以上かかってしまいますね。

私は見た目が、ショーのできの半分以上を占めていると思うんです。ぱっと見の印象。ポールに行くまでの所作で、その人のレベルがわかっちゃう気がします。体のラインがきれいだと、難易度の高い技や動きができなくても引きつけられる時があるんですよね。

魅力的に感じるのは男性。胸板の厚み、筋骨隆々なごつごつしたところが好きです。一方で、自分がどうありたいかと考えると、曲線的な美しさ。ウェストを絞ってきれいに見せたり、指の動きでみせていく。なので、ポールダンサーによくあるあざとか、手のひらのマメとかも私は許せなくって、保湿してくれるような美容液を塗って硬くならないようにしています。

自分が理想としているのは、上品なセクシーさ。私を初めて見た人が、私の動きで欲情したり、何かしらの感情がわき起こるような表現が理想です。

男性控室「違和感ないです」

11月に開かれたポールダンスの大会には男性部門に、本名で出場しました。男性の名前で呼ばれるのは恥ずかしかったので、大会に出る前にSNSで「私の名前が呼ばれる時にはSitaと大きな声でかきけしてください」ってお願いしたんです。当日は親しい人がそうしてくれて、すごくうれしかった。

男性部門にエントリーすることには違和感はありません。戸籍も体も男性なので。そこに不満があるなら、性別分けのない大会にでればいいだけなので、全然気にならないです。私は自分を男性とも女性とも思っていないので。

更衣室も男性の方を使います。なんとも思わないですよ。女性の控室は、本番前はピリピリしていると聞くので、そういう意味で、男性の方が和気藹々してて楽ですし(笑)。トイレも男性用を使います。女装した格好で用を足しているのを見て、びっくりした反応を見るのも楽しいです(笑)。レディースデイの日に、女装してお店に行いったら割引してもらえるのかな~ってふざけた好奇心はありますが(笑)。

外的なかたちにこだわりはない

性転換も今のところ興味はないですね。外的なかたちにこだわりはありません。この平べったい胸だから「品がある」って思ってもらえるのもあるのかな、と。それは男性でも女性でもない。私にしかできない、唯一無二の見せ方、強み。胸に憧れはありますけど、今の私には必要ないのかなと思っています。

まわりの方からも「男でも女でもない新しい性のかたちだね」って言われます。全く意識していなかったですが、私の生き方や個性が認められた、と言ったらうぬぼれかも知れないですが、うれしいです。私は、私らしく、私が理想とする「美」を追い求めていきたいです。

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  • ●Sitaさんプロフィール
  • 1982年横浜出身。ダイエット目的でヨガや柔軟を始め、2013年にポールダンスを始める。2015年ポールシアターファイナリストを皮切りに、たくさんの大会に出場。2017年ポールキングアマチュア2位。2018年は同大会にプロフェッショナルで出場し5位。
telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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