ポリアモリーのきのコさん「結婚すればまともになれると思っていた」
●私らしい“結婚”02 ポリアモリーのきのコさん(後編)
――ご結婚されていたお相手はどういう方ですか?
きのコさん(以下きのコ) 大学時代の友人です。3年お付き合いして、27歳の時に結婚しました。私はこれまでいい大学に行って、いい会社に入って……と世間でいう“勝ち組”の人生を歩んできていたので、そのレールにそって27歳で結婚して、その2~3年後に子どもを産んで……と思っていました。結婚する前はポリアモリーを宣言していなかったので、彼からすると、浮気をしまくる彼女。私も彼も「結婚すればまともになる」と思っていました。
不倫が原因で1年半で離婚
――結婚生活はどうでしたか?
きのコ いわゆる社会からのプレッシャーが大変でした。ある種のレールの上に乗ったので「その上を走るんでしょ?」っていう。親戚の方たちも全く悪気無く「次は3人で帰ってこいよ」と言うんですよね。私たちが子どもを作るかどうかは、あなたが決めることじゃないって思うんだけど、「子どもに恵まれることが幸せな家族の形」とすり込まれているから、わからない。
レールに乗りたいけど、やっぱり違和感がある。家庭に入って、婚姻制度の中におさまっても浮気性の自分を“矯正”できなかった。私の不倫が原因で1年半で離婚することになりました。
――離婚の際、相手からは何と言われたんですか?
きのコ 「合わないね」とだけ。その時に「お前はおかしい!」という言われ方はしなかった。元夫はすごくできた人だなと思いました。
不倫をしているとき、元夫を傷つけたことは悪いけど、好きな人が複数人できてしまうことに、どうしても罪悪感を持てなかったんです。どう悔い改めていいのかわからない。もう、ポリアモリーとしての自分を認めていくしかないのかな、と腹をくくりました。これが私だからしょうがないなって、離婚した28歳の時にやっと思えたんです。他人を偽りたくないし、何より自分を偽りたくない。
100カップルいれば100通りの形がある
――結婚制度についてはどう考えますか?
きのコ もう二度と利用したくないですね。良い意味で形骸化していけばいいのになって思います。使いたい人が使えて、でも、使わなくても困らないものになればいい。結婚指輪みたいなものですね。身につけたい人はつければいいし、つけていないからって社会的に損をするわけでもない、という風になればいい。
――具体的にはどういうことでしょうか?
きのコ 同性婚はまだ認められないし、結婚しないと、意識不明の時にサインしてもらえない。結婚していないデメリットというのは、お金さえ稼げて、自立していればほとんどない。だいたいがお金で解決できる。
恋愛・セックス・同棲・結婚・出産・介護・看取り……それを何で同じ人とだけやらなきゃいけないんだろう。人生100年時代、約70年同じ人といるんですよ。非人道的な気もします。100カップルいれば、100通りの形がある。それを、ひとつの結婚のかたちに落とし込むのは無理があるのかなと思います。
それと名字。変えるのも、戻すのも面倒くさいんですよね。もう離婚して6年たちますが、元夫の名字のまま変えていません。嫌いで別れたわけじゃないので、このままでいいかな~って思っています。
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「結婚したらまともな人間になれると思った」というきのコさんの言葉、わかるなあと思った。結婚しているということは「クレジットなんだ」と友人が言っていたことに近いかもしれない。
まともな人間ってなんだろう。男と女が1つの「夫婦」の単位になることが“まともな人間”なんだろうか。だとしたら、同性愛者の方たちは一生“まともな人間”になれないし、逆に紙一枚を役所に提出さえすれば“まともな人間”になれるのか。もやもやもや。
きのコさんのいう「結婚したい人にはできるように、結婚しなくても損しない」。これこそ理想の結婚制度の形なのかも、と思った。
- ●きのコさんプロフィール
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1983年福岡県生まれ。九州大学大学院人文科学府卒、メーカー勤務の会社員。2011年にポリアモリーをカミングアウト。18年5月『わたし、恋人が2人います。』(wave出版)を出版。
●好きな人をひとりに決められない。ポリアモリー・きのコさんの著書
『わたし、恋人が2人います。』(WAVE出版)
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