本という贅沢121 『死の講義』(橋爪大三郎/ ダイヤモンド社)

死んだあと、どんな自分になるか。それを決めるのは自分なのだという。

毎週水曜日にお送りする、コラム「本という贅沢」。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大などで、「死」について考えたり、意識したりしたという人も多いことでしょう。そんな時期だからこそ「買い」の1冊を、書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんが紹介します。

●本という贅沢121 『死の講義』(橋爪大三郎/ ダイヤモンド社

今年ほど「死」について考えた年はなかったと思う。

コロナがあったし、過去に密着取材でご一緒した俳優さんの自殺もあった。プライベートで父が亡くなったこともある。

以前、友人がこんなことを教えてくれた。
「親というのは生きているだけで偉いんだって。
なぜなら、“蓋”になってくれるから。
親がいなくなると、次は自分の番だと思うから」

なるほど。次は、自分の番……。
私が今年、死について、それも「人の死」ではなく「自分の死」についてよく考えるようになったのは、そのせいかもしれない。
うまく言えないけれど、今のうちに、死ぬことについて、ちゃんと「決めて」おいたほうがいい(考えるというよりも)。
そんな感覚がある一年だった。

こんな世の中の空気のせいか、それともそういう年頃だからなのか。
私だけではなく、小学3年生になる息子も、週3ほどの頻度で、眠りに着く前に「死んでも忘れないでね」と言う。
私はずっとこの言葉を「僕が万が一死んでも僕のことを忘れないでね」という意味だと思って「そりゃ、忘れるわけないよ。絶対忘れないよ」と答えていたのだけれど、ちゃんと聞いたら、「ママが死んでも僕のことを忘れないでね」という意味だという。

「いや、そういうことだったら、それはわからない。ママも忘れたくないと思うけれど、死んだあとの世界のことは、誰にもわからないから」
と答えると、夜だからきっと寂しい時間だからだと思うけれど、彼の目にはみるみるうちに涙がたまっていく。

「死んだら、もう、全部忘れちゃうの?」
と、彼は聞く。
「うーん、わからないけれど、ママは忘れちゃうんじゃないかと思っている。でも、確証はない」
と、答える。
「じゃあ、生まれ変わって、また会えたりしないの?」
と彼は言う。
「うーん、そっちのほうが、ひょっとしたら、ありえるような気がする。でも、やっぱりよくわからない」
と、答えた。

でも、ふと思う。
私のこの死生観はどこからきているのだろう。
私は肉体がなくなったら、精神も一緒になくなると思っている。
できれば、地球にだらっと染み出して、土に還りたいという気持ちがある。
でも、なんとなく、今生の自分は、輪廻転生してきた感(うっすらとした記憶)も、ある気がする。
だとしたら、来世もある? あるのか?
みんなは、このことについてどう考えているのだろう。

そんなことを、考えるともなく、ゆらゆら考えていたら、こんな本を見つけた。
『死の講義』
サブタイトルが、「死んだらどうなるか、自分で決めなさい」と、ある。
コンコンと、頭をノックする音が聞こえる。これは「買いです」の、サイン。

この本はつまり、
1)世界中にある「死生観」や「死後の世界の存在」を
2)宗教をベースにひもといて、分類し
3)最後には、すべて2行でおさまる要約にまで整理し
4)その中で私たちがどの死生観と死後の世界を選択するか、その判断の基準を提示する
ところまでやってくれる本である。
その上で、
5)「死んだらどうなるかは、自分で決めなさい」
というか
6)「死んだらどうなるかを決めることができるのは、自分しかいない」
というところまで、ゆっくり伴走してくれる本である。

いま、「伴走」と書いたけれど、どちらかというと、歩く速度で一緒に並んで歩いてくれるという感じかもしれない。

「中学生でも読めるように、わかりやすく書きます」
と宣言されているように、めちゃくちゃわかりやすい。ばくっと思っていた世界中の宗教の概念が、すーっとしみわたってくる。

・なぜ私たちは「死」について考えるのが怖いのか?
・自分の死は経験できるのか? 本当に?
・死後の世界はあるのか、ないのか?
・死後の世界がある/ないとしたら、今、どう生きるべきなのか?

そんなことを普段、考えることがある人には、もれなくおすすめしたい本です。
できれば、死んだ父にも、生きている間に読ませてあげたかった。
彼にも、自分の死後の世界を決めさせてあげたかった。

死んだあと、どんな自分になるか。

1回読んだところで、私はまだ、決め切れていない。
これから何度か読んで、近いうちに、決めようと思う。

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telling,では何度か、死ぬことについて語られた本を紹介しています。

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それではまた来週水曜日に。

●佐藤友美さんの新刊『女は、髪と、生きていく』が発売中です!

佐藤友美さんのコラム「本という贅沢」のバックナンバーはこちらです。

・病むことと病まないことの差。ほんの1ミリくらいだったりする(村上春樹/講談社/『ノルウェイの森』)・デブには幸せデブと不幸デブがある。不幸なデブはここに全員集合整列敬礼!(テキーラ村上/KADOKAWA/『痩せない豚は幻想を捨てろ』)
・人と比べないから楽になれる。自己肯定感クライシスに「髪型」でひとつの解を(佐藤友美/幻冬舎/『女は、髪と、生きていく』)

年間10冊以上を担当する書籍のライターとして活動。ビジネス書から実用書まで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『道を継ぐ』など。