「事実婚」という選択

事実婚の女性が明かす「私が法律婚を選ばなかった理由」

 ブロガーで作家のはあちゅうさん(32)が公表したことで、話題となった“事実婚”。10年以上、事実婚をしている40代後半のカナさんにお話をうかがってきました。彼女はなぜ、法律婚ではなく、「事実婚」を選んだのでしょうか。

離婚を経験 結婚に虚無感

――いつから事実婚をしているんですか?

 法律婚と違って、入籍日というような特別な日はないので、いつというのは特にないですね。お付き合いは10年以上前からになります。

――なぜ法律婚ではなく、事実婚なんでしょう?

 実は、私は29歳の時に一度結婚して、36歳で離婚しています。原因は元夫の女性関係。楽しい結婚生活からどん底に突き落とされた感じでした。

 “法律婚”をして“人妻”になっても、結局何の拘束力もなくて、別れる時は別れるんだなって思ったんですよね。結婚制度に対する虚無感と言うか……。面倒な手続きが多いわりに、何もメリットがないように感じたんです。

 別れてから、2年くらいはずっと落ち込んでいました。38歳の時に今のパートナーに出会いました。結婚や子どもについて特に話すことはないまま、一緒に過ごす時間が増えて、私が買ったマンションで同棲しています。

――同棲と事実婚の違いはなんでしょう?

 なんでしょうね。籍は入れていないけれど、やっていることは、法律婚の夫婦と一緒だと思っています。彼の実家の法事にも行きますし、実家に行ったときには、いわゆる嫁の仕事もしています。会社の緊急連絡先にも彼の連絡先を伝えてあります。名字は違うけど、何か言われることはないですね。

――周囲には、お相手の方をどのように紹介しているんですか?

 「パートナーです」と言ってあります。私もいい年なので、お互いの親族も含めて、周囲の人たちは何も言いません。そういう意味で、年を重ねて生きやすくなりました。

 昔は彼の前で、友人から「結婚しないの?」と質問されたことがあって「そういうのはやめて」と釘をさしたこともありました。2人の心地よい関係を、何かの「かたち」に当てはめて、壊したくなかったんです。

紙の上での絆なんてばかばかしい

――法律婚にメリットはないですかね?

 うーん。確かにメリットはあるんですよね。彼の会社には「扶養手当」という制度があって、入籍していたら月1万円、年間12万円もらえるそうです。でも、それよりも書類の手続きをしなきゃいけない方が面倒くさい。銀行口座、マンション名義……、やっぱりいらない、と思うんです。

 私はずっと子どもをつくらないと決めていたので、子どもがいなくて、経済的にも精神的にも自立した女性に、法律婚はいらないと思っています。ただ、好きな人と一緒にいられたらいい。紙の上での絆の証明に、意味を見いだせないんです。

 ただ、数カ月に一度、精神的に弱っているときには「このままでいいのかな」って思っちゃう時はあります。でもこの漠然とした不安は、籍を入れようと、入れまいと関係ないと思うんですよね。一生変わらないものなんてないわけですから。

ミレニアル女性へ「誰かに依存する”結婚”は続かない」

――結婚するか、しないか、どういう結婚がいいのか……と悩んでいるtelling,の読者に何かアドバイスをいただけますか。

 とにかく働くこと。自立さえしていれば、あとは何とでもなる。男性に依存しない、人生をつくってほしいなと思います。

 私が最初の結婚に失敗したのも、自分の人生を他人に任せすぎたところにあると思うんですよ。仕事があまりうまくいっていなくて、納得のいかない人生を「結婚」でリセットしようとしたんでしょうね。「逃げ」の結婚は続かない。

 「この人と一生いたい」と思って結婚することは、もちろん素晴らしいことだと思います。ただ、自立できない、誰かに依存しようとして結婚をするという意識がもしある人がいたら、それは、あまりに危ない賭けのような気がします。多くの人が離婚してしまう現実もあるわけですから。

 結婚したからといって、永遠に誰かが味方でいてくれることが保証されるわけではない。そうしたら本当にひとり。何があっても立っていられるために、仕事は大切だ、と、伝えたいです。

  •  私はこの企画を始めるまで「結婚なんかしたくないぜ!」と強がりながら、「でも、このまま一人はちょっと不安かも?」と思っていました。
     逆に言うと、結婚さえしてしまえば「一人になることはない」と思っていたってことになりますよね。結婚=永遠の絆!と思っていたんですかね! ロマンチック!

     でも、もう私たちミレニアル女性は、甘く切なく苦くつらい恋愛そして失恋を経て、「永遠」なんてないことに気づいてしまっているわけじゃないですか。

     だったら、今すべきことは何か。

     やっぱり一人の足で立てるようになることはとても大切だと思うんですよね。法律婚であれ、事実婚であれ、どんな“2人でいるためのかたち”であっても、結局、一人なわけだから。誰かと支え合うことありきの自分でいるのはすごく怖い。カナさんのお話を聞いて目が覚めました。

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telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
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