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縛られずに働く

糸島でシェアハウスを運営「自分らしく生きられる社会をつくりたい」

シェアハウス運営、新米猟師、ライター・畠山千春さん(33歳) 都会を離れ、福岡県糸島市で「いとしまシェアハウス」を営み、狩猟や農業で自給自足の生活をしている畠山千春さん。埼玉出身の彼女は、2011年の東日本大震災をきっかけに移住し、新しい働き方を始めたといいます。

●縛られずに働く

自分で生きていける技術を身に付けたくて

震災が起こった当時、横浜で会社員として働いていました。いざというとき、お金は役に立たず、都会では物流が断たれた瞬間に暮らしがままならなくなると強く実感したんです。
「自分で生きていける技術を身につけ、信頼できる人たちと共に生きるコミュニティを作りたい」。その想いが、いとしまシェアハウスを作るきっかけになりました。

翌年、会社の移転で福岡に引っ越すことになりました。
休みの日に彼と車で糸島をめぐっていたら、空き家だった築80年の古民家を発見したんです。
「ここで新たな人生をつくろう」と思い、会社を退職しました。

2013年5月にふたりでシェアハウスを始めました。ここ佐波集落は、海も山も川も棚田もあってすごく美しいところですが、全18世帯で平均年齢は65歳くらい。シェアハウスを始めて6年、今この家には20~30代の9人が暮らしています。湧き水だけで下水道もありません。ライターやダンサー、大工、蔵人など、いろいろな方が暮らしています。

鶏のさばき方はYouTubeで学び、狩猟の師匠とはFacebookでやり取り

いとしまシェアハウスのテーマは、食べ物・エネルギー・お金の3つを作ること。
たとえば食べ物は、お米なら近くの棚田で100%自給しています。敷地では鶏を6羽飼い、生みたての卵があり、蜂を飼い、近くで山菜をとったり魚をとったり。自分で鶏もさばき、狩猟免許もあるので猪の罠猟もして、猪の毛皮からバッグを作ったりもしています。鶏のさばき方はYouTubeで学び、狩猟の師匠にはFacebookのメッセンジャーで連絡を取り教わっています。

私は大学生のときにカナダ留学でシェアハウスを経験し、実家を出てからもずっとシェアハウスで暮らしてきました。私にとっては、人と一緒に暮らすことが楽しくて豊かな生き方なんですよね。この近さが苦手な人もいるだろうけど、人との距離が近ければ近いほど学ぶことがたくさんあるんです。他人と暮らすことで、自分のこともよくわかってきました。

物事を大胆に変えるのが好きで得意な反面、持久力がないんです。子どもの頃から自分の苦手なことは直して何でもできるようにならなきゃと思ってきたけど、ここに来てからは自分の得意なことを伸ばして人を助ければいいし、逆に私が苦手なことは、それが得意な人と組めばいいじゃんと気づいて、ずいぶん生きやすくなりました。

集落の人が元気なうちに晴れ姿を見せたかった

集落の人たちとは、いい関係ができています。物件を決めた後に大家さんが集落の皆さんを集めてくださって、私と彼で「シェアハウスをはじめます」とご挨拶をしました。引っ越し当日は全18軒にお菓子を持ってご挨拶にまわり、集落の集まりには住人の誰かが必ず出るようにしたら、「いつも人を出してくれてありがとう」と信頼関係ができました。

彼とは2015年に結婚して、本籍を糸島に移しました。集落の人が元気なうちに、晴れ姿を見せたいという気持ちが強かったんです。田舎で暮らしていると、お世話になった方が亡くなることもすごく身近だから。集落の方を全員お招きして地域の神主さんに来てもらい、家で結婚式をしました。皆さんがとても喜んでくださって、本当に感動しました。

一人ひとりが自分らしく幸せに生きられる社会に

ウェブサイトやSNS、イベントなどを通じて発信していると、いい出会いがいっぱいあります。住人募集をしていても、不思議なことにそのときに必要な人が来てくれる。だから広報の部分はすごく大事にしています。仕事やプライベートで上京することもあるので、都会から離れていても断絶されているかんじはないし、自分らしい生き方ができるようになって本当に今、幸せです。

これから納屋をリノベーションして、私たちの暮らしを体験できる施設を作る予定です。暮らしをオープンに発信し続けることで、私たちの価値観や生き方を知ってほしいと思っています。

私はもっともっと、自分らしく生きる人を増やしたい。一人ひとりが自分らしく幸せに生きられる社会を作りたい。全員が田舎暮らしをしたほうがいいとかではなくて、本当に望む生き方を見つけるチャンス、安心して挑戦できる環境、助け合える仲間などが人には必要で、シェアハウスをそんな場所にしていきたいし、少しずつそうなっている実感があります。

「雇われたい」とふと思うけど、幸せを更新し続けています

子どもが生まれたら暮らしはどうなるかなとか、両親が高齢になったらとか、この先もいろんなことが待ち受けていると思います。みんなで子育てしたり、年老いた人を支え合ったり、いろんな人がリスペクトし合いながら一緒に暮らせる場所を作りたいという漠然とした未来像もあります。とはいえ、自分が当事者にならないとピンとこないから、そのときどきの状況に応じて取り組んでいくだろうと気軽に構えています。

大変なことですか? うーん、すぐ忘れちゃう性格だからなあ。まあ、いつもすごく楽しくて幸せを更新し続けているけど、経営や運営に関してはしんどさを感じるときもあります。経営者は誰でも抱える悩みとは思いますが、「メンバーが自分らしく生きるためにどういう場になったらいいのかな」とか、「この場所を続けていくためにはどうしたらいいんだろう?」と悩むこともあります。たまーに「雇われたい!」と思うけど、それが向いてないことは自分でよくわかってる。本当にやりたいことをできている今が、とっても幸せです。

    

●畠山千春さんプロフィール
1986年生まれ。東日本大震災をきっかけに大量生産大量消費の生き方に危機感を感じ、動物の解体を学ぶ。2013年に狩猟免許を取得。狩猟活動のほか解体のワークショップなどもおこなう。著書に『わたし、解体はじめました -狩猟女子のくらしづくり-』(木楽舎)。
いとしまシェアハウス
『わたし、解体はじめました -狩猟女子のくらしづくり-』

多様な働き方を応援します

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福岡市出身。九州大学を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、WEB、報告書等の制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者など1,500人以上を取材。
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