非婚出産した女性に聞いた「相手をどうやって見つけたの?」
●私らしい“結婚”05 非婚出産の櫨畑敦子さん(後編)
「子どもが欲しいんだけど、どう?」
――産みたい! と決めてからはどうやってアクションをしたのですか?
櫨畑さん(以下櫨畑) 当時の同居人はアルコール依存症の人でした。一緒に子育てするイメージがわかなくて、他の人を探し始めました。
最初は、友人をデートに誘いました。映画を見てから、カウンターの居酒屋で思いのたけをぶつけました。「私、出産したいんだけど、妊娠を前提とした交際、どうかな…?」って。そしたら「絶対無理です。こわいです。覚悟もできませんし責任が持てないです」。「いや責任持たなくていいから、むしろ責任持たれたら困る」と説得したんですけど、ダメでした(笑)。
――ド直球ですね。圧倒。
その次は、また別の友人との契約結婚。籍は入れずに、1年ごとに契約を更新する、同居の義務を負わない……など約束事をあらかじめ決めました。ただ、これも色々な原因があってうまくいかなくなりました。もうちょっと一緒にやってみたかったんですけどね。
その次は、外国人男性とのお見合い。でも、「する」ことを想像しただけで無理で、「誰でも良いから妊娠したい」と口では言っていたけど、そうもいかないんだなと痛感しました。それから、ゲイカップルと意気投合し、人工授精も試みましたが、うまく着床しませんでした。
この次に出会ったのが、ひかりさんの「遺伝子お父さん」となる“しょうちゃん”です。
とにかく「産みたかった」 ただそれだけ
――相手にとっては「遺伝子お父さん」であることは重い決断になりますよね。
櫨畑 もうみんないい大人ですから、自分で物事の判断はできます。出来ないことは断るでしょうし、嫌なら協力しないでしょう。
――「遺伝子お父さん」のしょうちゃんはそれを決断してくれた、と?
櫨畑 出会って3回目にこの話をして、4回目で関係をもちました。その1回で妊娠。相手は驚いていましたが、私は嬉しかったです。しょうちゃんには、「なんの責任も取らなくていい。認知も、結婚も、同居も、お金も結婚もいらない」と伝えていました。今でも、経済的な援助は受けたことがありません。
安定期には、一緒に病院に行ってエコーで赤ちゃんを見ました。人間ができあがっていく過程を見るのを、独り占めするのはもったいないと思って誘いました。私は大阪、しょうちゃんは東京にいるので、たまに会って今後の二人の関係についても話しています。最低でも1か月に1回くらいは会っていますね。
子育ては“大臣制”
――今は一人で子育てをしているんですか?
櫨畑 基本的には一人で全部していますが、昔からの長い付き合いのある友人や、近所に住んでいる友達が手伝ってくれています。長屋に暮らす仲間は、私とひかりさんをいれて9人。会社員、革職人、介護士、フリーランス……職業はばらばらです。
私たちの暮らしには、おむつ大臣、洗濯大臣、よりどころ大臣……と、“大臣制”で関わってもらっています。何の義務もなく、ただ「じゃあ〇〇大臣ね!」って言っているだけ。無理のない範囲で力を借りて、基本的には自分でやる方針です。
私が育ってきた家族って、携帯電話のプランでいうと「スタンダード長期コミコミプラン」だと思うんです。私はそれが窮屈だった。「シンプルプランSS」がいい。むしろ、それしかできない。
"お父さん"と"お母さん"のカップルから成り立つ「スタンダードプラン」をこなせる気がしないので、スモールステップから始めたかったんです。そこに、後からいろんなオプションをカスタマイズしていけばいいし、結婚だって必要になれば後からつけることだってできる。“みんなと同じ”ができなくても、自分にとって心地のいいものをカスタマイズしていけばいいなって思います。
しかしこれはあくまで私が好んでやってみていることなので、誰かに勧めようとは全く思わないし、相談されても引き留めるかもしれませんけどね。
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母親になるには、子どもを育てられるだけの十分な経済力と(一説には1人の赤ちゃんが成人するまでに必要なお金は2000万円超と言われている)、愛し合う人が必要だと思っていた。ところがどっこい、櫨畑さんと話していると大混乱。確かに、今の日本にはセーフティネットが充実しているし、経済力はそんなに必要ないのかもしれない。男性には精子の提供だけ力を借りればいい、と考えたら協力してくれる男友達もいるかもしれない。
……でもなあ、と思う私にはまだ、母親になる覚悟が足りないのか? もやもや。強烈に思ったのは「何がなんでも母になる!!」と腹をくくった女の気迫はすさまじいということだ。そして彼女には何の迷いもなく、幸せそうだった。
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- 櫨畑敦子(はじはた・あつこ)さんプロフィール
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大阪出身。2017年に“積極的非婚出産”を果たす。その様子は「※ザ・ノンフィクション」(フジ系)で放映され賛否両論を呼ぶ。18年6月に、「かぞくって、なんだろう※?展」を主催。現在は大阪市内の路地にある長屋で友人たちと、子どもを育てている。
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