良心は読んでほしい。本心では読んでほしくない。
●本という贅沢。21
いやー、疲れが溜まるなあ。起きられないし眠いし熱はないけどだるい。でもいろいろ検査しても原因がわからないと嘆いていたら、尊敬する女子の先輩に言われました。
「さとゆみ、それ、多分病気じゃない。ただの老化」
……ちーん。……そうか。これが、世にいう老化なのか。
そうか私も42歳だもんな。もう30代のように無理はきかないんだな。どーん(沈没)となっていた時に、この本を読んで、さらに落ち込みました。
あー、もう! ふろむださん、これバラしちゃいますか。
老化現象著しい40代のワタクシが、ピュアでクリーンな清潔感にあふれ、まだ重力に逆らえるミレニアル女子たちに「でもまだワシも負けちゃおらん。ふぉっふぉっふぉ」と密かに思っていた唯一の武器。こんなに大々的にバラしちゃうんですか。
と、なりました。
それが、こちらの本の骨子にもなっている「錯覚資産」です。
そう、錯覚資産。
なんてわかりやすいネーミングでしょうか。
あの人はなんとなく優秀っぽいとか
あの人は仕事できるっぽいとか
そういう「錯覚」をうまく使って、あげ底して、実際の実力以上に見せることをさします。
実力以上の機会を与えられると、いい経験ができるから、結果的に本当に実力がつくし、かつ「優秀っぽい」や「できるっぽい」の錯覚資産がより増える。そうすると、さらに実力以上の機会を与えられて、どんどんポジションがあがっていく。
この循環をまわせる人は出世するし成功する。「錯覚資産」をもっと積極的に意図的に使っていこうぜ、という、そんな本です。
あー、やだな。知られたくなかったな……。
本日までひっそりこっそり、この「錯覚資産」を運用し、明らかに実力に見合わないあげ底仕事で荒稼ぎしてきた42歳のワタクシは思うのです。
ミレニアル女子は、この「錯覚資産」を運用するのが一番下手で一番損をしている人たちだって。
だいたい君たち、ピュアすぎるんだよ。真面目すぎるんだよ。謙虚すぎるんだよ!
例えば、この本を最近読んだ朝日新聞ミレニアル女子の記者さんは
「めっちゃこれ鱗ポロでした! 私なんかは『記者は書いた記事で評価されるべきでしょ!』って思っていた人だったので。おおまいがー!となりました。男性には『あたりまえじゃん?どんだけはったりかますかじゃん?』といわれたのですが、私は『まーじでーー!!』となりました。どうりで私が出世しないわけだと激しく納得しました。(原文ママ)」
と言ってるんですよね。
そうだよ。そんなピュアすぎるミレニアル女子が多いから、私みたいな42歳が、世の中チョロく渡れてきたんだよ!
本心では、あまりこの本を多くの人が読まないでくれた方がありがたいなと思う。
でも、心の奥底にちょっとだけ残っていた良心をかき集めて、今、書いています。
この本は、実力という素手だけで戦っている、ミレニアル女子こそ読んだ方がいいと思う。
この本、発売3週間で9万部を突破した売れ売れの本です。
おじさんやおにーさんたちが先に読んで、みなさんとさらに差がついてしまう前に。
ミレニアル女子たちよ。武器を持て。素手で戦うな。
- この本を担当された編集者の横田大樹さんは、ちきりんさんの『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』『自分の時間を取り戻そう』や、サイボウズの青野慶久さんの『チームのことだけ、考えた。』や、尾原和啓さんの『どこでも誰とでも働ける』など、これまでの価値観を覆すビジネス書を多々作られてきています。特にちきりんさんの本は、telling,女子にもおすすめ。
それではまた来週水曜日に。
-
第13回自分ファーストで生きる! 正しき親不孝のすすめ
-
第14回狭く深く掘り下げた話ほど、普遍的な共感を生む
-
第15回良心は読んでほしい。本心では読んでほしくない。
-
第16回あいつにムカつく理由が、私のほうにあったなんて
-
第17回「女子割」がきかなくなってからが女は勝負じゃ