花屋さん、今日はどのお花がおすすめですか。03

花屋さん、今日はどのお花がおすすめですか。 ―テッセン-

そこにあるだけで、癒しをくれる花。贈りものとしての役割が大きくて、ついつい“特別なもの”と思ってしまいがちですが、たった一輪、暮らしの中に飾るだけでいつもの空間がやさしくなる気がします。花のある“ちょっと幸せ”な日々。そんなフラワーライフをお助けしてくれるステキな花屋さんをお訪ねして、おすすめの花をお聞きしていくコーナーです!

●花屋さん、今日はどのお花がおすすめですか。03

創業100余年、竹工芸の老舗で

 そこは「竹清堂」(ちくせいどう)という、1907年(明治40年)創業の由緒ある竹工芸の店。竹を選び、細く割るところから編み上げ工芸品とするまで、真摯に向かい続けて100余年。代々伝統と技を受け継いできたその場所に2017年、「花 竹清堂」が生まれたのをご存知でしょうか。

 店内には三代目である田中旭祥(たなか・きょくしょう)さんと、息子さんであり四代目でもある茂樹(しげき)さんたちが作り上げた美しい竹の工芸品や、暮らしの竹道具が品よく並びます。

 青竹の足付きザル。足がついているので水切れがよく、果物入れとしても最適だそう。置いてあるだけでも絵になる!

 竹と思えないほどのシャープな黒と繊細極まりない編み込みに、職人さんの技を感じます。

 こちらは四代目の茂樹さんによる竹のあかり。ご希望にあわせて特注でも作ることができるそう。

 そんな竹の品の合間にセンスよく配された花々は、ただのディスプレイではなく購入もできます。この花の部門こそ前述の「花 竹清堂」なんです。

 バイカウツギ、コバノズイナにフタマタイチゲ―あまり花屋さんではメインにならないようなラインアップが、ここでは主役。

 しかも、どの植物も伸びやかで…まるで野山から摘んできたかのような素直な表情にグッときます。

 これらの花や枝は、おもに栃木の那須や愛知の花農家さんから毎週届くものです。伸び伸びとした環境で育った花たちだからこそ、この自然な姿!  

偶然のめぐり会わせ

 そもそも、どうして「花 竹清堂」ができたのか。まさにそれはめぐり会い。東京で花のアトリエに勤めていた田中亜希子(あきこ)さんが、そのアトリエしごとがご縁で四代目である茂樹さんと出会い、2014年に結婚されたことがきっかけでした。

 店の入り口で微笑む亜希子さん。さわやかで、いつもフラットに接してくださるので、こちらも自然体でいられます。

 亜希子さんはもともと会社勤めをしていましたが、昔から花が好きだったこともあり、一念発起してフラワースクールに通いはじめました。スクール修了後は都内の花屋さんに勤め、2012年から挿花家・谷 匡子(たに・まさこ)さんの花のアトリエ「doux.ce」(ドゥセ)へ。そこでご主人となる茂樹さん、さらには花農家さんをはじめいろいろな出会いがあり、そうしためぐり会いがつながり「花 竹清堂」が誕生しました。

 店舗での販売のほかに、毎月季節の花を届ける定期便や、花のギフトも手がけています。

 定期便に同封している手描きのお手紙。届く植物のイラストと紹介があって、植物好きにはたまりません〜!

 さて亜希子さん、今日のおすすめの花はなんでしょう?

今日のおすすめは「テッセン」!

 テッセン、漢字では鉄線。クレマチスとも呼ばれる初夏を彩る花のひとつです。少しうつむき加減に咲く姿は趣があり、ゆるやかで細い茎や蕾までも、すべてが儚げで美しい。

 葉脈も細かくてきれいです。

 亜希子さんが取り寄せるテッセンは愛知の花農家さんのもので、5月ごろの一番花から、二番花、三番花と、品種によっては10月ごろまで長い期間花を咲かせます。100品種以上育てている花農家さんからは毎回違うテッセンが届き、荷を開くのが愉しみでならないそうです。

 テッセンは茎のラインも魅力的なので、シンプルに生けても様になります。ご主人の茂樹さんが作られた竹の花かごに、バイカウツギの蕾とあわせて。

 この少し恥ずかしげな表情、奥ゆかしいです。

 掛け花かごに一輪生けても映えます。

 淡い色味も心地よい。

 これ、蕾じゃないんですよ。これで咲いているんです。ベルテッセンという種類のテッセン。まさに“ベル”な形がキュート!

 小さく生けてもかわいらしい。白いフタマタイチゲ、銅葉のディアボロといっしょに。

 棚の中にちょこん。枝垂れるフォルムが優美。

 テッセンを生けるときは、花の向きに気をつけるといいそうです。花が下を向き過ぎると元気なく見えてしまうことも…。

 茎の向きを少し変えるだけで、花の向きも変わります。花がいちばん美しいと思える向きで器にそっと入れてみてください。茎があまりにやわらかすぎる場合は枝などで支えてあげるといいそうですよ。

 「テッセンを飾っておくだけで幸せ」と亜希子さん。帰り際に1本いただいたテッセンを家で飾ってみたら、その言葉の意味がわかりました。初夏になったらテッセン。1年の楽しみが増えました!

 亜希子さん、ステキな出会いをありがとうございました!

編集者。台湾に心奪われ隙あらば旅に、あげく勤めていた出版社を辞めて台北に語学留学。台湾や植物関連の書籍制作に携わる。ラブ台湾、ラブ植物!