「問い」をもらうことは、どんなプレゼントをもらうよりも、萌えるし燃える
●本という贅沢120 『問い続ける力』(石川善樹/ちくま新書)

久しぶりに本を読んで脳天から爪先まで興奮している。
深夜の2時くらいに興奮が極まって、だれかれ構わずたたき起こして、語りあかしたい気持ちになって危なかったので、2時間ばかり川沿いを散歩して気持ちを沈めてきた。
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ことのはじまりは週末の飲み会だった。ライター講座のメンバーが、家に遊びにきてくれた。
こんなことを始めた。ここを努力している。もうちょっと成長スピードを上げたいなどなど、和気あいあいと話していたとき、メンバーの一人が、こんな問いを投げてきた。
「やっぱりみんな、成長した方がいいと思っているのかな?」
すーっと、その場の空気が変わる。
うわあ、やばい。最高に萌える。こういうの大好き。
「成長って、資本主義的な思想ですよね。でも人間って、資本主義的思想を備えて生まれてきてないと思うんです。僕は、仕事が楽しければ良いなあとは思うけれど、成長したいなあって思うことはあまりないんですよねー。みんなはどうなんだろう」
と、彼は続ける。
やばい、めっちゃ面白い。
その場にいた人たちは、みんな、彼の問いに対して、それぞれ考えを巡らせていたと思う。
私は私で考えるので、みなさんも、ここでちょっと考えてほしい。
あなたは、成長した方がいいと思っていますか?
そして、それは、なぜですか?
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私も考えてみた。
私にとって(仕事面においての)成長とは、良い原稿を書けるようになることだ。
そして、なぜ良い原稿を書けたほうがいいかというと、それを目指すほうが、思考量が増えて断然楽しいからだ。
私は「ていねいな生活」みたいなところから、最も遠い「ドドンパ!なぎ倒し」的生活をしているけれど、
でも、文章を書こうとして生きている時間は、生活のひだとひだの間に指を突っ込んで、すみずみまでねっとりとそれを感じようとしている。
そうやって世界や身体や脳をまさぐっているときに、ときどきものすごいエクスタシーがあったりして、そういう時は、信じられないくらい解放される。自由になれる気がする。
と、ここまで考えて、気づく。
だから私の場合、
成長したくて(上手くなりたくて)書いているのではなくて、
もっと楽しみ尽くすために、もっと自由になるために、成長したいのだ。
つまり結論、私は、成長した方が良いと思っているらしい。
ここまで考え終わったのは、会がお開きになってから14時間後くらいだった。
たったひとつの問いを、ずっと考えていた。超気持ちよかった。
それでもまだ、暫定解だな、と思う。多分まだまだ考えられる。
アドレナリンがでまくった状態だったので、5時間後に胃カメラの予定だったのに、牛乳をぐびぐび飲んでしまった。
問いって恐ろしい。
問いっておもしろい。
もう、人間ドックには行けないな。ここまできたら、今日はとことん「問い」について考えよう。
そう思った私は、本棚から石川善樹先生の『問い続ける力』をとり出した。
「WIRED」や「webちくま」で連載されていた時の原稿はぱらぱら読んでいたのだけれど、1冊になったものをまとめて読むのは初めて、だ。
そして、鼻血が出るほど興奮して眠れなくなる(冒頭に戻る)

この本は、こんな言葉ではじまる。
では派 「○○では……」と誇りたがる人たち
とは派 「△△とは何か?」と自問したがる人たち
そして、これからの時代に活躍するのは、答えを言える「では派」ではなく、問いを立てられる「とは派」だという。
石川先生は、もともと「では派」だったのだけれど(でもきっとそれは半分謙遜だろう)、「とは派」に憧れて、「とは派」の人たちと対談をくり返し、「問い続ける力」をどのように磨けばよいかをまとめてきたそうだ。
なんで鼻血が出るくらい興奮したかというと、
そこに散らばる「とは派」の人たちの問いがもう、いちいち胸をかきむしられるくらいぶっ刺さったからだ。
世の中は、こんなにも、魅惑的な問いに満ちている!
その問いの答えを考えたくなったし、自分でも問いを立てたくなったし、というかずーっとノートにそれを書き出していたし、もうそれだけでご飯何杯でもいける、というか、これの連続が人生だったら、もう、いつ死んでもきっと楽しいってくらい、頭がぐるんぐるん、体がほっかほっかした。
問いを見つけること。それを考えること。自分の答えを探そうとすること。
多かれ少なかれ、誰もがそのエクスタシーを経験しているはずだ、と思う。
できれば、何度も、そこにいきたい。よね?
問い続け考え続ける気持ちいい人生のほうを生きたい。よね?
私は、いきたいし、生きたい。
あー、だめだ。まだ血がのぼってる。
本、読まれた方は、ぜひご連絡ください。
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対談は、どれも興奮したけれど、松嶋啓介さんの「アートとは何か?」と、若林恵さんの「文化とは何か?」がとくに面白かったです。
で、「問い続ける力」を読んだら、先日発売になったばかりの、「考え続ける力」にGO!
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それではまた来週水曜日に。
●佐藤友美さんの新刊『女は、髪と、生きていく』が発売中です!

『女は、髪と、生きていく』
著:佐藤友美
発行:幻冬舎
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