スナック勤務、キャバクラ嬢、それぞれのコロナとウィズコロナ〜夜の世界で働く女性たちの告白〜(後編)
水商売歴10年以上の女性の現実とは
水商売の女性らには長く、その道で働いてきた人も少なくない。
「水商売でばっか、働いてきたツケが回ってきました」
そう自嘲するのは都内のスナックで働いていたリカさん(31)だ。大学生の頃からキャバクラなどをはじめ、様々な夜の仕事をしてきた。明るい性格で、男性への接客は苦ではなかった。気づいたら10年以上、夜の街を渡り歩いていた。
歌手として音楽活動もしており、短時間で高収入を得られる水商売への迷いはなかった。それでも今回の事態を受け、ふと我に返ったという。
「収入が減ったこと自体は、貯金や節約でなんとかしのげると思います。ただ、『私、水商売以外の稼ぎ方、知らないじゃん』っていうのが、やばいと思った」
歌手としての自分の夢、そしてそれを叶えるための収入源。この2つが今回のコロナショックで断たれる寸前だ。活動拠点だったライブハウスも次々と営業を自粛し、いくつかは閉店にまで追い込まれた。
音楽活動、夜のアルバイト双方がなくなったリカさんは現在、自粛前にした仕事の収入がちらほら入ってくる程度。
ギリギリの生活はできるが、余裕を持った暮らしはできない。
31歳という年齢も、リカさんにとっては現実を考えるきっかけになったという。
「はじめて立ち止まった。今後の身の振り方を考えていかなきゃと思わされていますね。でも現実は、『パパ活でもしちゃおうかな』って揺らいでいる」
職業に貴賎はない。楽しんで接客業に就いていた女性に「夜の仕事しかしてこなかった私が悪い」と思わせる現状に胸が痛む。
自粛中もキャバクラの仕事を続けた女性は…
一方、自粛期間中にも営業を続けたキャバクラ店に勤める女性もいる。
ユウコさん(28)が勤務するのは六本木や銀座ではなく、地元の常連客で賑わう地域密着型の店舗だ。
昼は都内で事務員として働き、週に2,3度、この店に出勤する。この生活を3年近く続けている。
緊急事態宣言後も消毒などの対応を徹底。予約客のみの少人数の接客で時間を制限して営業を続けていたが、客足は10分の1ほどに減った。
「自己判断で出勤をしていた私が言うのもなんだけど、自粛期間中に来るお客さんの中には『自分がかからなきゃそれでいい』という考えの人も結構いて、接客はハラハラしながら。お客さまと同じマドラーを使うのが怖くて、自分のお酒はかき混ぜずに飲んだりもしてました。他のお店で飲めない鬱憤を晴らすように横柄に店の女の子に接する人も多かったです。それでも生活のために出勤はやめられなかった」
緊急事態宣言が全面解除となり、お店からは離れていった顧客を取り戻すための“営業”を要求されているという。
「積極的に営業メールをしていますが、殆どがつれない。当たり前ですけどね(笑)。今回をきっかけに、キャバクラやクラブで遊ぶ人が減るのが心配。『コロナなんて関係ない』という乱暴なお客さんばかりが残り、女の子たちへのケアがない状態が続くと、この仕事も長く続けられないかな、と不安にもなります」
夜の街での遊びにはある種の大人の教養が必要だ。接客してくれる女性との距離やマナーといった様々な――。しかし、この自粛期間にユウコさんの店では、秩序が乱れつつあった。“飲み方”を知っているお客さんが離れる一方、金を出し惜しみ、無自覚に女性たちを傷つけるような態度をとる客が増える……。それらは働く女性の精神的負担になる。
一部のキャバクラやナイトクラブでは、女性たちに扇子を持たせて口元を隠して接客するよう指示をする店なども出てきているという。どの店も、工夫しながら「日常」を取り戻そうと試行錯誤を続けている。
それぞれがコロナに対して自身の判断で対応する場面が多かった自粛期。宣言解除になり、これからは……。
補償のない不安定な仕事をする女性たちは、夜の街で働いているというだけですべてを「自己責任」で片付けられてしまうのだろうか。