コロナ感染公表のソラ豆琴美さん「心のどこかで自分は感染しないと思っていた」(前編)

新型コロナウイルスに感染すると、どうなってしまうのか。知識はあっても、なかなか身近には感じられないものです。 そんな中、グラビアアイドルのソラ豆琴美さん(27)が、ツイッターで新型コロナウイルスに感染したことと、自身の病状を報告して大きな反響を呼びました。症状や入院までの経緯などをあらためて詳しく教えてもらいたいと思い、入院中のソラ豆さんに電話でお話をうかがいました。

朝、胸が苦しくて目がさめる

私は27歳で、アイドルのお仕事をしながら都内で一人暮らしをしています。これまでに大きな病気はしたことがありません。貧血持ちなので体調不良になることはたびたびありましたが、基本的にはすごく健康体で入院したこともありませんでした。いつも飲んでいる薬もありません。

現在は都内の病院に入院しています。もう熱は下がっていますが、咳はなかなか止まりません。夜になると、まだ胸がゼエゼエするような痛みを感じますが、かなり楽になりました。

発熱したのは4月の頭です。朝、胸がとても苦しくて目が覚めました。食べものが喉につまったような感覚です。胸が苦しくなる経験なんて、これまで一度もありません。

熱を計ったら37.5℃の微熱があったので、「これはコロナじゃないか」と疑って、すぐに保健所に電話しましたが、このときは「近くの病院に行ってください。お大事に」と言われて終わりました。話した時間は2分ぐらいだったと思います。「コロナの検査はしてもらえないんだ」と思って、その日は病院に行かずに家で静養しました。この頃はまだ、味を感じなくなるとか、匂いがわからなくなるという症状はありませんでした。

翌日は熱が下がって元気になったので、昼間は普通に過ごしていました。でも、この日の夜に突然、熱が38℃まで上がってしまって。仕事で毎日配信をしていたのですが、熱でまともに話せなくなり、ファンの方に「絶対に様子がおかしいから病院に行ったほうがいい」と言われて、翌日もう一度電話をして大きな病院に行きました。公共交通機関は使えないので、病院までは自転車を使いました。

 

気管をむしりとりたいほど苦しいのに「軽症」

病院でPCR検査を受けてから自宅待機して、2日後に陽性という連絡がありました。このあたりから匂いと味はわからなくなっていましたね。受け入れてもらえる病院が見つかったので、翌日から入院することになって、今は一人部屋にいます。面会は一切できません。お医者さんや看護師さんは目まで覆った防護服を着て、部屋まで様子を見に来てくれています。

入院初日はまた平熱に戻ったのですが、2日後から咳が止まらないようになり、熱が39℃まで上がりました。ずっと胸が苦しくて、息を吸うのもやっと。気管をむしりとりたくなるような感覚です。食事もまともにできませんし、トイレにも行けません。高熱で意識がもうろうとして、はっきりと考えたり喋ったりすることもできなくなり、ナースコールで話しかけられても、途中で意識が途切れることもありました。でも、隔離されているので身の回りのことは自分でやらなければいけません。それでも私は「軽症」なんです。

私は入院した初日から「軽症患者」と言われていました。入院した日、実は近くの病院でクラスターが発生していて現場がかなりバタバタしており、お医者に「軽症患者が一番後回しにされていて申し訳ない」と謝られたんです。その後、高熱を出して、「ああ、軽症患者でもこんなに辛いんだな……」と思いました。

 

症状が治まっても退院できない

高熱が出てから2日目で耐えられなくなり、「アビガンを飲みます」とお医者さんに言いました。飲んだらすぐに熱が下がって、体はものすごく楽になりました。匂いもほんのり感じられるようになりましたし、味まではわかりませんが、しょっぱいものを食べたときに「これはしょっぱい味付けなんだ」ぐらいのことはわかるようになりました。

アビガンについては入院初日に説明があって、催奇形性があるので妊婦さん、あるいは妊娠している可能性のある女性には投与しないことが伝えられました。初日に妊娠検査をすることになり、「いや、必要ないです」と言ったのですが、「万が一のこともある。何が何でも先に妊娠検査をしなければいけない」とお医者さんに言われたので検査しました。女性だけでなく男性にも影響があるので、投与されてから7日間は注意が必要になります。

症状はかなり治まったのですが、退院するには検査で陰性が2回連続で出なければいけません。私のまわりの部屋の患者さんは全員コロナに感染していますが、みなさんもアビガンを飲むようになって、それまで聞こえてきた咳の音がしなくなりました。検査も続々としているようですが、なかなか陰性が出る人がいなくて、「誰も陰性が出ないんだよね……」とお医者さんが困っていました。こうやって病床が埋まっていってしまうんだな、と感じました。

 

「決まった仕事は行くしかない」と思っていた自分

最初に「コロナかもしれない」と疑ったときは、そう思いつつもどこか他人事のようでした。「なったらなっただな」という感じで、症状が軽かったこともあって、現実感もあまりありませんでした。だけど、検査の結果、電話で「陽性です」と告げられたときは本当にショックで……。「泣いちゃダメだ。冷静になろう」と思ったことを覚えています。

陽性だとわかった後は、自分が発熱するまでの行動を思い返しながら、「あの子は大丈夫かな?」「この子は大丈夫かな?」「ここで感染したんじゃないだろうか?」って。保健所で確認したところ、私が感染した期間は濃厚接触対象の方はいないそうですが、それでも心配です。

3月末まで舞台もライブもやっていましたが、どこかで「自分は感染しない」と思っていた部分があったと思います。新型コロナウイルスが世の中で流行っているとはいえ、「決まった仕事がある以上、行くしかない」「中止にならない限り、最後までやりきろう」と思っていました。今ではすごく後悔していますし、反省しています。

私もみんなも生き残るために必死です。でも、コロナに感染してしまえば、もっと仕事ができなくなるだけです。ぜひ行動をもう一度見つめなおして、今はお家で過ごしてください。

●ソラ豆琴美さんのプロフィール
神奈川県生まれ。グラビアアイドル、ライブアイドル、タレントとして活動中。昨年からは舞台にも出演。TSUTAYAプリンセス2014グランプリ、初代ミスジェニック。特技はイラスト。ツイッターID:skysoy0520

ライター。「エキレビ!」などでドラマ評を執筆。名古屋出身の中日ドラゴンズファン。「文春野球ペナントレース」の中日ドラゴンズ監督を務める。