私らしい“結婚”04

非婚出産した女性が語る「結婚はしない、だけど産みたい」

結婚したいのか、と言われるとよくわからないけど、したくないわけではない。子どもは欲しい。家族のかたちも多様化しているのなら、私(独身31歳)にぴったりの結婚もあるの…かも? 私らしい“結婚”を考えるこの企画、今回は「今のところ結婚はしない、産む!」と決めて、シングルマザーになった櫨畑(はじはた)敦子さん(31)に話を聞きに行きました。

●私らしい“結婚”04 非婚出産の櫨畑敦子さん(前編)

前回の特集記事・はあちゅうさんが事実婚を語った特別インタビューはこちら

カップル単位”より“シングル単位”が健全

――櫨畑さんはなぜ結婚したくなかったんですか?

櫨畑さん(以下櫨畑) しょっぱなからとても個人的な話ですが、性暴力被害に遭ったこともありますし、今までに交際や同居をしてきた人は、束縛や依存症などの問題を抱えた人が多いな~と思っていたんです。家の中に危険な人がいると思うと、家に帰りたくなくなるんですよね。子育てをするとなると、そういった劣悪な環境をつくるのは絶対に危険だし、できることなら避けたいなって思ったんです。

――いわゆる“だめんず”を好きになっちゃうという?

櫨畑 私は「だめんず」という表現が好きではありません。コミュニケーションはお互いの関係性の中でのものなので、相手がそもそもダメであるとは言えないと思います。だけど私が長女のせいか、「面倒を見てくれる」「だいたいなんでも受け入れてもらえる」という関係性になってしまいがちなんですよね。相手に頼られることが多くなればなるほど対等な関係は築きにくくなるし、どんどん精神的、経済的負担が増えていく。”カップル単位”ではなく、経済的にも精神的にも自立した関係でいられる"シングル単位"で行動している方が私にとっては健全だったんです。

――「産みたい」にこだわるのはなぜですか?

櫨畑 ある日突然「産めるものなら、産みたい!」と強く思ったことが、きっかけです。高校や小学校で働いて、そのあと保育士として働いていたことがあったんですが、お迎えを全部見送って保育園の「閉め作業」をしている時に思ったんです。「お迎えに行く側になりたいな、一緒に帰って、その先の成長も末永く見守りたいな」って。子どもの成長過程を全部見てみたいと思ったんです。

――必ずしも産みたかったわけではないんですか? 養子縁組でもよかった?

櫨畑 はい。私は産めないと診断されていたことがあったので、いずれは里親になるか、児童養護施設で働くなどのかかわりを考えていました。施設には実際に実習にも伺いました。里親や養子縁組はとても憧れましたが、ただ、そのためには社会的な信用や結婚相手もいるし、一定の収入も必要。私にはそちらの方がハードルが高かったんです。

「親の責任」って一体なに?

――同じように「産みたい」女性には、経済力が課題と考えている人も多いと思うのですが、櫨畑さんに不安はなかったんですか?

櫨畑 それはよく聞かれるんですが、「なんとかなるし、どうにかしよう!」という気持ちでした。これまでに、お金がなくても助け合って子育てしている方にたくさん出会ってきました。なので、世間で言われているように「〇〇万円ないと子育てできない」なんて、そんな訳ないって思っていました。「〇〇しなければならない」なんていうのはほとんど幻想で、自分を苦しめているのは自分自身だということに気付いたんです。

私ができることは、ご飯を食べさせること、お風呂にいれて着替えさせて、清潔な状態を保つこと。逆に言うと、それ以上私ができることなんてほとんどないかもしれません。自分自身が子に対してなにかしてやれるだなんて思い上がりだと思っています。実際は私のほうが学ばせてもらっていることが多いです。

「こんな大人になってほしい」はない

――お金がない、ということが、子どもの選択肢を狭めることにはなりませんか。例えばバレエを習いたいと、子どもが言ったら……。

櫨畑 私が働いて解決できるならするし、できないことなら、しなくていいかもしれません。どちらにせよ身の丈に合わないことをやっても長く続けられないんですから、無理にやる必要があるかどうかはよく検討しなければなりません。「何でもあなたの思う通りに好きなことやっていいのよ」と選択肢を広げることがいいのかどうか?っていう問題もありますよね。

私は「ひかりさん(娘)に、こういう大人になってほしい」という期待がないんです。全くない。あるのかもしれないけど、言語化しないように気をつけています。「人に迷惑をかけない子どもになってほしい」「普通に育ってほしい」と育てられたことが、息苦しかった自分の経験から、そういった押し付けはできるだけしないようにしたいなと思っています。

  • 「結婚はしたくないけど、子どもはほしい」。こういう考え方、私のまわりの働く未婚女性の間にはとても多い。かくいう私もまさにそう。

    20代後半・結婚適齢期になると「一緒に生きる人を見つけてこそ一人前」という声がちらほらと聞こえてくる。私は男性に頼ることなく、できれば自立して一人で生きていきたいのだ。これから先も。
    一人だけど、一人じゃない。助けてくれる人はたくさんいるんだろう。櫨畑さんのような選択をした方がいらっしゃるのは、当然だと思うし、希望を感じる。

「結婚はしない、だけど産みたい」そのために、どうやって「遺伝子お父さん」を見つけたのかを、後編で聞いていきます。
【後編はこちら】

  • 櫨畑敦子(はじはた・あつこ)さんプロフィール
  • 大阪出身。2017年に“積極的非婚出産”を果たす。その様子は「※ザ・ノンフィクション」(フジ系)で放映され賛否両論を呼ぶ。186月に、「かぞくって、なんだろう※?展」を主催。現在は大阪市内の路地にある長屋で友人たちと、子どもを育てている。

  • ふつうの非婚出産
    http://www.eastpress.co.jp/shosai.php?serial=3012

telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
私らしい“結婚”