決め手は「すぐに一緒に住める人」。29歳女性がコロナ禍に半年で結婚を決めるまで

大学卒業後、自由気ままなキャバクラ勤めを始めて、昨年29歳を迎えた前村ゆかりさん(仮名)。コロナ感染が広がるなかで、収入も減り、このままでいいのかふと不安を感じたそう。そこで始めた、転職活動と婚活。婚活を始めて6カ月で結婚することができた理由を聞きました。

前村ゆかりさん(仮名・29歳)は、コロナ前までは東京の夜の街を生きるキャバクラ嬢でした。学生時代はミスキャンパスにも出場した経験があり、その美貌とポテンシャルを活かせたのが「キャバクラ」だったといいます。昨年のコロナ感染拡大で、夜の街の業績は悪化傾向に。そこで前村さんが決断したのは「結婚」でした。

ミスキャンファイナリストから自由気ままなキャバ嬢に

「東京出身で、高校時代はギャルモデルをしていたこともあり、進学先のCラン大学でミスキャンに出場しました。賞は取れませんでしたが、周りのミスキャンの友だちは芸能に進む子も多くて、私もなんとなく“普通のOL”にはならないのかもと思っていました。だからって、何か特別な存在になれるほど秀でたものがあるわけでもなく、なんとなく就活しないまま、ぼんやり大学を卒業してしまいました。

そんな時にはじめたのが、キャバクラ勤め。先輩に誘われるまま、歌舞伎町や六本木のような華やかな街ではない場所で、夜の街デビューしました。東京のはずれにあるキャバクラに来るお客さんは、みんな庶民的で温かくて……。お酒を飲むのが大好きだったこともあって、キャバクラは向いているのかもと感じました。週3〜4回キャバクラに出勤しながら、ミスキャン時代のコネでInstagramの企業案件やお客さんの紹介でリモート副業をこなしたりしながら、とりあえずひとり暮らしができるくらいは稼ぎました。正直、自由気ままに暮らした20代だったと思います。お酒を飲んでいない日の方が圧倒的に少なかったですね」

そう話す彼女の語り口は明るく、よく笑い、人見知りしなさそうな印象でした。周りからは「悩みがなさそう」と言われるそう。ところが、そんな彼女にもずっと悩んでいることがありました。

恋愛は依存体質。振られるとお酒に頼って忘れるだけ

「恋愛に関しては依存体質で、恋人に振りまわされ、自分の生活を壊してしまうことが何度もありました。キャバクラのボーイと付き合ってお金を貸してしまったり、キャッチの男の子に一目惚れして病気をうつされたり……。付き合ってくれないのなら体の関係は持たないと伝えるのに、騙されてしまうことも。根本的に見る目がないんです。いくらひどいことをされてもなかなか自分からは嫌いになれないし。私は自分のことをただ一途なだけと思っているけれど、周りの友人からは執着がすごいって言われます。別れる時はいつも振られる側。その瞬間は本当につらいから、吐くまで飲んで忘れるようにしています。そうすれば、3日で忘れられるから。

お酒が好きなのも普段明るいのも、こういう自分のどうしようもなく弱い部分を忘れたいからかも。体の関係を持つと好きになってしまうから、今まで50人以上と付き合ってきました。でも、短い時は3日くらいで振られるし、1カ月以上持つことはまれ。」

内面の依存体質が見えてくると面倒がられることが多い、と苦笑いする前村さん。外見の美しさから言い寄ってくる男性も多く、一夜を一緒に過ごせればそれでいいと利用されてしまうことも少なくないと言います。

29歳ではじめた婚活、6カ月で成功させた決め手は……

キャバクラとSNS、副業と複数の稼ぎ口がある前村さん。それでも新型コロナの影響は、収入に大きな打撃を与えました。

「リスク分散のために稼ぎ口はいくつか持っているけれど、それでも生活費の7割はキャバクラの給料です。新型コロナの影響でお店が休業になってしまったり、客足が遠のいてしまったり、安定して稼ぐことが難しくなりました。

