【古谷有美】男性はどうすればモテる? 映画「モテキ」大根仁監督の答えは?
●女子アナの立ち位置。
若い20代、30代前半の男子はどうすればモテる? 映画「モテキ」監督の大根仁さん「もう仕事するしかないでしょう」
毎月、違う女の子とデートするという生活をずっと送っている映画監督・大根仁さん。(理由は対談記事で明らかに)
今回、「おじさんとガール」というテーマでイベントをやると決まったとき、真っ先にゲストとして名前が浮かんだ方でした。
大根監督の作品には、オトナになり切れないボーイズ&ガールズの悩みや吹っ切れる瞬間を絶妙に投影してくれるものが多くて、どんな20代、30代を過ごしてきたんだろうとすごく気になっていた「おじさん」(監督、すみません!)です。
そんな監督とようやく初対面できたトークイベントの内容を、コラム特別編として前編・後編にわけてお送りしたいと思います。
前編では、これまでの作品の話からガールズに思うこと・仕事論まで聞いてみました。途中では、悩める男子たちへのアドバイスも飛び出しました。
大根監督に会うと、大抵のガールズはお悩み打ち明けモードになる?
古谷有美(以下、古谷):「ガールを描いたら大根さんの右に出る人はいない」と前々から思って作品を拝見していました。
大根仁(以下、大根):自分の作品で俳優さんに演じてもらうときはちょっと面倒くさいキャラの子が好きです。”振り回されたい願望”が若い頃からあって、仕事でもかなり残っていますね。でも今年で50になるのでそんなに振り回されても困るかな。
古谷:映画やドラマ制作の一方で、雑誌「POPEYE」では、「東京タイアップデート」というタイトルで、毎月違う女の子とデートするコラムを長年連載されていますよね。
大根:POPEYEには、全体に女の子の要素が少ないなと思って、思いつきで「俺が毎回女の子とデートをしてレポートするというのはどうですかね」と提案したんです。
古谷:会社の広報・PRを担当している女子たちが大根さんとデートをするという企画なんですけれども、彼女たちは会社の PR ができて、大根さんはいろんな女子とデートができるという、みんながハッピーな企画(笑)。
大根:待ち合わせの場所まで編集者が立ち会いますけど、後は二人きり。それも条件でした。プロのカメラマンなどの撮影が入ると、ちょっと冷めてしまうかなと。俺の唯一の才能というか、会って30分ぐらいで相当ぶっちゃけた話を相手が打ち明けてくれるという特殊能力があるんです。待ち合わせて(コラム取材を兼ねた)食事に行くタクシーに乗った途端に、「実は不倫してしまって…」とか。
古谷:そういう話をしても「それは駄目だよ」とか言われない気がします。
大根:全部肯定しますね。「そうかそうか」って(笑)。
古谷:女の子って誰かに相談するときには、答えが出てるんですよね。それほど確信的な助言が欲しいわけじゃない。
大根:ただ聞いてもらって楽になりたいんですよね、きっと。俺とかは、ちょうどいいんじゃないですか。ぬいぐるみに話しているみたいなものなんじゃないかと(笑)。
映画「モテキ」のあのセリフは実体験から
古谷:大根さんの作品に登場する女の子のキャラクターは、今まで出会ってきた人が反映されてるんですか?
大根:完全に反映されています。「モテキ」という作品は、原作もありますが、自分の過去の恋愛失敗経験や思い出がふんだんに取り込まれていますね。特に映画の方は。
終盤、(森山未來さん演じる)幸世が、(長澤まさみさん演じる)みゆきちゃんに振られるシーンで「私、幸世くんじゃ成長できない」と、男だったら全員打ちのめされるセリフが出てくるんですが、それは実際に言われたセリフです。幸世と同じ30歳くらいの時でしたね。
古谷:そうだったんですか・・・!
大根:この話には続きがあって。ドラマ版の「モテキ」が放送されていた頃に「成長できない」と俺を振った彼女から久々に連絡がきて、会うようになったんですよ。
当時お互いフリーで、ひょっとしたらまた……なんて思いながら映画の脚本を書いていたので、このセリフが浮かんだ。
でも、その時期に脚本が書けなくなってしまって。たまたまその彼女と食事する機会があったんですが、「もう一軒行こうか」と誘ったらきっぱり断られてしまった。それで、ちきしょうって仕事場に戻って仕事して、続きが思い浮かんだんです。幸世は振られたら仕事場に戻って原稿を書くんだって(笑)。
仕事がどん底を救ってくれることがある
古谷:切ない青春……でも、仕事に助けられてる部分もあるんでしょうね。
大根:よく20代、30代前半の男の子に「どうすればいいか、モテるのか」って、もうぶっ飛ばしたくなるようなこと聞かれますが、「もう仕事するしかないでしょう」と言います。それが答えです。
古谷:それは若い時から思っていらっしゃることですか?
大根:高校生の頃、近所の中華料理屋さんでアルバイトしてたんです。過酷な労働条件だったんですけど、最初のバイト代をもらった時、「俺は働いてお金もらうために生まれてきたんだな」っていう勤労の喜びを知ったんです。それが今につながっていますね。
「いい仕事して死んでいってもいい」なんて言うと、このご時世ではブラックだなんて受け止められるかもしれないけど、生きていく基準として、ちゃんと仕事してるという時間があって、それがないと楽しめないと思うんです。
仕事って99%は辛いです。でも残りの1%に楽しいことがある。俺も、これだけこの仕事を続けていると、いろんなパターンも見えてきますが、たまに想像しなかったようなカットが出てきたり、編集がうまくつながったりという瞬間があるので、それで全部払拭されているところがあります。
映画「SUNNY」についても語られた対談の後編はこちらから!
●大根仁(おおね・ひとし)さんプロフィール
1968年東京生まれ。2010年「モテキ」の演出・脚本・撮影を担当。15年、監督・脚本を担当した映画「バクマン。」公開。同作で、日本アカデミー賞優秀監督賞、日本映画批評家大賞・監督賞を受賞する。17年、監督・脚本を担当した映画「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」が公開。「SUNNY 強い気持ち・強い愛」が公開予定。
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