みんみん×まふねこ対談

古谷有美✕真船佳奈#1 「女子アナなのに○○」「ADなのに○○」を極める

大人気「女子アナの立ち位置。」で、みんみん画伯としてイラストを描いているTBS古谷有美アナ(30)と、毎週月曜日に元気をくれるマンガ「“親指レディ”OLサム子」を連載中のテレビ東京(BSテレビ東京出向)の真船佳奈さん(29)。お二人の共通点は会社員とアーティスト、二足のわらじで活躍なさっていること。お二人にとってのアーティスト活動とは? 対談で深掘りしてもらいました。

●みんみん×まふねこ対談 お仕事を語る〈前編〉

「“二足のわらじ”っていうより小指の先だけ」(真船)

真船さん(以下真船): 古谷さんはいつから絵を描き始めたんですか?

古谷さん(以下古谷): 元から絵を描くのは好きでしたが、2年前の夏に、仕事で使おうとiPadとApple Pencilを使い始めたんですよ。それからですね。

真船: 私と一緒だ!私も仕事のためにペンタブを買ってから暇な時に漫画を描き始めて、SNSに載せて、そしたら出版社から書籍化の話が来て……という流れだったんです。本格的に漫画を描いたのはモノがきっかけでした。

古谷: 絵で何かを表現したい!というよりは、そこに道具があったから、やってみたという感じです。
仕事って、無理してでもやるものじゃないですか。待ってくれている人がいるし、お金もいただいているし。でも、イラストはそうじゃない。描かなくても誰も傷つけない。だから、無理せず続けられる。

真船: 本業になった瞬間に「お金、稼がなきゃ」ってなるかも。そしたら、できあがる作品自体もかわってくるような気がする。そうすると、今みたいに楽しんで描けなくなっちゃうと思うんです。だから、絶対に会社員はやめません。

古谷: サラリーマンとして「責任感」をもってやる仕事とは種類が違う。お金をもらうものでもないと思っちゃうんですよね。なので、絵一本でやってらっしゃるプロの方と同じ土俵に立つのはとんでもない、って感じです。

真船: 私も“二足のわらじ”って言われると、違和感があって、小指の先だけ、かぶせている感じ。同じサイズの靴をはいている感覚ではないですね。

「“女子アナなのに”が今は一番楽しい」(古谷)

真船: 私は高校生くらいの時に、イラストで生きていけたらいいのになって思う時期があったんです。古谷さんはありましたか?

古谷: まったくないですね。大学生までアナウンサーになりたいと思ったことも実はなくて(笑)。ただ、求められるうちはアナウンサーの仕事を全力でやりたいし、アナウンサー以外のことを求められるなら、そっちもやりたい。

真船: 女子アナが求められていることってなんだと思います? 制作側の人間から見ると、芸能人みたいなところがあるから、同じ会社員として扱ったら悪いかな、って思っているんですけど。

古谷: たしかに、女子アナって違う星の人だと思われているのかもしれませんね。同じ社員でも「あ、○○アナだ」ってなるし。世間一般にイメージされている「女子アナってこういう人たちだろうな」というのがあって、私もどう振る舞っていいのかわからないときがありました。その型に入るのが居心地の良い人もいれば、飛び出して記者になったり、違う道に行ったりする人もいます。

真船: 昔は「女子アナの誰が可愛い」って評判ばかり耳にしたけど、最近はキャラも求められてますよね。

古谷: そうですね。私自身は、「女子アナなのに」っていう立ち位置が、今は一番面白いかなと思うんですよね。女子アナなのに、絵を描いてる。「古谷有美アナ」があるから、「みんみん画伯」が生きる。世間から求められていることに応じることを窮屈に思うんじゃなくて、「型にもはまれるし、外にも出られるんですよ」っていうのを楽しめたらと思っています。

真船: 「女子アナなのに○○」の○○が大事にされる時代。たしかに私も、番組でどのアナウンサーにお願いしようか、ってなったとき、「○○の分野なら絶対この人がいい」っていうキャラ重視の決め方をしてます。

古谷: 今まで以上に自分なりのタグ付けが優先されてキャスティングされる時代になってきたのかな。そうなると、いい子ちゃんしているだけではつまらないのかもと思ってきました。

「ADはテレビ作りの最下層と思われている」(真船)

真船: 先日、とあるサイトに私の対談記事が載ったんですけど、その時に「マンガを出せるくらい暇なテレビ局員なんだから、本当の地獄は知らんだろ」とコメントがついたんですよ。うるせーんじゃ、お前いっぺんADやってみろ!と思って。悪いコメント書いた人には全部、親指を下にしたスタンプ押しまくりましたわ。でも、テレビ局員じゃなかったら本を出せなかったのも事実なんですよね。

古谷: ADさんて世の中では、いわゆる「仕事ばかりして、見た目も気を遣わなくて、ズタボロになりなりながらも働く人」というイメージありますしね。

真船: ええ、まさに。テレビ作りの最下層と思われていると思います(笑)。

古谷: 「難しいことわかんないもん☆女子アナです☆」と同じように、イメージが先行しちゃうんですよね。でも、その振り幅が大きい方が面白いんじゃないかな。プロデューサーがマンガを描くより、ある意味“最下層”が描いた方が振り幅が大きくなる。ADなのに○○を極めていくことで面白くなるんじゃないかなと思います。

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1988年3月23日生まれ。北海道出身。上智大学卒業後、2011年にTBSテレビ入社。報道や情報など多岐にわたる番組に出演中。特技は絵を描くことと、子どもと仲良くなること。両親の遺伝子からかビールとファッションをこよなく愛す。みんみん画伯として、イラストレーターとしての活動も行う。
テレビ東京社員(現在BSテレ東 編成部出向中)。AD時代の経験談を『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』(朝日新聞出版)にまとめ、2017年に漫画家デビュー。ツイッターアカウントは@mafune_kana
telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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