産まない人生を考える【読者座談会01】

「産まない」ことは「生産性がない」のか。いつもその思いが胸にある

telling,に掲載された記事、「子どもを産まない選択」には、多くの反響がありました。 「よくぞこういう意見を言ってくれた」 「産まないと決断したけど、他の人に言ったことがない」…。 読者の声から、まだまだ、産まないことに、理解が得られない現状が感じとれました。そこで今回、実際に「産まない」と決め、編集部に意見を寄せてくれた女性3人に、その胸のうちを聞きました。
  • マミ(39)結婚10年目。営業職で働く。職場でも、「子どもは産まない」と公言している。
  • サチ(38)結婚8年目。20代をアメリカで過ごし、「産まない」ことへの抵抗感は少なかった。結婚直後に実父の介護、夫の単身赴任が重なる。35歳のときに「産まない」ことを決め、独立事業主として仕事に邁進している。
  • エリ(38)結婚5年目。SE。結婚願望がもともと薄く、子どもが欲しいと思ったことがない。今の生活に満足している。

telling,編集部(以下――)みなさんは、どうして「産まない」と決めたんですか?

私が産まないと決めたのは…

マミ 10年間の結婚生活で、1回しか夫婦生活がないんです。
結婚前から長く付き合っていて、“家族”になってしまって。だから当然、子どもをつくるっていう発想にもならないというか……。

――旦那さんは子どもについて何か言っているんですか?

マミ 夫は13歳上なので、もう50代。結婚当初は、「俺も子どもが欲しい」って言われて、話し合いもしたんですが、うやむやにしちゃったんです。
この間、ソファに座って一緒にテレビを見ているときに、「今となっては、子どもはもういいよ。成人したときに70歳を過ぎるしね」と言われました。申し訳ないな、という気持ちはずっとあります。

――「妻だけED」という言葉もありますが、女性でも、パートナーに対して性的感情がわかない、ということってあるんですね。女性としては、それで満足……なんでしょうか。

マミ いえ、恋愛はしていて。こんなことを告白したら軽蔑されると思いますが、実は私、4回中絶してるんです。

一同 えっ。

マミ 浮気相手の子どもです。「いつ罰が当たるんだろう」って考えたりもします。

エリ ……別れて産む、ということは考えなかったんですか。

マミ それはなかったです。ばれてもいないと思います。旦那さんのことは大切で、すごく好きなのに、彼にだけ性欲がわかないんです。もし万が一、旦那さんとの間に子どもができたら、これまでの私の業みたいなものが、全部その子に集約されちゃうんじゃないか、と怖くて。だからなおさら、子どもは絶対いらない。自分が産むのは想像できないです。

サチ ……。うちは、夫は子どもを望んでいたかもしれないけれど、私が最終的に「産まない」と宣言しました。私はアメリカで20代を過ごして、子どもを産まずに、生き生きと働く自立した女性を見てきたんです。最初からそんなに家庭に情熱がなかった気がします。

エリ 最初から産まない、と決めていたんですか。

サチ いえ、そうではないんです。縁があって結婚して、子どもをもつことも真剣に考えていました。ただ、親の介護や夫の単身赴任もあって、30歳で結婚してからあっという間に時が過ぎて。34歳くらいのときは本当に、本当に辛かった。産むか産まないかですごく揺れていて、もし産んだら仕事はどうするのか、とか……。私の住む地域は保育園の待機児童が多くて、公の施設に預けることはほぼ不可能、ということも調べて、成人までにかかるお金もシミュレーションして。

マミ すごく調べたんですね。いくらかかるんですか?

サチ 2000万円くらいはかかります。子どもが留学を望んだら、自分も留学したように経験させてあげたい。でも、そうするともっとお金がかかるし、保育園に入れず共働きできなければ経済的に難しいかな、とか。
 もやもやしたまま過ごしたくなくて、夫と話し合って、35歳の誕生日ぐらいに「産まない」と決めたんです。そうしたら、すごくスッキリして、自分でもびっくりしました。

エリ 私は、「子どもを産むか産まないか」では悩んだことはない気がします。夫とはとても仲良しで、性生活もあって避妊もしたことがないけれど、妊娠しない。それでいいという感じです。

マミ もし、妊娠したらどうするんですか?

エリ 産むかもしれません。でも、たぶん子どもができにくい体なんだと思っていて、可能性は低いと思っています。もともと子どもが全然好きじゃないというか、そもそも「ほしい」と思ったことがないんです。主人とは明確に子どもについて話したことはないんですが、今はお互い趣味を楽しんでいるし、この生活を崩したくないよね、という暗黙の了解がある感じです。でも、「母性が足りないのかな」と悩んだこともありました。

――同じ「産まない」と決めた3人でも、「夫との行為そのものが苦痛」「産むか産まないか」「欲しくない私はダメなんじゃないか」と、様々な苦悩があるんですね。

 三者三様の思いをかかえ、人生を歩んできた女性たち。でも、三人が共通で感じていたことがありました。それが、「社会と家族の目」。次回は、「子どもを産むことが当たり前」という外からの目に、彼女たちがどう振る舞ってきたのかを伝えます。

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