さとゆみ#150 意識低い私にも「やれそう感」ある『サステナ片付けできるかな?』
●本という贅沢150『サステナ片付けできるかな?』(コジママユコ/小学館)
ウェブサイトで連載されていたときから、ずっと気になっていた『サステナ片付けできるかな?』。本日、発売したばかりのコミックエッセイを、さっそく秒の速さで読んだよ!
いやあ、よかった。
このコミックエッセイは、ある新人漫画家さんが、整理収納アドバイザーの資格を持つ編集者さんのアドバイスに従って、片付かない家をちょっとずつちょっとずつ片付けていくお話なんだけれどね。
何がよかったって、もう、心理的安全性の担保が半端ない。
って、いきなり難しい言葉を使ってしまったのだけど。
要はね、こういう自分が苦手な分野の本を読んでいるときにありがちな「ごめんなさい、ごめんなさい。これまでサボってて本当にごめんなさい」って感情を、一切、抱かせないところが良い。
というのも、ここに出てくる主人公が、「おぬし、私か?」ってくらい、同レベルのダメちゃんなんですよ。だから、安心して読める。
意識高いこと言われないから、もう、安心してページをめくれちゃう。
最近年末も近いし、忙しいし、心もささくれだってるから、そんなせわしない日々に、攻撃されない優しさって、それだけでしみる。
そうそう、私、ここで大予想しちゃうけれど、「この本を読んだ読者の皆さんの一番多い感想」はおそらく、
「この本、私のことかと思った!」
だと、思う。
たとえば
・片付けられないと、心臓がドキドキしてしまう
とか
・ときどき思い立ってめちゃくちゃ片付けるけど長持ちしない
とか
・どうせ綺麗になるわけがないんだから、諦めちゃう
とかとか……。
もうこれって、片付けられない人の胸に刺さりまくり、ありまくり、もう大声で「それofそれ!」って叫びたくなるような、あるある感なんですよね。
そして、そんなダメちゃんな主人公の目指すべき片付けが、雑誌に出てくるような「生活感のない家のキープ!」とかじゃなくて、「持続可能な片付け」を目指しているというところが、また良いです。
片付けは祭りじゃー!
一気に片付けて二度とリバウンドさせないんじゃー!
(すみません、意訳です)
という、片付けの女王、こんまりさんのメソッドもいいのだけれど、でもときめくものだけを残そうと思ったら、気づけば次の日履いていくパンツ(下着のほう)がなくなり、あわてて買い足した経験のある私からすると、
この『サステナ片付けできるかな?』の、そこまで意識高くない感じは、大変、心に優しいです。私にでもできるんじゃないか、感。良きです。
あとね、読んでもらえればわかるけれど、「物に住所を与える」という、メソッドがきっぱりと1つこっきりなのも、意識低い系にはおすすめです。
主人公のステップバイステップな成長や、ささやかな気持ちの変化も、一気に読むとしみじみ沁み渡って。連載でも途中まで読んでいたけれど、ああ、まとまった一冊を買ってよかったなーって思ったよ。
年末までに、なんとかしたいと思っているみなさん、でも、無理するのは嫌だなーって思っているみなさん。
あなたのための本、ですよ。
そして、わたしのための本、でもあった。
一緒に、片づけしましょー!
それではまた、水曜日に。
●佐藤友美さんの新刊『書く仕事がしたい』が10月30日に発売!
『書く仕事がしたい』
著:佐藤友美
発行:CCCメディアハウス
書く仕事を20年以上続けてきた佐藤友美さんが、「書くこと以上に大切な、書く仕事のリアル」についてまとめました。 書く仕事がしたいと考えたり、長く物書きとして生計を立てていきたいと思っていたりする方にオススメの1冊です。
●佐藤友美さんの近刊『髪のこと、これで、ぜんぶ。』は発売中!
『髪のこと、これで、ぜんぶ。』
著:佐藤友美
発行:かんき出版
「本という贅沢」でおなじみで、ヘアライターとしても約20年にわたり第一線で活躍してきた佐藤友美さんの新刊が発売。 髪にまつわる「293の知っておくと良いこと」が1冊につまっています。
佐藤友美さんのコラム「本という贅沢」のバックナンバーはこちらです。
・捨てるか、残すか、その夫。1ミリでも離婚が頭をよぎったらこの本(原口未緒/ダイヤモンド社/『こじらせない離婚』)
・病むことと病まないことの差。ほんの1ミリくらいだったりする(村上春樹/講談社/『ノルウェイの森』)
・デブには幸せデブと不幸デブがある。不幸なデブはここに全員集合整列敬礼!(テキーラ村上/KADOKAWA/『痩せない豚は幻想を捨てろ』)
・人と比べないから楽になれる。自己肯定感クライシスに「髪型」でひとつの解を(佐藤友美/幻冬舎/『女は、髪と、生きていく』)