小川彩佳さん「無理に自分らしさを探さなくていい。周りが見つけてくれるから」
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周りの環境に自分らしさを育ててもらった
――まず教えていただきたいのが、小川さんの仕事の信念です。
小川彩佳さん(以下、小川): よく「信念を持っていそう」と言われるのですが(笑)、明確な信念を持って歩んできたというよりは、私は環境に育ててもらったと思うんです。今、報道というジャンルで働かせいただいていることもそうですね。
――というと?
小川: もともとニュースに興味はあったのですが、局のアナウンサーは会社員である以上、希望するジャンルをやらせてもらえるとは限りません。でも私は、報道を担当させていただく機会が多くて、他のジャンルを担当したことがほとんどないんです。この特殊な環境で経験を積めたことが大きかったと思います。
信念って、持とうと決めて持つものではない気がしていて。自分の内側から自然と芽生えたものが、周りから見ると信念だと映っているのではないかと思うんです。へこたれずにやり続けると、それが信念になるというか。
仕事でくじけそうになったら、あえて没頭する
――あまりへこたれない性格ですか?
小川: いえ、へこたれてばっかりです(笑)。ネット社会の今、いろいろな意見を目にする機会もありますしね。視聴率や私個人への評価もまったく気にならないわけではありません。もちろん、自分が改善できることはしていきたいですが、そういう意見にとらわれすぎないようにして、応援してくださる方の声や、家族や友人の意見に耳を傾けるようにしています。
――どうしてもくじけそうになったときはどうしていますか?
小川: 家に帰って映画を観たり、音楽を聴いたりしてリフレッシュしています。ただ、仕事でくじけそうになったときは、あえて逃げずに、その問題に没頭することを選んでいます。
――“没頭する”とは?
小川: 失敗したり、どうしようもない状況に陥ったときに、“少しでも前進するためにはどうしたらいいんだろう”と深く考えるんです。自分を追い込むイメージです。それを繰り返すことで、周りの方の助けも受けられる。その積み重ねが形になって今に繋がってきました。
――自信にも繋がりそうですね。
小川: はい。報道以外のジャンルを経験するべきなのではと考えた時期もありましたけど、今は、同じ環境に身を置いてきたからこそ、私の中でひとつの型と呼べるものができたのだと思います。
――ときには環境に身を委ねることも大切なんですね。
小川: そう思います。もし、すごくやりたいことがあるのなら、新たに挑戦することもひとつの手かもしれません。でも、次のステップが明確に描けていないときは、同じ環境で続けてみるのも大切なのではないでしょうか。「石の上にも三年」という言葉はよくできているなと思っていて(笑)。私は、続けてきたからこそ、自分の中で発見できることがたくさんありました。
フリーランスは、実はすごく自由なわけではない
――そんな環境を飛び出して、フリーランスを選んだのはなぜでしょう。
小川: もちろん悩みに悩みましたが、これからの人生をどう重ねていくかを考えた中での決断でした。結婚をしようと思ったのもきっかけのひとつです。結婚をして、これから子どもを授かるかもしれないということを考えたとき、一歩を踏み出す、レールからはみ出すとしたら、今しかないのかも……、という気持ちになりました。
もうひとつ、会社を辞めて留学した元後輩アナウンサーの青山愛さんに触発されたこともあるかもしれません。彼女の話を聞いていて、自分の枠からはみ出してみると、いろんな景色が見えることを知りました。もっと自分の中に選択肢を持ちたい、自分の未来をもっと自由に考えてもいいかもしれないと思えたんです。
――実際フリーになられていかがですか?
小川: 自由って、実は自由ではないなと思っています(笑)。組織に所属していると、決められたルールや規制の中での自由になるので、選択肢がある程度絞られますよね。でも、フリーランスはその枠がなく選択肢が多い分、自分の一挙手一投足に、より責任があるなとあらためて感じています。すべての選択が責任を伴い、自分の1年後、5年後に関わってくるな、と。
――5年後、10年後についても考えますか?
小川: 考えます。ただ、この10年間で世の中の働き方や価値観も多様化して、大きく変わりましたよね。だから、この先の10年で社会がどう変わるかはわからない。すべてを今決めずに、どこか時代に委ねるような、遊びの部分も持って生きたいですね。
アナウンサーだから、キャスターだからというイメージに限定されるのではなく、ときには弱さや迷っている姿をさらけ出してもいいのかなと思っています。自分で言ってはダメなんですけど(笑)、それを受け入れてもらえるのであれば、もっと自分らしくいられるのかな、と。
無理やり自分らしさを見つけないことで、本当の自分らしさがうまれる
――等身大や自分らしく、という表現をよくなさいますね。
小川: テレビ朝日時代、私の同期のアナウンサーはキャラの濃い男性2人でした。彼らに比べると私は本当に平凡。だから、何か個性を探さなきゃ、自分らしさを表現しなきゃと迷った時期がありました。でもそのとき、アナウンサーの先輩が、「個性は周りが探してくれるものだから、君は毎日を一生懸命に生きればいい」と言ってくださったんです。本当にそうだったなと、自分を振り返っても、人を見ていても思うんです。
――等身大でいることが、最大の武器になるんですね。
小川: 私はそう思っています。テレビの世界だけに限らず、どんな世界でもきっと同じことは言えると思うんです。無理やり自分らしさを見つけようとしたり、キャラクター付けようとしなくていい。今の目の前のことや、自分の感情に正直であること、自分にうそをつかないことを積み重ねていくことが、本当の自分らしさに繋がるのではないかと思います。
●小川彩佳さんプロフィール
フリーアナウンサー。青山学院大学卒業後、2007年アナウンサーとしてテレビ朝日に入社。「サンデープロジェクト」「報道ステーション」、AbemaTV「AbemaPrime」など、数々の報道番組で活躍。この春独立し、TBS「NEWS23」(月~木曜夜11:00~、金曜夜11:30~)のメインキャスターに就任。無類のロック好きとしても知られる。
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