菅野美穂×浜辺美波「ウチの娘は、彼氏ができない!!」最終話。ラブコメディじゃなかったのか!思いがけないタイトル回収

菅野美穂主演、浜辺美波と親子役で共演する「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」。かつて“恋愛小説の女王”として一世を風靡したシングルマザーの水無瀬碧(菅野美穂)の悩みは、しっかり者でオタクの一人娘・空(浜辺美波)に彼氏ができないこと。このタイトルの意味が意外なかたちで回収された最終回を振り返ります。

「私、行かない」

最終話は冒頭から碧(菅野美穂)に追い風ががんがん吹く。
映画化された過去作は重版され、新作「真夏の空は、夢」も好調ですっかりスランプを脱している。一ノ瀬風雅(豊川悦司)には沖縄への移住を、漱石(川上洋平)にはニューヨーク行きを誘われる。とりあえず浮かれる碧はどちらに決めても空(浜辺美波)が一緒に行くことを疑わない。けれど、空はキッパリと「私、行かない」と言い切る。碧は
「今のはナシ!毒親発言だ。子供はいつか親から離れていくものだ」
と自分に言い聞かせるが、浮かれは影をひそめ、「でも、英語喋れないしなあ」「沖縄じゃサンローラン着てても浮くだろうなぁ」と行きたくない理由を挙げ始める。碧にとって重要なのは、場所や恋の相手ではなく空の存在のようだ。

タイトルの意味が!

碧がどこかへ行ってしまうのは応援しているようにも見える空も、自分にとっての大切なものには気付く。
空が「恋愛をする」と宣言するところから始まったこのドラマだけれど、「恋人」だったはずの渉先生に「空ちゃんの気持ちここにないの見て見ぬふりしてた」と入野光(岡田健史)との関係を指して問われた空の結論は
「私 恋とかよく分からないかもしれない」
なのだ。大切で繊細な関係に無理に理由をつけずに肯定し、ドラマ自体のタイトルが思いもよらなかった意味を持ってくる。このドラマは最初からちっともラブコメディではなかった。実は血の繋がっていなかった碧と空、一緒に漫画を描くことで繋がった空と光。ゆっくりと一緒に居ることでしか築き上げられない関係性の話だ。

ずっと寄り添ってきたゴンちゃん

碧に未練があるように見える一ノ瀬だが、実はすべてわかっているようにも見える。最後まで食えない男だ。一ノ瀬は碧を沖縄に誘うが、ゴンちゃん(沢村一樹)を挑発して「この町から出てけ!」「あいつらは 俺が守る!」と言わせる。ゴンちゃんも「この町」も碧と空にずっと寄り添ってきたのだ。

一ノ瀬も、そして漱石も、自分が選ばれないことを知っている。
碧も空に言われてそのことに気づくけれど、自分の中の「茨の道を歩く3つの小さい女の子」から空のにとっての茨の道を思い浮かべる。空が自分の足で歩いていることは分かった上で
「もう少し……見守ってたいです」
と自覚する。

空と光の漫画が努力賞に入選し、碧は以前空が踊った「喜びの舞」を二人に返す。二人はまた踊りで返礼する。一話目では親娘二人だけの夢の城に見えた白い部屋は、光の存在で未来への風通しがよくなったようだ。

漫画家・イラストレーター。著書に『ものするひと』『いのまま 』など。趣味は自炊。
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