telling, Diary ―私たちの心の中。

めんどくさいとすぐ逃げ出したくなる

なまめかしく妖艶な表現力で性別問わず見る者の目を釘づけにするポールダンスのダンサーであり、注目のブロガー、ライターでもある“まなつ”さん。彼女が問いかけるのは、「フツー」って、「アタリマエ」って、なに? ってこと。 telling,世代のライター、クリエイター、アーティストが綴る「telling, Diary」としてお届けします。

何もかもやめたい、と年に数回は真剣に思う

昼夜含めて週6くらい働いて、丸一日の休みがあってもどこかに遊びに行ったり買い物をしたらあっという間に「休日」は終わり。
寒くなってくると頭が回らなくなるのか、やめたさが加速する。
心が弾けそうになる直前に、このままではまずいと休みをまとめてとる。
そうして遠い遠い異国に行っては、張り詰めたものを一気に緩めて事なきを得る。

家に人がいると、まったく回復ができない

そんな急場しのぎの対策でやり過ごしてきた私に、大きな変化があった。
一緒に暮らすパートナーができたことだ。
今までは誰かと付き合っても、一緒に暮らしたことはなかった。
なぜかというと、「一緒に暮らしたくなかった」からだ。

ダンサーとして華やかなステージで全力で踊った後は、エネルギーがまったくないカスみたいな状態になって家に帰る。帰宅したら誰とも話したくないし、SNSを見ることすら嫌。携帯の電源を切って玄関に置き去り。
オンとオフの差が非常に激しく、オフの時は無。ゼロどころかマイナス。
マイナスの状態から、ゆっくり静かに一人の時間を過ごすことで、また踊ったり人と話すためのエネルギーをどうにか蓄えられる。

そのマイナス状態の回復をしたい時に家に人がいると、まったく回復ができない。
どんなに気を遣わなくていい相手だとしてもダメ。とにかく自分以外の人にいてほしくない。
それなのに、誰かがいる、というのが耐えられないので同棲は絶対にするまいと思っていた。

「嫌いなこと」を知ることが、QOLを上げるコツ

しかし、彼女ができて、その人が妻になり、自然と二人で同じ家に暮らすことになった。
多くの時間を共に過ごすし、私がマイナスの時も妻はそばにいる。
妻は人と暮らすことに慣れているのか、私がほっといて欲しい時は適度にほっといてくれる。
仕事の後どのような状態になるか理解してくれて、できる限り私の回復タイムを尊重してくれている。
もちろん、すべてが最高にうまくいっているわけではない。
お互いにこだわりもあるし、ぶつかることもある。
ただ、双方にリスペクトがあることは確かだ。

はじける前に気づくことが大切だと、少しずつわかるようになった。
それは今まで幾度も心を壊し、どん底まで落ちたからこそ解ったのだと思う。
自分の状態を知ることが、人生において何より重要だと考えている。
何が自分にとってきついか、何が無理なのか、どこまでいったら限界なのか。
好きなことと同じくらい「嫌いなこと」を知ることが、QOLを上げるコツだ。

「妻が悲しむな」と思える今の自分も、なかなかに良い

そんなコツを覚えても、まだまだ「あ〜今すぐプーケットに行きて〜」と航空券を探してしまう時はある。
そんな時、ふと私はもう一人じゃないんだな、と思い出す。
自暴自棄になってふらっと海外に飛び出していた独身時代も確かによかった。それはそれですごく楽しかった。
けれど「今一人で遠くに行ったら、妻が悲しむな」と思える今の自分も、なかなかに良い。
何もかもやめたくなったら、次は一緒に行ってくれる人がいるのだと思うと、どん底に行くのも悪くないなと思える。
私にとって人生とは変化の連なりであり、美しい忘却の連続である。

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ポールダンサー・文筆家。水商売をするレズビアンで機能不全家庭に生まれ育つ、 という数え役満みたいな人生を送りながらもどうにか生き延びて毎日飯を食っているアラサー。 この世はノールール・バーリトゥードで他人を気にせず楽しく生きるがモットー。
まなつ