太田彩子「キャリアプランは、いらない。」

モヤモヤする時はインプットを。学ぶことは自分の幸福感に繋がる

「かつては“バリキャリ”であったキャリアの専門家・太田彩子さん。自身の会社の経営、日本最大級の営業女子コミュニティの主宰など広く活躍しながらも、「かつての“頑張る自分”は卒業した」と言います。その太田さんが今、私たちに伝えたいこととは? 「もっと頑張らなきゃ」と力んでしまうようなとき、心理学の専門家でもある太田さんの言葉は、胸に響くはずです。

●太田彩子の「キャリアプランは、いらない。」02

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太田彩子さん

21歳で出産、子育てをしながら仕事に取り組み、リクルートの営業職として活躍したのち、2006年に人材育成・キャリア支援の株式会社ベレフェクト設立。2009年より日本最大級の営業女性コミュニティ「営業部女子課」を主宰。ほかにも上場企業の社外取締役など多岐にわたる活動で知られる。ここ数年は海外遠征をするほど本格的に登山に取り組み、筑波大学大学院にて心理学の研究も進めている。

学ぶことは生きるためのエッセンス。インプットがなければ枯れてしまう

 働き方改革の重要性が叫ばれているなかで、早く帰って、余暇の時間が増えた人は多いのではないでしょうか。ミレニアル女子には、その時間をぜひ学ぶことに使ってほしいと思っています。

 厚生労働省の「能力開発基本調査 」(2017年度)のデータによると、過去1年間に自己啓発を行った人は正社員で42.9%。その理由は、「現在の仕事に必要な知識・能力を身につけるため」が82.8%、「将来の仕事やキャリアアップに備えて」が56.3%です。人生100年時代と言われ、今後の生き方が問われる中で、“自ら学ぶ”ことの重要性はますます高まっています。

 私はよく植物に例えるのですが、花の鮮度や美しさを保つためには、水や肥料、日差しが必要です。放っておいたら枯れてしまう。人も全く同じで、外からも内からも美しくあるためには、ケアが不可欠。その一つが、学びです。インプットをし続けなければ、私たちは枯れてしまいます。

もしあなたがマンネリを感じているのであれば、それは学びがない証拠

 つまり学びは、生きるためのエッセンス。資格の勉強をしたりセミナーに通ったりするのはもちろんいいですが、いろいろな人の意見を聞くこともまた、学びです。年下、年上、異性、他の部署の人、他社の人、昔の友人、外国人……。多様な人々の意見に触れて、視野を広げることが、自分を枯れさせないためにはとても大切です。

 私は以前、やりたいことリストに「15歳以上年の離れた友達を作る」と書いたことがあります。これ、すごく視野が広がるんですよ。例えば年下の人は人生経験が少ないから学びが少ないなんていうのは大間違いで、その世代だからこそ気づくことは絶対にある。

 そして大事なことは、継続が大事だということ。一度にたっぷり花に水をあげたからといって、その後1週間まったく水を注がなくていいわけではないですよね。私たちは生きている人間ですから、水をあげ続けること、つまりは学び続けることが必要です。そして学ぶべきことは、置かれている状況によっても変わります。

 入社して間もなかったり、新しい部署やプロジェクトに参加したりと、目の前のことに集中すべきときは、いま、自分が関わっている分野についてどんどん学んでいけばいい。例えば、チョコレートについて考えてみること一つとっても、バレンタイン用のチョコレートの市場(贈呈用)と普段食べるチョコレートの市場(普段自分が食べる用)はまったく異なりますよね。市場や種類、シェア、歴史など、自分の分野を知るために、さまざまな角度から調べてみることで知識は深まっていく。

 そして一方で、同じ会社に勤め続けていたり、同じ部署でずっと同じ仕事をしていたりすると、それまでの経験だけで、ある程度仕事ができてしまう。何だか物足りなさを感じる一方で、変わりたくないという気持ちが強い女性もいるから、今のままで、それでいいかなと思ってしまうこともある。

 でも、もしあなたがマンネリを感じているのであれば、それは学びがない証拠かも。違う業界や業種の人と交流するなど、視野を広げるべき時期だと思います。

行動や選択肢の幅は、悩みをうまく対処することに繋がる

 もし学ばなければ、枯れる一方です。虫の目のようにどんどん視野が狭くなって、目の前のことしか見えなくなってしまう。でも鳥のように広く見渡せれば、一気に選択肢も考え方も広がります。そうすると、違う角度から物事をとらえられるようになるので、悩まなくなるんですよ。

 例えば東京から大阪に行く手段を新幹線しか知らなければ、新幹線にトラブルがあったとき、ただただ不安になってしまう。でも飛行機や車、バスなど、他の行き方を知っていれば、不安は緩和されますよね。このように、行動や選択肢の幅は、悩みをうまく対処することに繋がります。

 悩んでいる時は目の前のことしか見えていないことがほとんどだと思います。選択肢がないから短絡的に考えてしまうけれど、いろいろな人の意見を聞いて、いろいろな知識を吸収すれば、他の選択肢が見えてくる。そうすれば悩みからシュッと抜け出せることだってあるものです。

 だからインプットをし続けることは、働くうえで、生きるうえで、絶対に必要なこと。もし悩みを抱えてモヤモヤしているのなら、学びましょう。そうやって視野を広げることは、自分の幸福感につながることだと私は思います。

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リクルートの営業職として活躍後、2006年株式会社ベレフェクト設立。2009年より、日本最大級の営業女性コミュニティ「営業部女子課」を主宰。専門は働く女性や女性営業職の人材育成・キャリア開発。
2009年に株式会社キャリアデザインセンターに入社。求人広告営業、派遣コーディネーターを経て、働く女性向けウェブマガジンの編集として勤務。約7年同社に勤めたのち、会社を辞めてセブ島、オーストラリアへ。帰国後はフリーランスの編集・ライターとして活動中。主なテーマは、「働く」と「女性」。