ストリッパーからアルバイト生活へ……それぞれのコロナショックとウイズコロナ〜夜の世界で働く女性の告白〜(前編)
“脱サラ”し、ストリッパーへ
「4月の頭からステージに立てなくなり、宅配販売のアルバイトを始めました」
そう話すのはストリッパーとして都内だけでなく、日本全国を行脚しているメイさん(26)だ。
「収入は3分の1になりました。それでも仕事に就けただけありがたい。スーパーにもコンビニにもバイト希望者が殺到していて、面接の時点で何店も落ちたんです」
ストリッパーとしてのデビューは半年前だ。大学卒業後数年間は会社員として働いていたが、客として観に行った舞台でストリッパーたちのプロフェッショナルなパフォーマンスに感銘を受け退社。ストリップ業界へと飛び込んだ。これから選曲から衣装、振り付け、「脱ぎ」のタイミングまで自己プロデュースするストリップの世界で、プロの踊り子としてパフォーマンスに磨きをかけていこうと意気込んでいた矢先のコロナショックだった。
「3月末までは地方の温泉地への巡業もありました。でもお客さんはほとんどいなくて、卒業旅行に行けなくなった地元の大学生なんかが仕方なく観に来ている感じ。いつまで仕事が続けられるか不安でした」
緊急事態が宣言されてから、メインで踊っていた劇場は封鎖された。地方の仕事も無くなりストリッパーとしての収入はゼロになった。その時メイさんは、1年は舞台に戻れないことを覚悟したという。
ストリップの仕事は、振り付け代や衣装費など、自己負担の出費もかさむ。コツコツ貯めてきた十分ではない貯金を食いつぶすしかなかった。
ストリッパーが副業ではないメイさんらこの道一筋の女性たちには、大打撃となった。
「知名度のある先輩ストリッパーさんたちの中には17Live(イチナナライブ)やPococha(ポコチャ)のような、投げ銭式のオンライン配信で稼いでいる人もいます。普段のステージよりもギャラがいい場合もあるみたい。でも、私のような新人ではとても……。それでも『何かしなければ』と日々のことをnoteで綴り、先月はファンの方から数万円のサポートがありました。もちろん、お小遣い程度にしかなりませんが……」
両親は仕事を認めてくれておらず、援助を頼むことはできない。以前勤めていたスナックに戻ることも、この状況では難しい。なんとかありつけた宅配販売の仕事も収入は月10万円ほど。東京都内で一人暮らしを続ける身にとっては十分ではない。
再開後も舞台に立たない。その理由は…
緊急事態宣言が解除され、興行を再開している劇場もあるが、メイさんは復帰してはいない。
「パフォーマンスの間にあるチェキの撮影などではお客さんと密着することもあるんですよね。不特定多数の人との接触はやっぱり怖い。そもそも、ストリップ自体、劇場の閉鎖や規制などでいつ無くなってもおかしくないエンターテイメント。そんなところから新たな感染者が出てしまったら、ますます淘汰の声が高まる。そう思うと、劇場が再開しても私自身は軽い気持ちで舞台には立てません」
周りの同業者たちからは、「生活のためにパトロンをつくれ」と勧められることもあるというが、ポリシーに反するのでしていない。それでもストリップへの思いは強い。
「ストリップは日本のすばらしいカルチャーだと思う。お客様やお姐さんなど、この世界独特の密接な関わり、劇場に入ると誰も寂しくならないようなそんな強さがあることも魅力。正直、『今は自殺するほどじゃないけど、キツイ』って感じです。毎日朝9時から14時まで働いて、お金を使えないのでまっすぐ家に帰る。空いた時間はひたすら練習。本代もないから、お客さんからもらった本を何度も読み返したりして、時間が過ぎ去るのをじっと待っています」
希望は風前の灯だ。
そして、日本の新型コロナ感染拡大に大きな影響を及ぼしたとされる”夜のクラスター“問題。その当事者とも言える接待を伴う飲食業で働く女性たちも、悲痛な声をあげている。(後編へつづく)