本という贅沢。

欲情されてもされなくても苦しい。“女子”の生きづらさ。

毎週水曜日にお送りする、コラム「本という贅沢」。新年度の始まる4月。新しい仕事、新しい出会いの中で自分自身を見つめる機会も多くなるのではないでしょうか。4月のテーマは「自己肯定感」。自分を好きになるためのヒントがつまった一冊を、書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんが紹介します。
『女子をこじらせて』―雨宮まみ:著(幻冬舎文庫)

「最近の若い女の子は、みんな漠然とした生きづらさを抱えている」
ある女性誌の編集長が言っていた言葉です。

確かに、私が担当する書籍の読者の声を聞いていると、自分の価値は何なのかと悩んでいる女性が多いと感じます。

そのことをデータや実験で示したのが、前回紹介した『なぜ女は男のように自信をもてないのか』
だったとしたら、その生きづらさの理由を解き明かそうと、自分の人生を赤裸々に開示して分析していったのが、今回紹介する雨宮まみさんの『女子をこじらせて』です。

男性から求められる自分でありたい。でも、それは性の対象として求められたいんじゃなくて、自分らしさを愛してもらいたいだけなんだ。だから「女」を売りにして男性に愛されたくはない。でも悲しいかな、「女」は自分の一部でもあり全部でもある。「女」を否定することは、自分を否定することになる……。

 つまり、女子が生きづらさを感じる理由のひとつは、「女性性」とうまく折り合いをつけられていないからではないかと雨宮さんは気づきます。

それを端的に示したのが「女子をこじらせて」という言葉でした。

この本のすごいところは、単に「ある女性の葛藤の物語」で終わらないところ。

 不思議なもので、雨宮さんの内臓の裏側まで分析するような凄まじい「当事者研究」の物語を読んでいると、私たちももれなく、自分自身を研究し始めてしまうんです。

 私自身も、「あのときの違和感はそういう理由だったか」とか、「あの言葉に私は傷ついていたんだな」とか、自分で蓋をしていた過去を思い出すことができました。
なんだ、私だって、結構な勢いで女子をこじらせていたんだなあと気づくこともできました。

これもまた不思議なもので、過去に自分が傷ついたことを思い出し、その理由に気づくことができると、なぜか今の自分が楽になったり、自分に優しくなれたり、自分を好きになれたりするものなのですよね。

ひょっとしたら、人からも愛されたいけれど、本当に愛されたい相手は自分だったんだな、ということに気づいて、自分で自分を癒せるからかもしれないです。

個人的におすすめなのは、

・ピンクの服やネイルに抵抗感を感じる
・モテ髪やモテ服という言葉に嫌悪感を感じる
・男性にちやほやされる女性が嫌い、もしくは羨ましい
・自分なんかが「綺麗になろう」なんておこがましいと思ってしまう
・恋人ができると「私なんかを好きになってくれてありがとう」と尽くしてしまう
・逆に「私なんかを好きになるなんて見る目がない男」と蔑んでしまう
・そしてそんな自分が、あまり自由じゃないなと感じる

こんな人たち。

1つでも当てはまる人は、私同様、自分の「女性性」をもて余して、「なんだかわからないけれど生きづらいな」と思った経験があるのではないかと思います。この本に触発されながら、自分研究をしてみたら、今より自分を好きになれるかもしれないですよ。

  • 単行本と電子書籍はポット出版から出ていますが、文庫版あとがきの「『こじらせ女子』をこじらせて」と、上野千鶴子さんの解説の両方がとても面白いので、文庫版をおすすめします。単行本で読んだ人や、流行語としての「こじらせ女子」だけを知っている人は、このあとがきを読むとハッとする発見があると思います。

では、また来週水曜日に。

続きの記事<女子が生きるために必要なことは全部「素ちゃん」が教えてくれた>はこちら

ライター・コラムニストとして活動。ファッション、ビューティからビジネスまで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『髪のこと、これで、ぜんぶ。』『書く仕事がしたい』など。
佐藤友美