オーラルケアの教科書(上)

口の中にいる菌は約10億個。私たちのオーラルケアは本当に大丈夫?

1日3回歯を磨いて、口臭チェックやホワイトニングも実行。これで歯のケアはバッチリ! ……でもその認識、間違っているかもしれませんよ? 実は口腔内の菌は、目に見えないところで増殖し続けているのです。正しいオーラルケアについて医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソンのマーケティング担当・浦崎里奈さん、神奈川歯科大学教授の三辺正人さんの2人に聞きました。

歯の表面の汚れしか気にしていないと、意外な落とし穴が

――日本人、特にtelling,の読者層にあたるミレニアル世代の女性のオーラルケアの現状と課題を教えてください。

三辺:「口臭予防」や「エチケット」という面から、食べたら歯を磨くという習慣は身についていると思います。ただ歯と歯肉の境目にプラーク(歯垢)が残っていることや、頻繁な間食、甘い飲み物などの摂取により口腔内で菌が増殖し、歯肉に炎症が見られる女性も多くいます。歯肉炎の症状が進行すると、歯周病になります。

浦崎:1日2回以上歯磨きをするなど、歯のケアに力を入れている人は多いと思います。反面、歯の表面的な汚れをとることまでしか教えていないため、口の中全体を清潔に保つオーラルケアへの意識はそれほど高くありません。実は、口腔内には菌がたくさんいるんですよ。

――口の中にはどれくらいの菌がいるのでしょうか?

浦崎:億単位の菌がいるといわれています。たとえば、歯の表面上には1ミリグラムあたり約10億個、歯周ポケット、咽頭粘膜、舌苔にはそれぞれ約1億個など、ものすごい数の菌が口腔内に生息しているのです。菌の増殖を放置すると、歯肉炎や歯周病の原因になります。

口の中の菌は夜中に繁殖する

――衝撃的な数字ですね。菌が一番繁殖しやすい時間帯はいつですか?

浦崎:口の中が乾燥する夜中です。人の唾液には殺菌作用があるのですが、唾液の分泌量が極端に減る寝ている間というのは、菌が繁殖しやすい状態になるのです。菌の繁殖をできるだけ抑えるためには、寝る前と、朝起きてすぐに、口腔洗浄剤を使ってマウスウォッシュをするのがいいでしょう。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのマーケティング担当・浦崎里奈さん

肌のハリつやを気にするように、歯茎の健康もチェック

――20代、30代の日本人女性のオーラルケアで、気をつけたほうがいいことは何なのでしょうか。

浦崎:若い女性は口臭やホワイトニングは気にしますが、その他のオーラルケアはそれほど気にしていない方が多いような印象です。ただ、お肌と一緒で、口の中も老化して、歯周病などになりやすくなります。40代、50代になって「歯がぐらぐらする」といった症状が出て初めて治療を始める方が増えてきます。そうなる前からしっかりケアしておくことが大切なんですよ。

――口の中が健康かどうかは、どうすればわかるのですか。

浦崎:歯茎を見ればわかります。健康な肌は弾力があって血色がいいですが、、健康な歯茎もぷっくりとして健康的なピンク色をしています。

米国、スウェーデンなどオーラルケア先進国のケアは?

――海外では、日本よりもオーラルケアについての考え方が進んでいたりするのでしょうか。

三辺:海外では歯科治療に保険が適用されない国が多くあります。そのため、虫歯と歯周病を予防するために、定期的に歯科医院を受診しますし、毎日のオーラルケアにも比較的多く時間を割く傾向があります。

浦崎:オーラルケア先進国といわれるアメリカやスウェーデンでは予防歯科という考えが徹底していますね。特にアメリカでは、歯磨き、デンタルフロス、口内洗浄液を遣ったマウスウォッシュなどを活用して、自宅で歯のケアをしっかりする傾向があるんですよ。

日本でも、歯医者さんに行くとデンタルフロスや歯磨き指導を行っているところもありますが、マウスウォッシュに関してはまだまだ認知度が低いといわざるをえません。

歯磨きやフロスだけでは、口内の25%しかケアできていない

――歯磨きだけしていれば大丈夫だと思っていました。マウスウォッシュには、どんな効果があるのでしょうか。

浦崎:歯肉炎の予防になります。口の中の菌も1週間放置すると歯石になってしまいますから、殺菌作用のあるものでしっかりとケアすることが大切です。口臭の予防にもなります。

――マウスウォッシュの利用は、口内の健康を保つために必要でしょうか。

三辺:むし歯や歯周病の予防に一番効果的なのは、やはり正しいブラッシングと食生活を含めた生活習慣の改善です。この2つを改善した上でマウスウォッシュを使用することは、非常に効果的ですね。ただ、「マウスウォッシュを使用しているから大丈夫」と考えることは非常に危険です。ここは注意してください。

神奈川歯科大学教授の三辺正人さん

――マウスウォッシュを使うことの利点は何なのでしょうか。

浦崎:歯の表面積は、実は口内全体の表面積の25%に過ぎません。これに対して舌や歯茎、口腔粘膜などの表面積は75%もあります。マウスウォッシュは、この75%をケアすることができます。トラブルの元となる菌を殺したり、歯石の沈着を防ぐことができるのです。

――マウスウォッシュの使い方に、コツはありますか。

歯磨き後にマウスウォッシュで口を1日2回、30秒ゆすいでください。洗濯機をイメージして口全体をゆすぐことが大切です。口の中、唇の裏、頬、歯茎の上、のどを意識してやってみてください。歯ブラシで軽くほっぺの内側を磨く「ほっぺ磨き」などもおすすめですよ。

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