20~30代でがんが見つかったら 私の対処法【カラダと健康】

女性の乳がんは、30歳代から増加をはじめます。子宮頸がんなども要注意です。一般的に、がんの予防には、禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれていますが、何よりも大切なのは適切な検診の受診や早期の治療です。ただし、病院を一歩出た後、途方に暮れる患者は少なくありません。これからどうなるの、職場への説明はどうすればいいの、仕事を失うのかな、パートナーや家族にどう接したらいいのだろうか、子どもは……。がんとともにどう生きるか、一緒に考えましょう。

遺伝性のがんは多いのか

国立がんセンターがん対策情報センターによる「地域がん登録全国合計によるがん罹患データ」の分析では、30代のがん罹患率は、男性より女性の方がやや高い傾向を示しています。一方、治療の進歩もあり、例えば部位別でみると、乳房の場合、5年相対生存率は91.1%、10年相対生存率は79.3%、子宮頸部の場合、5年相対生存率は73.4%、10年相対生存率は66.1%となっています。

つまり、「がんとともに生きる」時代とも言えます。

2013年、アメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーさんが、「がんを予防するため両乳房を切除した」と公表し、世界的なニュースになったことを覚えているでしょうか。遺伝性乳がんが発症する確率が高いため、ということでした。一般に多くのがん患者は遺伝性のがんではありませんが、こうした点も気になるところです。

telling,のインタビュー記事の中で、順天堂大学医学部附属順天堂医院(東京都文京区)の齊藤光江教授(乳腺科)は、「『うちの家系は乳がんの人がいないから大丈夫』というような考えは間違いです。また、胸の痛みで発生を教えてくれるような、優しい病気ではないことも覚えておいてほしいです」と教えてくれています。そして、こうアドバイスしています。

「乳がん検診は40代以上が推奨されていますが、30代でも不安を感じる方や今の胸の状態を知っておきたいという方は、自己投資として1年に1回は超音波検査を含む人間ドックを受けられたらいいと思います。セルフチェックも大切ですね」

「うちの家系は乳がんの人がいないから大丈夫」は本当か

誰に相談すればいいのか

乳がんになったら誰に話せばいいですか? 仕事や出産、対策はどうする?

特に注意したい「子宮頸がん」「乳がん」「卵巣がん」「子宮体がん」

東京HARTクリニックに勤務する産婦人科医の小柳由利子さんは、不妊治療に関する知識の啓発と多様な家族のあり方を応援することをライフワークとしています。

telling,の「ミレニアルズの健康カルテ」という特集では、「ミレニアル世代なら知っておきたい婦人科系がんのリスクと、早期発見につながるがん検診のポイント」として、子宮頸がんなどに関するアドバイスをしてくれました。

「ミレニアル世代」の女性に特有のがんとして、「子宮頸がん」「乳がん」「卵巣がん」「子宮体がん」の4つが挙げています。

子宮頸がんの発症は、「いまでは30代前半が発症のピーク」と指摘し、性交による子宮頸がんをひきおこすヒトパピローマウイルス(HPV)への感染への注意を呼びかけています。

子宮頸がんの発症ピークはミレニアル世代に訪れる 知っておきたい「婦人科系がん」

「転移」の恐怖

治療以外のこと、つまり治療と仕事の両立、治療と家庭生活の両立、そしてどう向き合っていけばいいのか、といったことを誰に相談すればいいのか、迷うところです。スマホ片手にググったり、同じ部位のがん患者のブログを読みあさったりといった人が多いでしょう。ただ、どこに正解があるのかは、人によって違います。

telling,でも、ミレニアル世代のがん患者について、特集やコラムの中で経験者の話を取り上げてきました。

31歳の時、しこりを感じて乳がんを見つけた中島ナオさん。

「がんという病気は、つらい選択肢であっても、自分で決めていかないといけないし、そのためには自分が知るしかない。まずは病気について知ることから始めました」

最初にがんと診断されてから2年半後、がんの転移がわかって「不確かな未来に直面して病気への恐怖をあらためて感じ」て涙を流したと書いています。

中島ナオさん「デザインシンキング」でがんと向き合う。がん判明後にデザイナーの道へ

お金、仕事、親・周囲にどう伝えるか

36歳の出版社勤務の女性は、結婚紹介所に入会した時期と同じころ、職場の健康診断で、「要再検査」の項目があったそうです。小林麻央さんが乳がんを公表した時期でした。女性は3カ月後、乳がんでステージ1と診断されました。早期発見でしたが、今の体の状態、今後の治療やお金、仕事、親や周りに何と伝えるかといった不安で、いっぱいいっぱいになってしまったそうです。

婚活中に乳がんが発覚。その後、彼と出会い結婚した

ライフイベントが多い時期だからこそ悩む

27歳の時、甲状腺がんがみつかった看護師の女性は、「広い範囲に転移もしていて楽観的な状況ではなかった」と言います。

「治療のために休職していた期間は、ネット検索ばかりして過ごしました。『20代女性』『甲状腺がん』『看護師』などとキーワードを打ち込んで、同じ状況の人がどうやって生きているのかを探しました。あの期間は、社会から取り残されていくようで、つらかったです」

「これからの人生に価値があるのか」
「未来はあるのか」
「働けるのか」
「恋愛は?」
「子どもは産めるのか」

20代後半から30代は、ライフイベントが多い時期です。一方、同じような悩みを抱える気心が通じた人が身近にいないと孤立しがちです。一方で、病院の化学療法センターで出会った患者たちは、「がんだからといって、その人の人生の全てが哀れには見えませんでした」という。

「今日を精いっぱい生きるだけ」というセリフが、染みました。

「人生で大切にすべきことの優先順位」

書籍ライターの佐藤友美さんは、がん患者や家族向けの相談施設「マギーズ東京」共同代表で元日本テレビ記者・キャスターの鈴木美穂さんとの出会いや鈴木さんの著書『もしすべてのことに意味があるなら がんがわたしに教えてくれたこと』(ダイヤモンド社)について、telling,のコラムでこう記しています。

「彼女には、人生で大切にすべきことの優先順位が、はっきりと見えていたんだなあということ。だから必死で手を伸ばすし、伸ばした手の先には誰かの手が差しのべられてきたんだなあと。この本には、彼女が命をかけて知り得た、生きるための“真理”が描かれている」

24歳でがんになった彼女は言う。死ぬ時にできるのは何かを「残す」ことだけ

telling,は、「カラダと健康」について一緒に考えて行きます。

20~30代の女性の多様な生き方、価値観を伝え、これからの生き方をともに考えるメディアを目指しています。
女性のカラダ、生き方、時々ドラマ。