ソラ豆琴美さん「もっと危機感を。新型コロナウイルスは軽症でも死ぬんじゃないかと思うぐらい苦しいことを知ってほしい」(後編)

新型コロナウイルスに感染したことを公表したグラビアアイドルのソラ豆琴美さん(27)。ツイッターで感染のことを発表した理由、新型コロナウイルスに対する印象の変化、そして彼女が今思うことについて、入院中の病室から語っていただきました。

自分だけは感染しないと思っていた

自分が感染しているとわかる前とわかった後では、新型コロナウイルスへの印象はものすごく変わりました。

感染する前は、友達と「かかっても軽症なんでしょ?」と言い合っていました。いくら流行っていると言っても、東京にはたくさんの人がいるし、感染するのはその何%でしょ? とも思っていました。自分はその中には入らないと思い込んでいたのです。

感染するまではスーパーやコンビニへ行くなどの必要最小限の外出は仕方がないと思っていましたが、コロナに感染してからは考え方はまったく変わりました。親には「お願いだからスーパーに行かないでほしい」と伝えてあります。外に出ても、誰かとすれ違うことすら避けてほしいと思っています。

 

とにかく危機感を持ってもらいたくて公表した

自分の感染について公表した理由はいろいろあります。最初に言おうと思ったのは、私がコロナに感染した頃、友達のアイドルグループがいまだにレッスンのために集められていると聞き、「信じられない」と思ったからです。すぐにでもやめてもらいたかったのですが、「運営さんは身近な人に感染者がいないからわからないのかな?」と疑問に感じたのがきっかけでした。ツイッターで発信したのも、アイドルさんたちの活動を止めたかったというのが最大の理由です。

実はそれまでアイドル界隈からはまったく感染者が出ていなかったんです。私が公表した後、「私もコロナに感染している」と連絡をくれた子はいたのですが……。感染したことを隠していたり、治ったら言おうと思っていたりしたようです。

感染者が見えなかったから、自分ごとだと思わないのかもしれません。アイドルの仲間たちの間には、自分も感染するかもしれないと思っている人はいないように思えました。だから、まず危機感を持ってもらいたい、アイドルの仲間たちを感染から守りたい、という気持ちが一番強かったです。

あとは、入院したときにお医者さんから「長い付き合いになるからよろしくね」「ここを家みたいにしていいからね」と声をかけていただいて。すごく優しい言葉でしたが、私はあわてて治った人のことを調べ始めたんです。何日で症状が治まったのかとか、何日で退院できたのかとか。でも、「コロナ 治療」「コロナ 治った」と検索しても、何も出てこない。

最初に熱が出たときも、感染したときの症状についてインターネットでたくさん調べましたが、知りたい情報にたどりつきませんでした。たとえば、私は胸が苦しかったのですが、それは新型コロナウイルスに関するサイトのどこにも書いてありません。どんな症状があるのか、わかりやすく簡潔にまとまっているサイトが見つからなかったのです。

私は胸が苦しくなって高熱が出ましたが、これはあくまでも私の症例であって、新型コロナウイルスに感染した方すべてにあてはまわるわけではないと思います。新型コロナウイルスに関しては、それぐらいわからないことが多いのでしょう。自分のことを発信しようと思ったとき、混乱を招いてしまわないか迷った部分はありました。だからこそ、情報がまとまったサイトがないのでしょうね。

まずは自分が発信することによって、知りたいことが知ってもらえるようになればいいな、と思っています。

 

体だけでなく、心も辛くなる

ツイッターは予想外の反響をいただいて驚きました。アイドル仲間に伝えたいと思っていただけなので、言葉もあまり選んでいませんでしたし。でも、たくさんの人が「希望を持てた」とか「明日は我が身だ」とか「知りたいことを知れた」と言ってくださって。一番嬉しかったのは、「自分の行動をあらためようと思った。本当に怖い」とおっしゃってくれた方がたくさんいたことです。それを見たとき、「言って良かった」と思いました。

今、私がみなさんに伝えたいことは、新型コロナウイルスに感染すると「軽症」と言われているのに「朝が来ないんじゃないか」「このまま死ぬんじゃないか」と思ってしまうほど苦しい思いをするということです。誰にも同じ思いをしてほしくないと思っています。……難しいことなのかもしれませんが。

入院する前日に「来ちゃダメ」と強く言ったのに食べものを届けてくれた友達がいて、私、そのとき大泣きしちゃったんです。大好きな友達にも家族にもしばらく会えなくなってしまう。なにより、たくさんの人にこれから迷惑をかけるんだ、と思うと想像以上に気持ちが辛くなってしまって。ギューッと心臓を潰されるような感覚でした。

入院初日に看護師さんが咳き込んでいる私の背中をさすってくれて、そのときもすごく申し訳ない気持ちになりました。看護師さんにウイルスを浴びせてしまっているかもしれないし、いくら防護服を着ていてもどんな風に移ってしまうかわかりません。

お医者さんは様子を見に来てくれますし、看護師さんはお世話だけじゃなくて、お部屋の掃除も笑顔でやってくれます。医療にかかわる方たちへの感謝の気持ちはどれだけ書いても書ききれません。

私は3月下旬に自粛要請が出ている中でも、イベントやライブへの出演を続けました。人が集まる仕事をしていたので、いつ感染してもおかしくない状況にいました。自分が感染したことについては、すべて自業自得だと思っています。だからこそ、みんなが同じことを繰り返さないように発表したいと思いました。最初はアイドル仲間に伝えたかったのですが、今はたくさんの方に伝わってほしいと思います。

新型コロナウイルスに感染すると、「軽症」とはいえ、体もすごく辛くなりますし、心も辛くなります。みなさんも本当に気をつけて行動していただけたらと思います。

 

●ソラ豆琴美さんのプロフィール
神奈川県生まれ。グラビアアイドル、ライブアイドル、タレントとして活動中。昨年からは舞台にも出演。TSUTAYAプリンセス2014グランプリ、初代ミスジェニック。特技はイラスト。ツイッターID:skysoy0520

ライター。「エキレビ!」などでドラマ評を執筆。名古屋出身の中日ドラゴンズファン。「文春野球ペナントレース」の中日ドラゴンズ監督を務める。