とにかくお酒が好きで、稼いだお金は稼いだだけ使う、という生活を何年もしていたので、不安をぬぐえるほどの貯金もありません。キャバクラに出勤しても、以前ほどのバックがもらえなくなりました。私自身、コロナ感染を恐れて飲み歩くのを控えようかと考えはじめた2020年に29歳になりました。ありあまるほどの時間ができてふと振り返ってみると、20代の私はお酒がすべてでした。私からお酒を取ったら、何が残るんだろう。まともな仕事もしていない。依存体質なのに、今は愛してくれる人もいない。よく考えたら29歳という年齢はキャバ嬢的にも崖っぷちです。このままじゃいけない、そう思ってはじめたのが転職活動と……婚活でした。

専業主婦になりたいわけではなく、ただまともな人間になりたかったんです。愛する人と出会って、その人のためにちゃんと働きたい。そう考えて、まずは複数の婚活系アプリに登録しました。」

彼女が婚活をはじめたのは、2020年5月。そして2020年11月に、アプリで見つけた男性と結婚をしました。スピード婚を決めることができたのには、理由があります。

「私はとにかく、やると決めたら一直線。絶対に29歳のうちに結婚したいと思ったので、優先順位をしっかり決めました。私が一番大事にしたのは、とにかく「同じ方向を向いている人」……つまり「早く結婚したい」と思っている人、そしてそのために行動できる人を選ぶことです。

アプリのプロフィールにも“今すぐ結婚したい”と明記し、実際に会った人にも、結婚に対する意思の強さを確認しました。とにかく付き合ってみないとわからないので、私のことをいいと思ってくれる人とはすぐ付き合いました。そしてすぐに“いつから一緒に住めるのか”を聞くんです。結婚がしたいのだから、一緒に住むことを先延ばしにされるのは時間の無駄だと思って。そこで渋ったり、引いちゃう人とは即交際終了。そうやって1週間以内に付き合ったり別れたりを5度ほどした頃に、今の夫と知り合いました。

彼とは、なんとデートしたその日に付き合って、その3日後には私を家に住ませてくれたんです。だから、交際4日目から同棲がスタートしました。最初は居候みたいな半同棲でしたが、毎日楽しくって、ケンカもなくて。生活の価値観も合ったので、交際2カ月で2人住まいを借りました。それから3カ月後、彼と結婚しました。」

優先順位がしっかり定まっていたので、アリかナシかの判定がスムーズだったこと、外見の良さや年収などを意識しないようにしたことが、スピード婚の決め手だったといいます。

「結婚ってイケメンと贅沢な暮らしをすることじゃないと思うんです。シンプルに共同生活を送る気概があるかどうかを重要視しました。もちろんそれだけではないけれど、今の彼は結婚がしたいからこそ、一緒に暮らすための話し合いも対等にしてくれます。それができなかったら、同棲をしていても別れていたかもしれません。

ちなみに、彼との結婚を機にキャバクラは退店しました。副業でPC作業はしていたので、今は副業系のSNSを使ってリモートでできる仕事を中心に探し、新しい仕事にトライしています。実はもうお腹の中に子どももいるので、お酒も飲まなくなりました。ギリギリまでリモートで働きながら、2人で家計を支えていこうと思います。
29歳になった瞬間は、先が見えなくて絶望していました。でも今、私は幸せです。」

コロナ禍で出会いの場も限られ、1人で生きて行くことに不安や焦りを感じている人が増えています。焦った時にしっかり優先順位を決めて行動し、幸せをつかんだ前村さん。コロナ時代の婚活は、自分自身の優先順位を見直すことが大切なのかもしれません。

1992年生まれ・フリーライター。広告業界で絵に書いたような体育会系営業を経験後、2017年からライター・編集として独立。週刊誌やWEBメディアに恋愛考察記事を寄稿。Twitterでは恋愛相談にも回答しています。
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