【編集長コラム】「29歳問題」と「39歳問題」 それぞれの悩みの形

「telling,」には「あなただけに言うね」という意味があります。結婚、妊娠、キャリア……。ライフステージの変化を迎える女性の多様な生き方、価値観を伝え、自分らしい一歩を共に考えるメディアです。柏木友紀編集長のコラムをお届けします。
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「女が最高値で売れるのは27」。大ヒットドラマ「やまとなでしこ」のセリフではないが、女性の“売れ時”は様々に語られてきた。「クリスマスケーキ(24まで)」と言われたかと思えば、「29歳のクリスマス」というドラマもあったか。

telling,の特集「29歳問題」では、結婚やキャリアといった生き方と年齢にまつわる女性の思いをまとめてきた。そして、次に女性たちが直面するのが「39歳問題」。この特集をひもとくに、それまでとは少し様相が異なるようだ。

いまNetflixで話題のドラマ、その名も「39歳」は、愛と人生、そして突然襲ってきた悲しみに、仲良しの女性3人が強い絆で立ち向かう姿を描いている。

ドラマを見てこのころを振り返ったフリーライターの独身女性(43)は、10年間を共にした恋人と別れた39歳当時の思いを当サイトにつづった(ドラマ『39歳』が教えてくれた幸せ 銀座でひとり鮨を食した40歳の誕生日)。40歳の誕生日は銀座で初めての「独りずし」を食べ、店を出て夜風に触れた瞬間、30代を遠くに感じた。子どもを持つ人生は手放したが、「30代でこの問題にしっかり向き合った」という、悩んだ末のすがすがしさもあったと話す。

一方、女性会社員は39歳だった昨年、卵子凍結に踏み切った。以前は病気などの場合に限られていたが、最近は健康な女性が将来の出産に備える例も広がる。パートナーはいないが「何もせず40歳になるよりは、少しでも将来子どもを持つ可能性がある選択肢を、自分の意思で選んでおきたい」と取材に語っていた(39歳で卵子凍結 自分の手で人生を切り開く選択肢を手に入れた)。

「29歳問題」が、年齢への外形的見方と生き方の多様な選択肢の悩みとすれば、「39歳問題」は出産という生物学的制約と限られた選択肢への悩みと言える。女性の人生とは、究極の分岐点を通過しなければならないのだと改めて考えさせられる。そして、その先もはたして――。

2023年3月29日朝日新聞夕刊掲載】

(写真:Getty Images)

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telling,編集長。朝日新聞、AERAなどで記者として教育や文化、メディア、ファッションなどを幅広く取材/執筆。教育媒体「朝日新聞EduA」の創刊編集長などを経て現職。TBS「news23」のゲストコメンテーターも務める。
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