婚活を始めて1年半。29歳の誕生日を目前に“コロナ禍婚活”をやめたワケ

将来を考え、20代で婚活をはじめた内海ほのかさん(仮名・28歳)。コロナ禍の婚活はこれまでのようには進まず、内海さんは29歳を目前に婚活をお休みすることを決断します。真面目で堅実な彼女はなぜ、今のタイミングで婚活をやめたのでしょうか。

婚活は“平均以上”の人生を手に入れるための手段

内海ほのかさん(仮名・28歳)が婚活をスタートしたのは約1年半前、27歳の時のことでした。周りから見れば少し早めの段階で本気の婚活をはじめたのは、彼女の中にある野望があったから。

「小さな頃から負けず嫌いで見栄っ張りだった私は、なんでも平均より少し上、みんなよりは優れている自分でいたいという気持ちがありました。北関東の田舎育ちだったので、偏差値55を超えるくらいの高校に行けば、地元では平均以上をキープできます。でも、実社会に出てみると、Cラン大学出身では、平均以上の稼ぎ、平均以上の幸せを得ることはできません。

顔も頭脳も平均だったからこそ、恋愛では高望みをしていたように思います。高学歴、高収入、高身長……どれかが平均以上の恋人、そして結婚相手に出会いたいと思っていました。なぜなら、それが私が今から“平均以上”の人生に下剋上する方法だったからです。話上手な性格とコミュニケーション力が幸いして、“平均以上の恋人”に困ったことはありませんでしたが、結婚には至らず1年ほどで別れる、ということが続き、27歳で婚活を決意しました」

内海さんが婚活アプリと結婚相談所に登録したのは2019年11月のこと。それから5カ月後、新型コロナで世界が一変してしまいました。

「入会した結婚相談所のカウンセラーさんには、高望みがすぎる、不必要な理想が多すぎる、もっと妥協した方がいいなどアドバイスされました。まともに活動できたのは最初の数カ月だけでしたが、データマッチングで全国の婚活男性を探しても、私が思うような“平均以上”の男性はほとんどおらず、いても地方在住だったりと非現実的な人ばかり。たしかに高望みをしていたのかもしれません。

そのうちに緊急事態宣言が発令され、お見合いやデートもオンラインになって、まともに活動できない状況が続きました。結局オンラインデートでは楽しいと思えるような交流はなかなかできず、妥協点も見つけられないまま、時間だけが過ぎていきました」

内海さんによると、コロナ禍の婚活現場では、オンラインでのお見合いやデートが推奨されることが多いそう。実際に、安くはない資金を投入しているのに、思うように進まない婚活にしんどさを感じている婚活女性は少なくないでしょう。

SNSの婚活アカウントで、他人と比較してへこむ日々

コロナで人との交流が閉鎖的になったこともあり、内海さんはSNSに「婚活アカウント」を作成します。婚活アカウントでは、匿名で婚活報告をしながら、同時期に活動する婚活女子と交流したり、恋愛やデートのテクニックを共有したりしています。

「SNSの婚活アカウントを見ていると、私と同じように無駄な時間を過ごしているという人もいれば、こんなご時世でも“素敵な”男性と入籍できた、という報告も見かけます。SNSの婚活アカウントの女性たちは顔出ししていない人が多いのですが、入籍報告をしている人たちは「きっと美人なんだろうなあ」という人ばかり。女子力コーデを着こなして、美容への意識も高くて……。顔が見えていないからこそ、想像ばかり膨らませて、また自分と比べてしまいます。平均でしかない私は、結局婚活アカウントでも幸せアピールはできないんだなって……」

結局、2020年の内海さんの婚活は、新型コロナに翻弄されるばかり。やきもきする気持ちから、SNSを通して見える他人の幸せを羨んでは落ち込むという悪循環に陥ります。婚活開始から1年が経っても、結婚したいと思える男性とは出会えませんでした。

「中小企業で働く私にとって、婚活にかかるお金は安くはありません。でも、2021年に私は29歳を迎えます。こんな世の中でも婚活を続けるべきなのか、それともお休みするべきなのか、ずっと悩んでいました。

そもそも私自身、結婚が向いているのかすらよく分からなくなってきていました。もともと結婚願望が強いわけではなく、周りからはみ出すことが嫌だから、早めにレールに乗ってしまいたかった。でも、コロナ禍で婚活を続けながら、カウンセラーや婚活アカウントの意見に振り回されることに疲れ果てている私もいました」

先の見えないコロナ禍婚活。2年目の年会費を支払って半年ほど経った2021年春――内海さんは「婚活をやめる」ことを決意しました。

29歳を目の前に、婚活をやめた理由

もうすぐ29歳の誕生日を迎える内海さん。結婚相談所と婚活アプリは退会、婚活アカウントも削除し、今は恋活系マッチングアプリで恋人探しをしているそう。

「将来を堅実に考えてきたからこそ、29歳、そして30歳を迎えて焦る自分を見たくありませんでした。結局は婚活アカウントで周りと自分を比べて、焦燥感に満ちていたし、とにかくつらかったんです。

昔から夏休みの宿題は7月のうちに終わらせるタイプだった私は、いつだって2、3歩先を考えて行動してきました。先を考えて行動することが私自身に幸せをもたらすと思っていたけれど、ちっとも幸せを感じていないことに気づいて、一度婚活をやめてみることにしました。年齢的には、結婚、出産ラッシュが来ていて、周りの友人はどんどん、前に進んでいるように見えます。でも、不思議と婚活していた時よりも焦りはありません。たぶん私は“努力しているのに、周りの人に追いつけない自分”がなにより辛かったんだと思います」

内海さんは将来と真面目に向き合うことで、いつの間にか完璧な理想を追ってしまっていたのかもしれません。

「努力することをやめてみたら、不思議と肩の力が抜けるような感覚がありました。他人から「よく考えすぎ」、「がんばりすぎ」と言われがちな人生でしたが、ずっと“努力をやめることが怖い”と思っていました。いざ投げ出してみても、ストレスを感じることはありません。むしろ、普段の自分がいかにストレス過多だったかということに気付かされました。

両親のためにも、早く子どもが欲しいと思っていましたが、両親に婚活を止めたことを報告したら「焦ることはないと思うよ」と言ってくれました。一人で焦って、早く結婚しなくてはいけないと思いこんでいただけだったんです。それを認めてみたら心が軽くなりました。市場価値や適齢期という言葉に振り回されず、これからはもっとカジュアルに、まずは自分が好きになれる人を探してみようと思っています」

婚活や恋愛の様式もコロナをきっかけに少しずつ変わってきています。これまで信じてきた考え方やあり方を変えるのは、簡単なことではないかもしれません。でも、こんな時代だからこそ、今までとは違う方法がフィットする可能性もあるのではないでしょうか。

 

1992年生まれ・フリーライター。広告業界で絵に書いたような体育会系営業を経験後、2017年からライター・編集として独立。週刊誌やWEBメディアに恋愛考察記事を寄稿。Twitterでは恋愛相談にも回答しています。
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