産まない人生を考える【読者座談会02】

結婚、子ども…世の中の「当たり前」が、息苦しい。

「産まない」ことを決めて、生きてきた、3人の女性たち。三者三様の悩みをかかえる彼女たちですが、全員、「子どもを産むことが当たり前」という社会や家族からの声に、生きづらさを感じていました。彼女たちは、どう振る舞ってきたのでしょうか。

反響を呼んだ記事「子どもを産まない選択」を読む

  • マミ(39)結婚10年目。営業職で働く。職場でも、「子どもは産まない」と公言している。
  • サチ(38)結婚8年目。20代をアメリカで過ごし、「産まない」ことへの抵抗感は少なかった。結婚直後に実父の介護、夫の単身赴任が重なる。35歳のときに「産まない」ことを決め、独立事業主として仕事に邁進している。
  • エリ(38)結婚5年目。SE。結婚願望がもともと薄く、子どもが欲しいと思ったことがない。今の生活に満足している。

エリ 私、「産まない」と決めて生きている方に会ったの、ほぼ初めてなんです。

マミ わかります。私の勤めている会社には3,000人以上女性従業員がいるんですけど、それでも「産まない」って公言している人に会ったことがない。telling,のこの記事で初めて見たぐらいです。周りからいろいろ言われている記事を描いた女性に、とても共感しました。私も、言われるなあ、って。

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サチ やっと日本でもそういう意見が公に出てきたな、と思いました。私はアメリカに20代で留学していて、当時から私の周りでは「産まないことも女性の選択肢のひとつ」という意見が当たり前にあって、それどころか、今は「産んで後悔した」という本が話題になっているぐらい。でも、日本ではそんなこと言ったら絶対に叩かれるし、言えないなって思っちゃう。

エリ やっぱり言えないですよね。何年か前に女優の山口智子さんが女性誌のインタビューで「子どもをつくらない」と言っていて、それがすごく衝撃でした。

――唐沢寿明さんと結婚し、仲良し夫婦として知られていただけに、インパクトがありましたね。「子どものいない人生を望む」という言葉が、日本中で話題になりました。

エリ 結婚する前は「結婚しないの?」ってずっと言われてたんですよ。それでやっと結婚して解放されたと思ったら、次は「子どもできないの?」って……放っておいてほしいと思います。こういう文化は日本独特なのかな。

マミ そうそう。子どもを持つお母さんに対する尊重というか、大事にしましょうという風潮はあるのに、「結婚して子どもを産まない」意思は、なぜ尊重されないんだろう。

サチ 正直、「ちゃんと働いて税金納めて、国民として義務果たしてるよ」って思ってしまいますよね。ほとんど知らない友だちの友だちから説教されたこともあります。「子どもを産まないなんてありえない、あんたの老後は散々だ」って。

エリ なんて言ったんですか? その人に……。

サチ 「私は夫と2人の人生に満足しているし、自分の考えで決めたから」って言いましたけど、すごくムカムカしちゃいました。

マミ 本当に、「結婚したら当然子どもを産むもの」みたいな考え、やめてほしいですよね。

親からの圧力…それにどう返してる?

――子どもを産まないことについて、親御さんは理解してくださっていますか?

マミ 私は、夫の実家の親戚から「財産泥棒」って言われてるみたいです(笑)。

サチ えっ。

マミ 義実家が資産家で、夫は一人っ子だから、後継ぎがほしいんだと思います。「産んだら1000万円やる」と言われたり、安産祈願のお守りが送られてきたこともあります。

――ドラマみたいですね……。自分のご両親からは?

マミ 聞かれても、「うーん、そうだねえ」ぐらいでかわしてますね。結婚してから10年、私たち夫婦はずっとセックスレス。そんなことは、親はみじんも想像していないと思います。

エリ 私は、両方の親から「孫が見たい」「子どもつくらないの」って、すごく言われます。私も主人も、なぜか兄弟姉妹のどの夫婦にも子どもがいないんです。双方の実家とも「孫」がいない状態なので、肉体的に可能性があるように思える私に、なおさら言うんだと思います。
自分の親には「子どもが好きじゃない、苦手」と正直に言ってるんですけど、納得できないみたいで。

女友だちと話が合わなくなった

――「子どもを産まない」ことについて、女友だちからの反応はどうですか?

エリ 直接何か言われはしないですけど、ライフステージの異なる数人で集まると、子どもの話がやっぱり多くなりますね。でも、私はもともと「子どもをほしい」と思ったことがないせいか、本当に、どうにも興味が持てないんです。「つまんない」って思ってしまう。

マミ わかる。

エリ 一方で、仕事の人と飲みに行ったときは、おいしいお店や映画の話をして、すごく楽しいって思えます。そこに「自分がある」というか……。子どもの話が中心だと会話がかみ合わなくて、今は距離を置いています。

マミ 私も、特に子どもを産んで専業主婦になった友だちと話すと、全然違う世界になっちゃったなって思うし、だんだん疎遠になっていきますね。でも、社内で育休から復職したママさんとは気兼ねなく話しています。話題は基本、仕事のことなので、違和感を感じないんだと思います。

年月が経つにつれて、気の合う長年の友だちでも、価値観や、そのとき大切にするものが変わってくるのは当たり前。世間や社会の目はあっても、同じ女性同士、それぞれの生き方をもっと認められるようになるといいのにー-。これまでほとんど表に出なかった「産まない」選択をした女性の本音を聞いて、編集部はその思いを強くしました。
そしてもう一つ、産まないことを決めた彼女たちが口にしたのが、「いつかは育ててみたい」という願い。次回は、「産まずに子どもを育てる」について考えます。

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