産まない≠子どもをもたない。「産まないけれど、母になりたい」
反響を呼び、座談会開催のきっかけになった記事「子どもを産まない選択」を読む
- マミ(39)結婚10年目。営業職で働く。職場でも、「子どもは産まない」と公言している。
- サチ(38)結婚8年目。20代をアメリカで過ごし、「産まない」ことへの抵抗感は少なかった。結婚直後に実父の介護、夫の単身赴任が重なる。35歳のときに「産まない」ことを決め、独立事業主として仕事に邁進している。
- エリ(38)結婚5年目。SE。結婚願望がもともと薄く、子どもが欲しいと思ったことがない。今の生活に満足している。
養子縁組、という選択肢もアリだと思う
サチ これまで「産まない」ことについて話してきましたけど、「子どもをもたない」と決めたわけではないんです。アメリカに住んでいたときは、人種も価値観も本当に多様で、「産まない」ことが不自然だと思わなかったし、養子を迎える人もけっこういました。
マミ ああ、わかる。私も以前フランスに留学していましたが、養子を迎えてる人や、「自分は養子なんだ」と言ってる人もごく自然にいましたよ。自分でも、もう少し年を重ねて「仕事はもういいや、子育てしてみたい」って思ったら、養子をもらうのもいいかなあ、と思ったりします。
サチ 養子って自分の意思で決断できますよね。出産にはリミットがある、というけれど、必ずしも「産みどき」と「産みたいとき」が一致するわけじゃない。私も子育てできる環境――金銭面や、預けるインフラが整ってチャンスがあれば、養子もありかなって思います。親元で暮らせない子をいい環境で育てることは、社会のためにもなるでしょうし。
エリ 私は、養子は考えられないです。やっぱり子どもが苦手だなって思うので。
マミ そう決めているなら、全然いいですよね。私ね、意外と子ども好きなんですよ。でも、それはペットに感じるかわいさみたいなものなのかな、とも思いますけど。
「孫ショック」が来るかもしれない!?
サチ 私は、今は「産まないの?」という周囲のプレッシャーとはうまく折り合いをつけられるようになったんですけど(前回記事参照)、今不妊治療を経験のある、子どもがいないイギリス人女性が書いた本を読んでいて、気になっていることがあるんです。「さらに歳を取ると、孫がいない状況に悩む、孫ショックが来る」というようなことが書かれていて。
エリ 孫ショック!?
――子育てがひと段落した後に、今度は周りが孫の話ばかりしたり、「孫がいないの?」と聞かれるということですね……。そもそも子どもがいなければ、孫はいないから、自動的に孫ショックの潜在層になる、と。
サチ はい、そうです。それ以来、ちょっとそわそわしちゃってます。
エリ そんな先まで、プレッシャーや「こうあるべき」が待ち受けているとなんて、なんか憂鬱だなあ……。
年齢、環境……もっと多様性があっていいのに
――ここまでいろいろ話してきましたが、改めて「産まない」ことについて思うことを教えてください。
マミ なんていうか、産まない決断をしたというよりは、「自分の遺伝子を残したいと思うタイミングが今じゃない」のかなと考えることもあるんです。でも、産める時期は限られている。女性も仕事をする時代だし、いろんなことから選び取らなきゃいけないなあと感じます。
本当は子どもを産む、産まないだけじゃなくて、養子を迎えるとか、もっと選択肢がたくさんあってもいいのに、と心から思います。
サチ 社会からの圧力みたいなものがなんとかならないのかな、って思います。結婚できるのは何歳までで、産めるのは何歳までだとか、「こうあるべき」から外れると叩かれる。生きづらい世の中だなあと。
エリ 結局今の日本って、子育ては女性への負担がすごく大きいですよね。家事も仕事もあるし、女性にばかり大変なことがのしかかってくる感じで。負の側面が見えすぎてて、産むことへのハードルがすごく高い。
正直、子どものいる友だちの話を聞くと「夫が協力的でない」とか「眠れない」とか「つらい」ばかりで、全然うらやましいと思えないんです。
――その先に、子育ての喜びももちろんあるんでしょうけどね。
サチ 誰にだって子どもができない可能性とか、世間が思う“理想”的な人生にならない可能性はあるのに、どうして立場や生き方が違う他の人を叩くのか、って思います。叩いて得になる人なんて誰もいないのに、日本はみんなで不幸になる道を進んでる気がする。
マミ そうそう。もっと社会として寛容さがあっていいよね。
3人とも、自分の仕事にも生き方にも誇りを持っていて、「自立した」女性のあり方を見せられた思いでした。そして、そんなすてきな女性たちでも、世間や親族からの目を気にし、子どものいる女性とのコミュニケーションに葛藤している。産まないことを選んだ女性も、そして産んだ女性もきっと、それぞれ日々悩み、「ありたい私」でいたいと考えている。結論はでないけれど、telling,は、今を生きる女性たちの本音を伝えていきたいと思います。
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