【西村宏堂の“Out of the Box!”#14】生理はタブー? 男性のからだを持つ私がナプキンをつけて考えたこと
ステイホームが続く日々、あっという間に夏が終わりつつあります。
みなさんは、今年の夏に何かうれしいニュースはありましたか?
私は海外での出版が決まり、執筆活動をしています。仏教とは何か? 僧侶がハイヒールをはいていいのか? など世界の読者の価値観にも“Out of the Box”な視野を届けたいと思っています。
コロナ禍で大変な時期ですが、みなさんのいいニュースもぜひコメントでシェアしてください。
できる限りお返事したいと思っています。
セカンドシーズンから、毎回ひとつの問いをみなさんに投げかけています。
それは、私たちが当たり前だと思っていることを問い直し、価値観をアップデートするためのクエスチョン。
読者のみなさんだけでなく、私自身への問いでもあります。
よろしければ、あなたもぜひいっしょに考えてみてください。
そして、あなたの考えを文末のコメント欄で共有していただけたらうれしいです。
引き続き、できるかぎりお返事もしていきますので、時々チェックしてみてくださいね。
今回の問いはこちらです。
Q. 生理はタブー? 月経にまつわる恥の意識や偏見はどうしたらなくなるでしょうか?
最近、私は生まれてはじめて生理用ナプキンをつける経験をしました。
もしかしたら、眉をひそめた方もいらっしゃるかもしれませんが、これは真面目な話。
そのきっかけは、今年7月に開催されたイベント「Let’s talk ! in TOKYO」に登壇する機会をいただいたことでした。アーカイブはこちら
「Let’s talk!」は、国連人口基金(UNFPA)と親善大使を務めるスーパーモデルのナタリア・ヴォディアノヴァさんが2018年にスタートしたプロジェクト。女性にまつわる、タブーとされてきた課題について対話を広げていこうとのコンセプトのもと、世界各地で展開され、東京で開催された今回は「生理」がテーマに選ばれました。
生理にまつわるスティグマ(偏見や差別から生まれる恥辱の意識)は、世界的にいまだ根強いといわれます。生理は女性の健康を保つための自然な身体機能であるにもかかわらず、多くの国でタブー視され、隠されるべきものとして扱われてきました。男性のからだを持つ人は、生理について無知な人もとても多いとのことです。
正直に言えば、私自身、生理についての知識をほとんど持っていませんでした。「生理前後は心身の不調が起きやすい」ということさえ知らなかったほど!
かつての私は「男性のからだを持つ自分には立ち入ってはいけない領域の話だ」と思い、周りの人には聞けないでいましたし、さらに言えば、知ることを避けていたところもありました。オンラインで調べることもできたけれど、「血だとか、あまりにも生々しい写真が出てきちゃったらどうしよう……」なんて想像してしまって。
そんな私ですが、今回お声がけいただいて、こう考えたのです。
「私は生理が来ないからだで生まれてきたけれど、自分の心は女性なのかも?と思うことがあります。そんな私だからこそ、今回の学びを生かして、お互いのからだについて理解を深め、尊重しあうための“かけ橋”になれるかもしれない」──と。
男性のからだを持つ私がナプキンをつけてみた話
何事も実際に体験してみることが大事!
そう思い立った私は、はじめてナプキンをつけて寝てみることにしました。母が戸棚を開けてひとつくれたのですが、最初は触るのもおそるおそる……。テープをはがして開けるだけでも、かなりの抵抗感を覚えました。
そして、一晩ナプキンを体験してみた感想は──「なんだかスキマからモレそう!」「生理中の女性はこんなに不安を抱えながら過ごしているの?」──ずっとモゾモゾ、ソワソワして落ち着きませんでした。
翌朝、ナプキンの構造を知りたくて水を注いでみたり、中身を分解してみたり。中からは水分を含んだジェルが出てきました。一般的なナプキンには、経血を吸いとる「綿状パルプ」や水分をジェル状に凝固させる「高分子吸収ポリマー」という素材が使われているそうです。使用前の軽やかなナプキンが、吸った水分の量だけずっしり重くなることを私は初めて知りました。
一番の驚きは「自分の知らないことがこんなに身近にあったなんて!」ということでした。
さらに、生理用品に関して母に気後れしながら相談した際、「どうして恥ずかしいと思うの?」と毅然と言われ、認識をあらためたこと。女性の友人に生理についてたずねたら、「聞いてくれてうれしい」と思いがけない言葉が返ってきたこと。今回のイベントをきっかけに、身近な女性が「今まではタブーと捉えてきたけれど、伝えることは大切。生理中の体調不良について、息子とはじめて話ができた」と伝えてくれたこと。たくさんの驚きや発見がありました。
振り返ってみると、最初はドキドキしていたけれど、だんだん慣れていく自分にも気づきました。実際の体験を通して、それまで抱いてきたタブー意識が薄れたのだと思います。今後、生理で体調の悪い人や何か困っている人に出会ったら、その方の気持ちを想像して「自分にできることがあれば、助けになりたいな」と感じています。体験って人を変えますね!
生理をめぐる問題について、どんな社会になっていったらいい?
近年、生理を含む女性のからだの問題について、自らの言葉で語る女性が増えてきました。女性の活動家や起業家が増え、女性の健康課題をテクノロジーで解決する「フェムテック」と呼ばれる製品やサービスも年々注目を集めています。
今、私たちは、今まで当たり前とされてきたことを見直して、意識が変化する過渡期にいるのだと思います。
「オープンに話そう」といっても、からだや性について語るのは、ときに難しさやとまどいを覚えますよね。それはやっぱり、プライベートでデリケートなものだから。
ただ、だからと言って、偏見や迷信や不安をそのままにするのではなく、それぞれが「まずは知ろうとすること」が大事な一歩になるのではないかと感じました。そして、話したい人や話せる人から自らの体験や想いを語り、何がどうして問題なのかをみんなで考えていけたらと思うのです。
さて、生理をめぐる問題について、あなた自身はどう感じているでしょうか?
そして、これからどんな風に社会が変わっていったらいいと思いますか?
- ■西村宏堂の“Out of the Box!”バックナンバーはこちら
1:新しい環境で“居場所”をつくるには?
2:納得できないルールに心折れず、自分らしく前を向くには?
3:人と自分を比べてしまう。友だちにコンプレックスや寂しさを覚えたら?
4:今の環境で踏ん張るか、去るべきか──どう見極める?
5:言葉の暴力に苦しんできた私。自分を取り戻すには?
6:年をとるのが憂うつ。「女性の価値は若さ」なの?
7:仕事が楽しい30代独身女性。結婚や出産への圧にモヤモヤ
8:大切な人たちとの別れ。誰からも必要とされない不安と孤独に押しつぶされそう
9:生きるのって果てしない──コロナ禍に初就職。希望の仕事に就けたのに、情けない自分に涙
10:何者でもない大人になった私。胸を張れる何かを見つけるには?
11:ルッキズムには反対。でも美しい人に惹かれるし、見た目は大事──これって矛盾?
12:オープン・リレーションシップ──相手を縛らない愛もある?
13:ミスコンのあり方も変化の兆し。本当に美しい人ってどんな人?
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