米シリコンバレーのエグゼクティブが夢中になるフィットネスとは? トレーナーは元専業主婦のシングルマザー

クライアントはGoogle、Appleなど米大手IT企業の役員たち。専業主婦で2児のシングルマザーだったSayaさんは、38歳で一念発起しフィットネストレーナーになりました。考案した効率的なエクセサイズがシリコンバレーで人気となり、Google社のトレーナーに就任、今年7月には『シリコンバレー式 globodyフィットネス』(講談社)も出版しました。Sayaさんが国内外で活躍する背景に迫りました。
米Google社のエグゼクティブトレーナー・Sayaさん 離婚、シングルマザー、再婚を通して考えたこと

体重計に乗るより、体の変化に着目 

すらりとした手脚に、引き締まった腹筋。自然体の笑顔が印象的なフィットネストレーナーのSayaさん。考案したエクササイズ「globody」(グローボディ)は、英語の“glow(輝き)”と“global(全世界的な)body(身体)”の意味が込められています。特徴は、脂肪燃焼と筋トレを同時にする内容で、1つのプログラムが3分程度である点。そして、目標を「◯◯キロやせる」などの数値に据えていない点です。

3分間で有酸素運動と筋トレを一度にできる新エクササイズ。大きな動きで心拍数を上げて脂肪を燃焼し、その後小さな動きでピンポイントで筋肉を刺激して体を引き締める方式で、"効率的なボディメイク”を目指します。他のダイエットとは異なり、体重計に乗って一喜一憂するよりも、体の変化に注目しています。

こうしたセオリーが米シリコンバレーで、忙しいエグゼクティブらに好評を博し、引っ張りだことなっています。

――「体重計に乗らないダイエット」とは、これまであまり聞いたことがありません。

Sayaさん(以下、Saya): 私は以前、『やせる=自信を持てる』と思い込んでいました。でも、実際にはただ体重が落ちても、自信は持てませんでした。今は、運動はやせることや体重を落とすためではなく、健康的で心地よい気分になることの方が大切だと思っています。「なぜやせたいのか?」を常に自分に問いかけながら、短期、長期両方の目標を持つことが、ボディメイク成功への近道になります。

就業中でもフィットネス優先

――米国シリコンバレーの大手企業の人は、フィットネスをどう捉えているのでしょう?

Saya: 仕事も健康維持においても「常に先を見ている人」が多く、結果を重視するタイプが多いと感じます。社内で共有しているオンラインカレンダーに、社員の皆さんがフィットネスの時間をスケジュールに組み込む文化がありました。その時間は、たとえ社長でもアポが取れないようになっていました。

エグゼクティブの方々にエクササイズをする理由を尋ねると、「ストレスを感じてから運動するのではなく、ストレスに追いつかれる前に体とマインドを整理しておきたいから」という答えが返ってきて、健康に対して前向きであると感じました。健康を財産と捉えていて、仕事を成功させるためにフィットネスは不可欠と考える人ばかりでした。実際、体を動かしリフレッシュをして仕事に戻ると、その後の時間が充実するという方が多かったですね。

彼らが運動する理由は、ただやせるためや体重を落とすためではなく、「健康のため」という思考なんです。運動する理由のトップ3は、①健康、②メンタルの強化、③ストレスのない生活を送るため、でした。どんなに忙しくても、ストレスに飲み込まれないように、運動を日常に取り入れる意識を持っています。

家族の死から、健康への強い思いが

――著書の中で、学生時代から人一倍「健康」の大切さを感じていたと語っていますね。

Saya: 私が15歳の時に当時19歳だった兄が、そして、私が22歳の時に当時55歳だった母が亡くなりました。6年の間で家族が半分になり、本当にショックで……。雲の中にいるようなぼんやりとした生活を送っていました。

その中で、健康の大切さを感じ、それを伝えていきたいという思いの「種」が心の奥に生まれていたのだと思います。でも、当時はそれをどう咲かせていいかわからず。大学4年生で就職活動をしていた時は、フィットネストレーナーを職業にするという選択肢はありませんでしたね。安定した大企業に入るべきだと決めつけていました。結果的に就職したのは、航空会社です。

――そこから、どのような心境の変化でフィットネスの世界へ飛び込んだのですか?

