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縛られずに働く

海外でリモートワークする女性の、上司・同僚の本音はいかに?

場所に制限されない自由な仕事の仕方について考えている特集「#縛られずに働く」。前回は、夫の転勤でマレーシア・クアラルンプールに移住し、日本とのリモートワークで働く女性の実情を取材しました。では、日本で彼女とやりとりする側の上司や同僚はどのように働いているのでしょうか。仕事の進め方、コミュニケーションのとり方などを聞きました。

●縛られずに働く

お話を聞いたのは、彼女の上司にあたる米山寛さん(アソビュー株式会社執行役員・営業統括責任者)と、同僚の山下辰也さん(同社 パートナーリレーション部 営業推進&マーケティンググループ)。

――山下さんの同僚の方がリモートで働くクアラルンプールは、日本との時差が1時間。日本時間のまま働けて、想像以上に仕事がしやすいと彼女は言っていました。とはいえ、御社初のリモート事例になったとのこと。スムーズに進みましたか?彼女は御社のリモートワーカー第1号ですが、働きにくさなどはありませんでしたか。

同僚・山下辰也さん/以下、山下(同僚): それまで僕のまわりにはリモートワーカーがいなかったので、最初は正直、イメージが湧きませんでした。でも、ちょうど彼女と働き始めた時期に子どもが産まれて、自分もリモート、彼女もリモートという状態になったことがあるんです。自分がリモートワーカーになってみてはじめて、どうすれば彼女と円滑に働いていけるかをより考えるようになりました。

上司の米山さん。以前勤めた会社でリモートワーカーの部下がいたため、最初からハードルは感じなかったそう

意図的にコミュニケーションの頻度を上げた

――具体的には、どういったことを心がけたんでしょうか。

山下(同僚): コミュニケーションの頻度を意図的に高めましたね。定例のミーティングだけでなく、週2、3回は1対1で会話してコミュニケーションを取っています。

――上司の米山さんは、多くの部下を抱えておられます。仕事を進めたり評価をしたりするうえで、やりにくさはないのでしょうか?

米山(上司): 正直、僕らの方にやりづらさや難しい点はほとんどないと思っています。僕らが思っている以上に、彼女のほうがやりづらさ、たとえば複数人が参加する会議だと会話の内容が読み取りにくくて難しいなどを感じているかもしれない。特にマレーシアからリモートワークを始めたころは、ベンチャーならではの空気感や一体感を感じにくかったり、ネットワークが不安定だったりなど、ストレスが大きかったんじゃないかと思います。

――どうやってそうした「やりにくさ」を取り除いたんでしょう。

顔が見える状態でのコミュニケーションは、文字よりも円滑にすすむ

米山(上司): 他の社員と同様、2週に1回1on1(1対1の面談)をしたりして、困りごとは早めに伝えてもらうことで、快適に働けるようにフォローを心がけています。また、人事側でも彼女との共有グループのチャットを作り、なにか相談があればすぐに共有してもらうという体制を会社全体としても組んでいます。

山下(同僚): 文字だけのやりとりだと微妙なニュアンスが伝わりづらいことがあるので、画面越しで話すようにしています。顔を見て会話をすると、表情で様子がオンタイムでわかりますし、仕事が進めやすいです。

――彼女は「半年に1回ぐらい実際に会って仕事をすれば、仕事がとてもやりやすくなる」と言っていました。

山下(同僚): 僕もそれは感じます。去年の秋に、彼女が一時帰国して、1カ月ぐらい隣の席で一緒に仕事をしたんです。そのときに、画面越しだと教えにくいことを教えたり、雑談も含めて顔をつきあわせたことで、お互いの理解がすごく進んだと思います。

特に月曜日はミーティングが多く、彼女は画面越しに多くの人と仕事のやり取りをする

会社側に起こった、発想の転換

――これだけ距離が離れていても、課題はあまりないのですね。

米山(上司): むしろ、彼女がリモートワークを始めたことで、発想の転換が起こりました。それまでは仕事の「過程」も見ていましたが、今はほとんど姿が見えない。過程ではなく成果で評価するようになりました。

上司の立場で見ると、彼女は大きく成長したと感じます。日本にいるときは職場の雰囲気や周囲の意見に反応したり、同調しがちだったのが、いまは仕事にしっかり集中できている。数値などを客観的に見て、自分で判断できる力もついたと感じています。「この1年で最も成長角度が高いのは彼女だ」との評価を社長にも伝えました。

リモートワークをするための4つの条件とは……

同僚の山下さん。いまは距離による隔たりはほぼ感じないという

――社内の他の人も、リモートワークができると思いますか。

米山(上司): リモートワークがうまくいくのには4つ条件があるかなと気づきました。まずは、働く本人の会社との信頼関係、これは大前提です。2つめに保有スキルの高さ。業務を行うのに常に誰かの指示を仰ぐ段階では、正直難しかったと思います。3つめは、仕事や職務内容。いくらスキルがあっても、客先への訪問が必須の営業などでは現実として難しいので、彼女には企画職に異動してもらいました。それから4つめは、オフィスにいる社員と同じように、集合機会や1on1を設定し、コミュニケーションを円滑にすることですね。朝会や、全体でのキックオフなどにもオンラインでつないで出席してもらっています。

基本的に、場所による情報格差はほぼないと思います。この4つをクリアできれば、他のメンバーもリモートワークを導入できるのかなと。僕たちは環境などの外的要因で会社に通うことが難しくなってしまったメンバーに、うちで働き続けることを諦めて欲しくない。彼女の場合はその手段がリモートワークでした。彼女が新しい働き方を始めたことで、自分たちの成長にもつながりました。彼女の働き方をベンチマークにして、たとえば産休育休中の人で早く復帰したい人が働きやすくなるなど、徐々に会社の環境を整えていけたらいいなと個人的には思っています。

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朝日新聞バーティカルメディアの編集者。撮影、分析などにも携わるなんでも屋。横浜DeNAベイスターズファン。旅行が大好物で、日本縦断2回、世界一周2回経験あり。特に好きな場所は横浜、沖縄、ハワイ、軽井沢。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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