忖度上手になろう 「プロ秘書」に聞く(後編)

「プロ秘書」が忖度のコツを伝授!相手の話を聞くことから始めよう

「カレーハウスCoCo壱番屋」を経営する株式会社壱番屋。その社長秘書を3代にわたって務め、日本秘書協会が選出する「ベストセレクタリー」に選ばれたこともある「プロ秘書」中村由美(60)さんのインタビュー後編です。前編では、「忖度とは」という話を聞いてきましたが、後編では忖度のコツを伺っていきます。

●忖度上手になろう02「プロ秘書」に聞く(後編)

忖度の第一歩は、相手の話を聞くこと

 忖度がうまくできるようになれば、仕事だけでなく人付き合いがぐっと楽になります。一番大切なのは、まず相手の話を聞くこと。忖度は、自分ベースではなく相手ベースで考えなくてはいけません。そのためには、相手の話をフラットな状態で、偏見や決めつけを持たずに聞きましょう。相手がよく知っている人だとしても、思い込みにならないように、心がけています。

 それから、呼び水のごとく、こちらから言葉をかけることも大事だと思います。親しくない人や、ちょっと苦手だなと思う人であれば尚更です。まずはあいさつから。その人のことを知ろうとすること、興味を持つことが忖度の第一歩です。気遣いのしかたが分からないのであれば、気軽に声を掛けてみましょう。やってみて、迷惑そうだったらやめればいい。まずは相手に歩み寄り、理解しようとしないと何も始まりませんからね。

 また、「ありがとう」という感謝の言葉も、人付き合いを円滑にするコツではないでしょうか。「ありがとう」は魔法の言葉。感謝の言葉をかけるということは、「あなたの行為をしっかり見て受け止め、肯定してますよ」という意思表示でもあります。たとえ見ていなかったとしても、認めているということです。人は短所に目がいきがちですから、相手を認めようとプラスの感情で見ることは一種の忖度だと思いますよ。

うまく「引き算」をしよう

 忖度をするうえで注意してほしいのが、忖度がいきすぎて「損得(そんとく)」になってしまうこと。そこで大事なのが、「引き算」です。

 忖度は、自分ベースではなく相手の立場に立って考えることだ、というのは先ほども言いました(詳しくはこちら)。これは、自分の感情をうまく引き算することを意味します。たとえば、「これもやってあげたのに」「せっかく○○したのに」という感情は、その気遣いが自己満足でしかないということ。押しつけになってしまいかねません。自分の感情を引き算し、思い込みの度合いも引き算して、ちょうどいい塩梅で止めましょう。お金や愛情の見返りを求めるのも、自分中心の「損得」の考え方ですよね。

 ココイチのようなサービス業は特にそうですが、良かれと思ってやったことでも、お客さんによっては迷惑だと捉えられることもあります。だから、「せっかくやったのに」と思わないで、「この人はこう感じる人なんだ」と理解して、次は少し引き算してみるんです。ちなみに、「こういう人だから嫌い」まで言ってしまうと仕事にならないので、その前で受け止める気持ちは大切ですね。

苦手な人とは距離をおく

 秘書の仕事をしていると、忖度が得意だと思われるからか、誰とでもうまくやっていけるように見られがち。ですが、そんなことはありません。「損得」で生きているような人、つまり、やってもらうことを当たり前だと思っている人は確かに苦手ですね。

 物事は「2:6:2の法則」が当てはまると私は考えています。人付き合いに当てはめれば、2割は自分と思考が合う人、6割は合うとも合わないとも言えない人、2割は自分と合わない人、という考え方。自分が合わないと思う2割の人と接するときは、「当たらずさわらず」を一定の距離感を意識します。苦手な人とは関わらないというのも、人付き合いにおいては大事なことだと思います。

 実は私、人見知りなんですよ。だから、人がたくさんいるパーティーのような場では、自分からは積極的に話しかけにくくて…。でも、話しかけやすいように常に笑顔でいることは心掛けています。誰とも目を合わせず、もくもくと食事をしていたら印象悪いですから。無理しない程度に、人付き合いを楽しむのがいいと思います。

1990年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒。新聞記者として勤務したのち、中古車メディアの編集として特集制作などの経験を積む。結婚を機に名古屋に移住し、現在はフリーランスとして活動中。趣味は旅行。
忖度上手になろう