Saya: 米国で結婚し、27歳で妊娠をしたのを機に仕事をやめました。出産後、気分がふさぐ日々が続き、漠然と「何かをしないと」と思っていたころ、近所にジムがオープンしました。「とりあえず入会したら、何か変わるかも」と思い、通い始めました。

少しずつ体を動かしていくうちに、体も心の状態もどんどん良い方向に変化しました。ジム内でピラティスの資格養成講座の募集を見かけて、「やってみようかな」と。ピラティスは体幹トレーニングを基盤にしているエクササイズで、産後の回復に効果的。メンタル面でも前向きになれたことがあり、自分に1番向いているのではと感じました。

“small win”の積み重ねが自信につながった

――トレーナーに転身してから1年後にはGoogle本社で教えるチャンスが舞い込みますが、最初から仕事はスムーズでしたか? 

Saya: 最初はものすごく緊張しました。いざ人前に立つと、頭が真っ白になってしまい、「人に教えることは向いていないかも……」と思うこともありました。

知り合いのトレーナー仲間数人に「生徒になってくれない?」と声をかけ、レッスンの場数を踏むことを心がけました。失敗しても笑い飛ばせることができ、徐々に教えることに慣れていきました。そうした“small win”(小さな成功)の積み重ねが、自信につながっていきました。

フリーランスで仕事をし、最初の1年間はとにかくどんな仕事も引き受け、様々な場所へレッスンをしに行き、人に会い、話をしました。レッスン時間より、移動時間の方が長い日もありましたね。その結果、Googleからのお話をいただいたんです。

Googleでのレッスン時は、会社が実施したアンケート結果を見て課題を認識したり、レッスンを受けてくれた方に感想を聞いたりと、相手が何を求めているのかを知るよう意識をしていました。時には、うまく教えられずにへこんだこともありましたが、今になって振り返ると、そういった苦い経験の方が成長につながるチャンスにつながったと感じます。

8年前に書き留めた“未来”が現実に

――今回、本を出版したことで何か変化はありましたか?

Saya: 出版が決まった後、これまでの日記等の整理をしていた時に、8年ほど前に自分の理想の将来を書き留めた「ビジョンシート」を見つけました。当時、インストラクターになったばかりだったのですが、「オリジナルのエクササイズのメソッドを作って、書籍を発売して、多くの人にフィットネスを伝えていく」と書いていたんです。ビジョンシートの存在自体を忘れていたのですが、書いた通りのことが実現していて本当に驚きました。改めて、思いを書き留めることの大切さを感じました。

――今後の目標を教えてください。

Saya:  globodyを伝えることで、 多くの方に健康になってほしいと思っています。ボディメイクも大事ですが、健康になれば結果的に体も変わっていきます。「5キロやせたい」などの数値にとらわれず、健康になりたいという気持ちを先に持ってほしいですね。

また、体は年齢と共に変わっていくものです。その時々にあったエクササイズを提案し、「健康のアップデート」の必要性も発信していきたいと思っています。健康の大切さを伝えていくことが、周りへの恩返しにもつながると感じています。1人でも多くの人に、フィットネスを生活の一部に取り入れてほしいと思います。

米Google社のエグゼクティブトレーナー・Sayaさん 離婚、シングルマザー、再婚を通して考えたこと

●Saya(さや)さんのプロフィール

1976年、セネガル生まれ。2児の母。米国で幼少期を過ごし、13歳で日本に帰国。青山学院大学を卒業後、単身渡米。38歳でフィットネストレーナーに転身。アメリカ・シリコンバレーを拠点に、Google本社のエグゼクティブトレーナーとして活動。その他、Apple、テスラなどの企業の幹部などをクライアントに持つ。独自のフィットネスプログラム「globody(グローボディ)」を考案し、現在は日本で企業や一般の人向けに指導をしている。

『シリコンバレー式 globodyフィットネス』

出版社:講談社
著者:Saya
発売日 :2022年07月28日
定価:1540円

同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
1983年生まれ。出版社勤務を経て、2008年 フリーランスフォトグラファーに。「温度が伝わる写真」を目指し、主に雑誌・書籍・web媒体での撮影を行う。
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