夏マスクが必需品に!? マスク進化を大予測してみた

新型コロナウイルス感染症拡大によって定着しつつあるマスク生活。一方で、真夏のマスクは思った以上に暑く、困っている方も多いのでは? すでに「抗菌マスク」や「冷感マスク」も登場し、マスクの進化が始まっています。そこで今回は、telling,でもおなじみの工学博士であり生粋の理系男子である“尾池博士”がマスクの進化を大予測してくれました。

危機の次に来る進化

新型コロナウイルスで世間はすっかりマスク姿だらけになりました。ネットでも夏に向けて熱中症や日焼けが心配されています。

しかし多くの人が指摘するように、時代の変化はチャンスです。いつだって変化をいち早く掴んだ者が次の時代の勝者になります。大昔からずっとそうでした。

5億4千万年前、突然いろんな生物が登場した「カンブリア爆発」がとても有名ですが、その要因のひとつに「視覚」を挙げる研究者がいます。「光スイッチ説」です。

視覚を進化させた生物は他の生物の姿がよく見えるようになり、あいつは変わったヒレを持ってる、あいつは違う色をしてるなどと自分と比べたから爆発的な多様性を生んだという説です。

危機によってマスクをせざるを得なくなった今はまさにその状況です。あの人は変わったマスクをしてる。あの人は違う機能のマスクをしている。人類とマスクはどのように進化していくのでしょうか。大胆に予想してみたいと思います。

マスクの進化前夜

「マスクは意外と知っているようで知らない道具だった。」今回のコロナ禍でそのように感じた方は多かったのではないでしょうか。

新型コロナウイルスが深刻になり始めた今年2月、まず話題になったのが「マスクは感染者がするもの」ということでした。予防効果はあまり期待してはいけないことが分かり、手洗いとソーシャルディスタンスとの相乗効果によってマスク効果が高まることを学びました。

そして次に「不織布」と「綿」の違いを知りました。不織布の方がフィルター機能が高く、マスクと口の間に呼気がこもりません。メーカーは競って不織布マスクを量産しました。

メーカーはさらに呼気がこもらない「排気弁付きマスク」を量産し、日本でも一般的になってきました。

そして夏が近づき、次の話題は「涼感」でした。ハッカ油を利用したり、打ち水効果を期待して濡らすことができるマスクも登場しました。

ここまでマスクへの理解が進むとだんだんもの足りなさを感じてくるのではないでしょうか。もっと進化できそうな予感がしてきます。打ち水を期待する場合、フィルターそのものが濡れるとフィルター性能が落ちるので、濡らして良い層、水を通さない層、フィルター層の三層構造のものが登場してもよさそうです。

マスクのカンブリア爆発

同じような発想でマスクの多様化がすでに続々と起きています。

・フィルター性能系
・フィット系
・抗菌系
・加湿系
・冷感系

最も種類が多いのはやはりフィルター性能を追求したものです。しかしウイルスシャットアウトや99%カット、N95同等など大げさな広告のマスクは避けてください。国民生活センターの調査ではほとんどの家庭用マスクがその大げさな性能を満たしていませんでした。

その点フィット系は現実的です。マスクの性能をもっとも落とすのは隙間からの「漏れ込み」です。フィルターの性能を10倍上げようとすると、呼吸のしにくさ(通気抵抗)は100倍になりますので、フィットさせずにフィルターの性能を上げたものはほとんど隙間から呼吸することになります。しっかり防御するには謳い文句より呼吸のしにくさで選んだ方が間違いがありません。医療は本当に大変な職業です。

銀イオンなどによる抗菌系や、いつも感心する小林製薬の喉うるおい加湿系マスクも存在感を増しています。

しかし夏と言えばやはり「冷感系」です。

夏にマスクを付けないことが考えられない時代もくる?

もしマスクで吸気自体を冷やすことができれば、熱中症対策どころか、メイク崩れの対策にもなりそうです。その方面でもっとも期待できそうな技術が去年発表されました。SONYが開発したウェアラブルエアコン「REON POCKET」です。もともとパソコンに使われていたペルチェ素子の安全性を向上させ、首すじを冷やすウェアラブルにしたものですが、クラウドファンディングで7,000万円近く集めて話題になりました。

すぐにでもマスクに組み込みたくなりますが、メーカーの研究所ではすでに試作品ができているかもしれないし、ガジェット好きの方が自分のマスクに組み込んでいるかもしれません。

夏にマスクを使うなんて今までは熱中症になりそうなイメージしかありませんでした。実際、日本医師会は夏になる前に乳幼児へのマスク着用を避けるようにアナウンスを出しました。

しかし、もし小型ウェアラブルエアコンによってマスクの吸気自体を冷やせるようになり、さらに呼気を完全に排出するワンウェイバルブが付き、しかも体温の監視機能で万一の体温上昇を知らせるアラート機能まで付いたとしたらどうでしょうか?

そして検証の結果、その新型冷感マスクによって乳幼児の熱中症が劇的に減らすことができたとしたら?

夏にマスクを付けないことが考えられない時代もくるのではないでしょうか。

そうなってくれば当然次に期待したくなるのがUV対策です。

マスクがUV対策に革命を起こす?

考えてみればマスクはUVケアには丁度良い形をしています。帽子で隠せるのは鼻までなので、マスクと帽子を組み合わせれば顔全面を覆うことができます。

UV防止材の微粒子化が進み、透明でも99%以上UVカットできるフィルムが登場しています。冷感不織布や排気弁などマスクの進化で培ったノウハウに、透明のUV防止フィルムを組み合わせて口元が見える夏マスクが開発できれば見た目にも自然なフェイスガードになりそうです。スキンケア史上で初めて、顔がUVクリームから解放されるかもしれません。

ほんの数か月前は「マスクは感染者用か、予防用か」なんていう議論をしていたのに、いまでは「ウェアラブルエアコン機能をマスクに応用すれば、夏のUV対策に革命が起きるかもしれない」という発想ができるまでになりました。新型コロナウイルスはきっと後悔します。私たちに秘められた(というか忘れてた)力を呼びさましてしまったのですから。

工学博士/1972年生まれ。九州工業大学卒。FILTOM研究所長。FLOWRATE代表。2007年、ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞。2009年、PD膜分離技術開発に参画。2014年、北九州学術研究都市にてFILTOM設立。2018年、常温常圧海水淡水化技術開発のためFLOWRATE.org設立。
イラストレーター・エディター。新潟県生まれ。緩いイラストと「プロの初心者」をモットーに記事を書くライターも。情緒的でありつつ詳細な旅ブログが口コミで広がり、カナダ観光局オーロラ王国ブロガー観光大使、チェコ親善アンバサダー2018を務める。神社検定3級、日本酒ナビゲーター、日本旅のペンクラブ会員。
新しく暮らす