私らしい“結婚”【契約結婚01】

リアル「逃げ恥」?商談のように条件を決めて、契約結婚を試みる男女

telling,編集部、唯一結婚したことのない、わたくし・伊藤(31)。仕事が楽しくて、東京がまぶしくて、絶好調に愉快な独身生活を送っている一方、お友達は続々と妻に、母になっていく。結婚したいのか、と言われるとよくわからないけど、したくないわけではない。子どもは欲しいような気がする。多様化する家族のかたち、があるのなら、私にぴったりの結婚もあるの……かも? いろんな結婚のかたちを実践、推奨する方たちに話を聞いてきました。

●私らしい“結婚”01 契約結婚を試みる男女(前編)

 今回はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で話題になった「契約結婚」を推奨する人気ブロガーのuiさん(36)にインタビューしてきました。

“契約結婚”について書いたuiさんのブログ記事はこちら

――お見受けした感じ、すごくモテそうなんですけど、36歳まで独身ということは、結婚願望はなかったのですか?

uiさん(以下ui) 独身が楽しくて仕方ない時期もありました。自由に使えるお金も、やりがいのある仕事もある。ありがたいことにそれなりにモテてきましたので恋愛もそれなりに楽しんできました。麻酔がきいているような毎日で、この楽しさを失うくらいなら結婚しなくていいと思っていました。

――それなのに、なぜ結婚しようと思ったんでしょう?

ui 年齢によるものですね。40代が見えるにつれて、誰かと一緒に将来を過ごしたいという乙女のような憧れも生まれてきました。家族も持ちたかった。

――乙女の憧れ……? むむむ。確かに、独身男性の方が独身女性よりも「孤独」を感じやすいという調査結果もあります。

“第一生命経済研究所の調査(2015年)によると、「一緒に余暇や休日を楽しむ人」について、「誰もいない」と答えている40歳以上の独身男性の割合が42.7%なのに対し、40歳以上の独身女性は19.2%“

ui  そんな時期に、10年前に付き合っていた元彼女からLINEで、「契約結婚」の申し出があったんです。僕は「逃げ恥」も見ていなかったし、契約結婚が何かもわからなかった。ただ、彼女とは物理的な距離が原因で別れたので、いい関係がずっと続いていたこともあり、「この子が言うんだから、悪い話じゃないんだろうな」と思いました。

  • 彼女からのLINEの内容(uiさんのブログから引用)
  • “私は今年で31歳になります。あなたと別れて、仕事して、たくさん恋愛もしましたが結婚までは至りませんでした。いい加減に結婚したいのですが、相手がいません。晩婚化しているとはいえ、今から出会って、付き合ってなんやかんややってたら出産するときは多分35歳とかになってしまいます。完全にタイムオーバー。世間がなんと言おうがタイムオーバーなんです。金銭感覚、容姿、価値観、年収、家庭環境など総合的なバランスを考えると、あなたに結婚相手になってほしいと思っています。しかし、私たちの関係は数年前に一度終わっています。今さら楽しい恋愛をいちから始めましょうということではなく、結婚してほしいのです。契約結婚です。更新日と条件を決めて、契約するんです。”

ui  契約内容も、お金のこと、家族や友人への周知のこと、体のこと、何を聞いても、すぐに答えが返ってきました。「この子、本気だな」というのは感じて、一度同じテーブルに着こうと思いました。

――契約結婚自体もすぐに受けいれられた?

ui  それから「逃げ恥」を全部見て、海外のご夫婦のインタビューなど、過去の契約結婚の事例も何十と調べて、知識を増やしていきました。自由恋愛のあるなしも含め、色んな形があるんだなあと思いました。彼女と直接会ったのはLINEをもらってから数日後。喫茶店で会いました。そこで、彼女は契約結婚の条件を書いてプレゼンしてきたわけです。

――ビジネスの場みたいですね。

ui  そうですね、恋愛の始まりではないので。お互いの条件を提示して、妥協点を探る。まさに商談ですよね。

 契約の論点はまずはお金。お互いの年収を証明するための源泉徴収を持ってくる、借金があれば開示するという約束になっていました。お金については、15万円ずつプールして、そこから家賃・光熱費・共通の食費を出すこと。残りは子どもの教育費にすべく貯金する。それ以外のお給料については、自由に使っていいことにしました。

 それから、体の問題。子どもができるまでは、お互いに性的には何も束縛はしない。ただ、性病を持ち込むのはNGなので、ブライダルチェックはきちんと受けて欲しいと言われました。

 同居もしたい、と。僕は別居でもいいと思っていたけど、彼女は「子どもをつくる」ことをいちばん重視していたので、同居は必要なんだと言われて。ここは交渉しながらすすめました。他にも、親や共通の友人への告知はするが、それぞれの友人については自由、など。指輪と結婚式はなしで、契約自体は1年更新にすることも決めました。

――契約内容を決めて、粛々と……って感じですか。

ui  ところが、一つだけどうしても譲れないことがありました。「子ども」です。彼女は、入籍後すぐにでも子どもが欲しいと言うんですよね。でも僕は、1、2年は契約結婚を運用してみて、子どもはそれからにしたかった。

――その1年を埋められなかったということですか。でも、妊娠してから出産するまで約1年かかりますし……

ui  契約結婚はすぐにでも踏み切れるけど、親になる覚悟はまだ持ち合わせていなかった。1年なら、相手の嫌なところも、お互いに我慢できちゃうんです。だから、ちゃんと運用できるのかを試してみたかった。「子ども」だけは折り合いがつかなかった。交渉決裂。ただそれだけです。

  • 契約交渉をした元彼女と私は同世代なので、出産への焦りはよくわかる。「高齢出産」となる35歳は刻々と迫るし、不妊治療をしている友人も少なくない。「もしスムーズに妊娠できなかったら……」と考えると、この1年はとてつもなく大きい。一方で、結婚はすぐにできるけど、親になるには覚悟がいる、というuiさんの気持ちもよくわかる……。
    ただ確かなのは、この大きな大きな「1年の溝」を、結婚してからわかった、というのではなく、冷静に話し合い、事前に“交渉決裂”できたことは、2人にとって前向きな決断に違いない。これもまた、契約結婚のメリットのひとつかもしれない。

中編は「恋愛結婚で得られる楽しい楽しい新婚生活よりも、信頼関係とと利害関係で結ばれるフォロワーが欲しい」と話すuiさんに契約結婚のメリットを聞きました。
中編はこちら

  • uiさんプロフィール
  • 1982年、山形生まれ。名古屋市在住。彼女なし。自称恋愛結婚不適合者。会社員のかたわら、月間PV95万のブログ「ハッピーエンドを前提として」を更新。恋愛ハウツー記事が人気で、ツイッター(@ui0723)のフォロワーは約4万人。

telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
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